宝塚ミュージカル・ロマン『源氏物語 あさきゆめみしII』

梅田芸術劇場メインホール公演

公演期間:7月7日(土)〜7月23日(月)

この公演は終了いたしました(2007年)

出演者主な配役ポスター画像
宝塚ミュージカル・ロマン
『源氏物語 あさきゆめみしII』

原作/大和和紀・講談社
脚本・演出/草野旦

[解 説]
 2000年、光源氏役の愛華みれを中心とする花組により上演され好評を博した作品を軸に、「源氏物語」の様々なエピソードの中から、新たに再構築しての公演。音楽を多用し、オリジナルのキャラクターを登場させ、また原作が持つ今様なビジュアルを生かしながら、源氏の愛と死を描き出します。尚、今回は新たにフィナーレ場面が加わります。

いかなる富もいかなる権力もいかなる美も、時の流れの中では一時の夢にすぎない。時間を支配する精霊“刻の霊(ときのすだま)”が平安の御代の“あさきゆめ”を語る。

 藤壺の宮―すべてはこの人から始まった光源氏の恋の業と苦悩。幼くして亡くした母に生き写しの藤壺を慕う源氏の胸に、いつしか芽生えた恋心。だが彼女は、父桐壺帝の妻。愛してはならぬ女。
 ある夜、罪も死も覚悟で藤壺のもとに現われた源氏の若い情熱に、彼女の理性は焼きつくされる。だが、この夜の契りで、藤壺は身ごもってしまう。源氏との罪の子を。

 仮名文字の美しさ、和歌の才、優雅なたしなみ―すべてに優れた高貴な婦人、六条の御息所。その彼女に、藤壺に通じる優雅な美しさを見た光源氏は、情熱のままに彼女を求めてゆく。
 六条の御息所もまた、激しい気流に飲まれたかのように光源氏を受け入れ、気付いたときには恋する自分を発見する。けれども八歳年上の彼女には、常に光源氏の若さに不安がつきまとう。
 皮肉なことに、六条の御息所の思いが募るほどに、光源氏には彼女の愛が重たくなる。藤壺を一生思い続けた光源氏。六条の御息所から一生苦しめられ続けた光源氏。

 政敵の姫君、朧月夜との密会が露見し須磨に退去していた光源氏が帰京することになる。
 明石に残された明石の上の哀しみは、例えようのないものだった。対して、光源氏を待ちわびていた紫の上の心は喜びに溢れていた。宮中に参内した光源氏は、朱雀帝より春宮の行く末を任される。この春宮こそ父帝の妻藤壺と光源氏が決して許されない罪に落ち出来た不義の子であった。
 それから一年が過ぎ、春宮は元服し冷泉帝となった。光源氏は内大臣として政権に返り咲く。一方、ちい姫が住吉の神の予言通り皇后になれるよう、明石の上とちい姫は光源氏のもとへと旅立つのだった。
 時は巡り、早春の悲しい夢が“刻の霊”によって甦る。光源氏の永遠の憧れの人、藤壺の宮が危篤だというのである。藤壺が病床で見ていたのは光源氏が幼い頃の夢だった。一度きりの許されない罪深い逢瀬ではあったが、藤壺もまた光源氏を心から愛していたのだった。藤壺は罪を心に刻んだままこの世を去る。
 光源氏40歳。準太政大臣となり栄華の絶頂を極めていた光源氏は、思いがけない運命の報復を受けることになる。光源氏は朱雀院のたっての願いで、女三の宮を妻に迎える。紫の上は哀しみに打ちひしがれ、たった一つの支えであった光源氏の愛さえも信じられなくなり、病がちになる。しかし光源氏はあまりに幼い女三の宮に幻滅していた。その一方で、柏木は女三の宮に心惹かれ、ある夜、二人は密通する。柏木と女三の宮は逢瀬を重ね、女三の宮は柏木の子を身ごもってしまう。二人の関係に気付いた光源氏は嫉妬に狂う。だが光源氏の心にかつての藤壺との罪深い恋が甦る。父帝も二人の関係を知りながら黙っていたのではないかと愕然とするのだった。
 紫の上が危篤という知らせが光源氏に入る。紫の上は六条の御息所の死霊に苦しめられていたのだ。またも光源氏は六条の御息所によって愛の仕返しをくう。“恋はより多く愛した者が負け”と……。光源氏の祈りによって紫の上は一度息を吹き返す。春のある日、死期を悟った紫の上は法会を催す。そして静かに激しく陵王の舞を舞い、光源氏の腕の中で息を引き取る。
 その時“刻の霊”が姿を現し、光源氏は初めてその存在に気付く。そして最高の権力、地位を手に入れた光源氏だったが、本当に大切なものは紫の上だったことを漸く悟る。そして人間世界を離れ、紫の上の待つ天上界に飛び立ってゆくのだった……。