■解説
役者を育てるには芝居、スターを生み出すにはショーと言われる宝塚。5組で順次上演する2006年「バウ・ワークショップ」シリーズは、歌、芝居はもとよりショーに重点を置き、ダンスシーンで魅せる、今までにないワークショップです。
藤井大介、齋藤吉正の若手演出家が交代で担当し、そして、花組・桐生園加、月組・龍 真咲、雪組・凰稀かなめ、星組・柚希礼音、宙組・十輝いりすといった、現在伸び盛りの若手を中心にお届けする、今しかない、フレッシュでエネルギッシュな、まさに若い魅力、若い血潮が詰め込まれた宝石箱『Young Bloods!!』。
<第一部>「彷徨の星くず」
1974年 ソビエト連邦・レニングラード。
キーロフバレエ団が誇る花形ソリスト、ミハエル・チェリンカ。
神々しいまでに美しく崇高な彼の演技に、千秋楽の今日もまた拍手はなりやまない。
明日からの全国ツアーを控え盛り上がる舞台裏では、チェリンカに凄みさえ感じた舞台仲間が称賛と期待の言葉を寄せる中、彼の表情は張り詰めた糸のように硬く影を落としていた。
チェリンカには心に秘めたある計画があった。
――― 亡命。
自由を、魂の開放を求めてアメリカへ渡る。
愛する妻、そしてまだ幼い息子を残してでも…心の底から沸きあがる血潮をもう誰にも止める事はできなかった。
「いつかきっとアメリカに呼び寄せる!」
突然の失踪に困惑する相手役のプリマ、舞台スタッフ、そして夫を信じ続ける乳飲み子を抱えた妻、騒ぎ立てるマスコミ…しかし彼の足取りは誰にもわからなかった。
カナダの潜伏期間を経てチェリンカが辿り着いたのは、夢と欲望が渦巻く場所…ブロードウェイだった。 |