バウ・なにわ人情ミュージカル『大坂侍』−けったいな人々−

宝塚バウホール公演

公演期間:5月19日(土)〜6月4日(月)

この公演は終了いたしました(2007年)

出演者主な配役ポスター画像
バウ・なにわ人情ミュージカル
『大坂侍』−けったいな人々−

〜司馬遼太郎作「大坂侍」より〜
脚本・演出/石田昌也

[解 説]
 超個性的な登場人物、大坂人のパワーが爆発する痛快・娯楽時代劇。
 さて、登場人物や物語を説明する前に、幕末・大坂の土地柄を説明しなければならない。幕府の身分制度は当然「士農工商」なのだが、銭が物をいう「商人の町」大坂で豪商らは幕府のみならず…朝廷、薩摩の勤王派にまで金を貸し、「佐幕や勤王やとほざいても、ほんまに日本を動かしているのは、わてら大坂の銭だす」という誇りを持っていた。だから大坂で武士は江戸城下のように尊敬されず、ある商家では「うちのせがれは根性がないさかい商人には向かん、売りに出ている侍株でもこうて(買って)侍にでもせなしゃあないなァ」と事実上「商工農士」という身分の逆転現象が起きていた。大坂は幕府の天領(直轄地)だから、「大坂藩」というモノは存在しない。大坂城の「君主」は徳川の将軍なのである。つまり本作の主人公、貧乏同心・鳥居又七は徳川の家臣なのだ。
 しかし時は幕末、大坂の侍の殆どは大坂生まれの大坂育ちだから、自分達が「徳川の家臣」だという自覚も忠誠心も薄い。それに又七は同心とはいっても十手捕り物の同心ではなく「川方同心」で、河川や土手の管理が仕事だから、「二本差し」といっても浪速の人々は又七を…今でいう…区役所の職員風に見ていた。だが又七は働き者、時に泥塗れになって人夫達と土手の補修工事にも手を貸した。跡取り息子のいない豪商・大和屋源右衛門は「ほんまに又七はんはよう働く、侍にしとくのはもったいない、出来る事なら、又七を婿養子にして、お勢と添わせ、店を継がせたい」と…あの手この手と、又七にぞっこんの我儘娘・お勢と共に、親子協力して「又七獲得作戦!」を実行…だが、又七は元来、喧嘩には強いが女には奥手の真面目人間。お勢からの関西風の攻撃的なプロポーズにものらりくらりと逃げの一手。お勢は又七の仕事場に突如現われ、「うちを嫁にしてくれへんかったら、この川に身を投げて死んだる!」と、振袖の中に大きな石を詰め込んで川に飛び込むという事件を引き起こしたり、又七の子分格・極楽の政や、剣術指南役・渡辺玄軒先生にも金を握らせ、「金の力」で強引に恋を成就させようとする。
 だが時代は急を告げていた。大坂人とはいえ、又七は身分的には徳川の家臣「幕臣」である。又七は大坂を離れ、江戸・上野で官軍と対峙する「彰義隊」に組み入れられる事になった。又七の運命は、また…お勢との恋は…?