制作発表会レポート
2015年4月21日(火)、宝塚歌劇宙組公演 三井住友VISAカード シアター グランド・ロマンス『王家に捧ぐ歌』-オペラ「アイーダ」より- の制作発表会が行われました。
イタリアの大作曲家ヴェルディのオペラとして有名な「アイーダ」を原作に、宝塚バージョンとして新たな脚本、音楽で2003年に星組で上演し好評を博した作品が、今夏、宝塚歌劇の舞台によみがえります。宙組新トップコンビ、朝夏まなとと実咲凜音の宝塚大劇場お披露目公演として、壮大なスケールで、よりドラマティックに描き出される本作。公演に先立ち、制作発表会の模様をお届けします。
古代エジプトの風を感じる、厳かで雄大なパフォーマンス
まずは、出演者によりお馴染の楽曲を披露。エジプトの若き武将のラダメス役に扮する宙組トップスター・朝夏まなとが、黄金に輝く衣装を身にまとい颯爽と登場し、真っ直ぐな人柄がうかがえる情感あふれる歌唱を披露。続いて、エジプトの囚人であり、エチオピア王女のアイーダ役に扮した宙組トップ娘役・実咲凜音が定評ある美声を存分に聴かせました。
最後は、トップコンビによるデュエットを披露。会場は二人のハーモニーでロマンティックな雰囲気が漂いました。
♯1「世界に求む(王家に捧げる歌)」朝夏まなと
♯2「アイーダの信念(私に見えたもの)」実咲凜音
♯3「月の満ちるころ」朝夏まなと&実咲凜音
12年の時を経て、新たな息吹を宿した『王家に捧ぐ歌』
今回の上演の決め手として、「この公演が朝夏を呼んだ。“朝夏に捧ぐ歌”」と小川新理事長に言わしめた、朝夏。そんなラダメス役がぴったりの朝夏率いる新生宙組のお披露目公演『王家に捧ぐ歌』。制作発表会の会見では、演出家・出演者が作品に対する意気込みを語りました。
ひたすら“愛”を追い求めて…
演出家 木村信司
「本作の再演にあたり脚本を見直す中で、ただ“愛”だけを訴えたかったことを、あらためて思い出しました。一人の人間と一人の人間が結ばれる時に、その愛を、神や国、思想やしきたり、そういったありとあらゆるものは邪魔しないで欲しいという、最初に脚本を書いた時の自分の衝動に立ち戻って、演出し直してみたいと考えております。また、朝夏まなとと実咲凜音の新生宙組のお披露目公演ということもありますので、新鮮な気持ちで取り組んで参りたいと思っております」
宙組らしい『王家に捧ぐ歌』を
宙組トップスター 朝夏まなと
「私は12年前の初演を観劇した時に、なんてスケールが大きく、なんて音楽が素晴らしい作品なのだろうという印象を持ったことを、今でもはっきりと覚えております。12年の時を超えて、自分がラダメスという役で、今の宙組で本作に挑戦できる機会を与えていただけたこと、本当に幸せに思っております。木村先生のもと、お稽古を重ねて、宙組らしい『王家に捧ぐ歌』を皆様にお届けできますよう、精一杯努力して参ります。このような素敵な作品で、新生宙組のスタートが迎えられますことを誇りに思い、その気持ちは舞台でお返しできるよう、しっかりと務めたいと思っております」
アイーダ役は嬉しいと同時に責任を感じる
宙組トップ娘役 実咲凜音
「このような素晴らしい作品に出演させていただけることを本当に幸せに思っております。また、アイーダという大役をさせていただけることを嬉しく思うと同時に、大変な責任を感じております。新生宙組が一丸となり、初日に向けて、より良い舞台を皆様にお届けできるよう努めて参りたいと思います。どうぞご期待ください」
宙組トップスター 朝夏まなと
新生宙組で挑む大作への意気込みは?
いまの立場に立たせていただき、自分自身が誰よりもその作品を愛し、その背中を見て組子が付いてきてくれることが理想だと思っています。その気持ちを組子が感じ取ってくれているので、いまの宙組はすごくイイ状態が出来上がっていると感じています。
今度の作品では、宙組が全員集合しての公演となりますので、そのモットーは変えずに、私は私らしくこの作品に体当たりでぶつかることにより、皆様により良い舞台をお届けしたいと思っております。
大切に演じたいことは?
今回、木村先生が“愛”というテーマをより重点的にと仰っていましたので、エジプトの将軍でありながら、一人の女性を愛しているがゆえに戦いを止めたいという、ラダメスの強い信念を、真っ直ぐに、リアリティを持って演じたいです。
宙組トップ娘役 実咲凜音
大切に演じたいことは?
朝夏さん演じるラダメスとの愛を、強く強く出していきたいです。アイーダは、“戦いは新たな戦いを生むだけ”と歌っているように、信念を持って生きている女性ですので、その信念を貫く強さもお見せできたらと思います。包容力溢れる、朝夏さん演じる素敵なラダメスに、アイーダも全力の愛を捧げたいと思います。
「必ずやいい舞台にしたい」と意気込み十分に語った朝夏。ゴールドの眩い衣装が映える姿は、ラダメス将軍そのもの。どんな甘く素敵なラブストーリーを魅せてくれるのか、いまから期待が高まります。どうぞご期待ください!
演出家 木村信司が語る
『王家に捧ぐ歌』のポイント
宙組バージョンでの演出の工夫など、公演の魅力について、演出家 木村信司が語ります。
新たな気持ちで、新生宙組の“新作”に挑む
——再演にあたっての思い
先達て、再演の機会をいただき、出演者が変わると同じ作品であっても、これほど変わるものかと演出しながら非常に驚きました。そういう意味では、宝塚歌劇では“再演”というものはなく、毎回新作だと思っています。今回の宙組でも、新しい作品に挑んでいく、そんな心構えで演出したいです。
——新生宙組で上演することについて
出演者を聞いた時にぴったりだというのが第一印象です。演出家としては、ラダメス役は真っ直ぐに演ってほしいという気持ちがありますので、現在の宝塚歌劇を見渡した時に、朝夏ははまり役だと思います。また、朝夏のラダメスと実咲のアイーダが核となるので、組の体制に合っていて、その点でも非常に良かったとあらためて実感しています。
“新生宙組らしさ”で魅せる
——前回と違う演出部分は?
芝居の部分では、基本的に流れなどは同じですが、一番変わるところといえばフィナーレです。朝夏のスタイルとダンス力を生かした場面を考えています。いま打ち合わせ中ではありますが、ボレロで一人せり上がって静かに踊り出す…ような演出があったり、一方でリズミカルなところや新しいモダンなリズムを取り入れてみたりと、朝夏の魅力をお見せできるようにしたい思います。
また、前回の星組公演時に、マイヤ・プリセツカヤ氏に素晴らしい振付をしていただいた“凱旋”の場面は、今回の宙組バージョンでは、“凱旋してくる”というメッセージをより明確に表現するために振りを変更したいと考えています。大きく物語を変えないとはいっても、美術的にも、アップグレードを図りながらお届けしたいですね。
——朝夏と実咲のトップコンビで強調したい点は?
ロマンティックなところが強調できるカップルではないでしょうか。そうした“甘い”部分をきちんと丁寧に描きたいです。
演出の方向性として、“愛”ただそれだけと思っていますので、まず、二人あってこその作品です。トップコンビを核にして世界が広がっていくという演出にしたいと思っております。
新生宙組の門出に相応しい壮大なスケールで描かれる本作。テーマである“愛”をより強くお見せしたいと意欲を見せる木村。果たしてどのような舞台に仕上がっているのか、ぜひ劇場でご覧ください!