【解説】
時代の寵児として波乱の人生を送る運命を背負い、夢と挫折の中でひたすらに光を追い続けた男――アメリカ文学を代表する作家、スコット・フィッツジェラルドの物語。
1940年12月21日、ハリウッドのアパートメントの一室。フィッツジェラルドが心臓発作のため急死。一夜にして時代の寵児となり、栄光に包まれた1920年代はもはや過去の夢となり、経済的にも社会的にも不遇なまま突然に訪れた、それは淋しすぎる最期だった――。
クリスマス前、寒さの厳しい朝。いつものごとく眠れない夢うつつに朝を迎えたスコットは、自分の人生があと数時間で終わることなど知る由もなく、自分の人生の最後を飾るに相応しいラスト・パーティーのフィクションを考え始める。
スコットがまず招待したのは、ローリング20'sと言われた時代に彼を取り巻いた人々だった。文壇に華やかに踊り出たスコットは、成功と名声を手にする。そしてアリゾナ・ジョージア一の美女と呼ばれたゼルダとのロマンス。アメリカン・ドリームの真っ只中にいるスコットの脳裏に、初めてニューヨークを訪れた少年の頃の思い出が甦る。故郷から両親に連れられニューヨークに向かう少年は、ボートから眺めるマンハッタンの光景に圧倒されながら、富と栄光とロマンスをいつかこの手にと決意したのだった。
南部一の美女と、野心家のハンサムな新進作家は、この世に自分たちの手に入らないものはないかのように、栄光のアメリカを代表するカップルとなる。しかし、夜毎繰り広げられるパーティー、お祭り騒ぎ。狂った生活は長続きするはずはなく、二人はヨーロッパ、セント・ポールと居を移し、生活を立て直そうとするが、スコットの深酒、ゼルダの精神的な病が二人の間の溝を深め、スコットの仕事にも翳りが見え出す。
あがけばあがくほど深みにはまっていく泥沼のように、過去の栄光を追えば追うほど、幸せな夢の幻影は二人の首をしめつけていく。それでも何かを追い求め未来の光を信じ続けようとしたスコットにとって、人生の幕は、あまりにあっけなく突然に切って落とされた。客たちは去り、パーティーはThe End。一人残され、孤独の中で死を迎えるスコットの胸に去来したものは・・・・・・尽きることのない夢のかけらだった・・・・・・。 |