演出家 藤井大介が語る

ファッシーノ・モストラーレ『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』-心のままに-の見どころ

多彩なアイデアと確かな演出手腕で、観る人の胸を熱くさせるショーを発表してきた演出家・藤井大介の新作は、イタリアを舞台にした大人の雰囲気漂う作品。円熟味を増す真風涼帆と宙組の魅力を最大限に発揮する、今作のプランについて聞いた。   

陽気なイタリアの風に乗せて、真風涼帆のダンディな魅力を堪能!

イタリア語で“気まぐれ”“気まま”の意味を持つ“Capricciosa”がタイトルとなった経緯をお聞かせください。

2年前に真風涼帆主演の宙組で『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~(2020年)というウイスキーをテーマにしたショーをつくりましたが、再び担当できることになり嬉しい驚きでした。今回はどんなテーマが良いか悩んだのですが、やはり真風の魅力はその大人っぽさにあるのではないかという結論に至りました。そして、持ち味である包容力やダンディな様から、イタリアの粋な男性のイメージが思い浮かび、真風扮する伊達男カプリチョーザが“自由気ままに”イタリアを旅するショーを考えました。   

場面構成について教えてください。

ナポリ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ミラノ、ローマの5都市を舞台に、イタリアの華やかさや陽気さを感じていただく趣向です。
プロローグは、芹香斗亜が宙組メンバーを引き連れ、歌い踊るところから始まります。セットが転換すると、そこには究極のプレイボーイ・カプリチョーザの真風が、潤花扮する究極の美女をともない佇んでいます。夜のイタリアを描いた、華やかかつ妖艶なムード漂う幕開きにしたいと思っています。
プロローグが終わると舞台をナポリへと移し、潤と芹香を中心に、小粋な男女の恋の駆け引きをお見せします。「雨」というイタリアン・ポップスを使った軽快な場面になります。
そして次はヴェネツィアに。さすらう真風のもとに、美女に扮した桜木みなとが現れます。辺りに水の精たちが戯れる中、妖しいストーリーが展開されていきます。   

次は中詰めですね。

フィレンツェを舞台にした、ゴージャスで明るい中詰めになります。「2万4千回のキッス」という曲で、ラテンの雰囲気を感じながらお客様にも盛り上がっていただきたいですね。花の都と呼ばれるフィレンツェにちなみ、衣装も花柄の華やかなものを予定しています。出演者たちの組み合わせのバリエーションもお楽しみいただけると思いますので、どうぞご期待ください。   

後半はどのように展開するのでしょうか。

それまでとはガラリと雰囲気を変えて、ミラノでのクラシカルな場面に移ります。オペラの舞台に現れた真風は、オペラを観に来ていた潤と目が合い、2人は恋に落ちます。ところが潤には芹香扮する婚約者がいて、三角関係へと発展していくストーリーです。3人の大人の色香をご覧いただこうと思います。
そして最後の都市ローマへと続いていきます。イタリアの各地を旅してローマに辿り着いた真風が、カンツォーネの名曲「アリヴェデルチ・ローマ」を、大勢の宙組生たちと一緒に歌い踊り、旅を終えて去って行くという展開です。   

勢いに乗る宙組の、新たな魅力に期待

伊達男を演じるトップスター・真風涼帆について。

真風はニヒルでクールな男性を演じることに長けたスターです。そんな成熟した格好良さをさらりと自然に表現できるのが、彼女のすごいところといえるでしょうね。早くから男役として出来上がっているイメージでしたが、下級生の頃は、あまり自ら進んで前に出るタイプではありませんでした。それが今では、押し出しも良く、下級生の面倒見の良さに至るまでトップスターたる風格を感じさせ、大変心強く思っています。   

真風の今作での見どころは?

ただ立っているだけでも男役の色気と包容力が滲み出るのが彼女の強みなのですが、今作ではさらに大人の男の余裕に、イタリアらしい陽気さをプラスして見せてくれたら嬉しいですね。お客様には『アクアヴィーテ!!』とはまた違った格好良さをご堪能いただけると思いますので、楽しみにしていてください。   

潤花も、魅力的なトップ娘役に成長しました。

ひとたび舞台に立つと艶やかな色気を漂わせるところに驚かされます。潤本来の可憐さと、大人っぽさの両面を発揮してくれますから、頼もしくもありますね。
ナポリの場面では、男を手玉に取ってきたような女性が一人の男性に心を奪われていく心理描写を、ミラノの場面では、恋をした淑女の内に秘めた炎の熱さなど、内面をうまく見せてくれることを期待しています。   

真風・潤のトップコンビも大劇場3作目となります。

天真爛漫な潤を、真風が優しく包み込んでいる様子が、長年連れ添った夫婦のようにしっくりしているのですよね。熊本生まれの真風と北海道生まれの潤ですが、国内でも特に遠く離れた場所にいた二人が出逢って誕生した、奇跡のようなコンビだと思います。   

芹香斗亜の充実ぶりも大きな戦力ですね。

芹香は下級生の頃からチャーミングな男役で、どんな役、どんな場面でも爽やかさと気品を失わないところが素晴らしいですね。与えられた役に自分を近づけるのではなく、役に入り込むというスタイルは、本人が常に純白の状態でいるからこそできるのだと思います。また、持ち前の大らかさが包容力に繋がるタイプだとも感じますので、今作でもそこを生かし、さらに飛躍した舞台を見せてくれることでしょう。激しく踊るナポリの場面など、彼女のダンス力にもご注目ください。   

真風と芹香のコンビネーションも楽しみです。

真風と芹香は全くタイプの違う男役で、それが今の宙組の面白さにも繋がっています。紫と白といいますか、ワイルド&マイルドといいますか(笑)。二人の相乗効果が、組の厚みを増しているように思います。
中詰めでは、真風、芹香に桜木を加えた3人が、パートナーを替えながらデュエットダンスを踊る場面を用意していますので、それぞれの個性の違いを楽しんでいただきたいですね。   

桜木みなとも頼もしい存在に成長しました。

桜木は公演ごとに男役の深みを見せ、ますます楽しみな存在です。真風、芹香とはまた異なる味わいが出てきた点にも注目しています。
今回はヴェネツィアの場面では女役、後半ではオペラ歌手と、幅広い役どころに取り組んでもらいます。非常に芝居心のあるスターですので、内面から溢れ出る魅力で演じてくれるだろうと楽しみにしています。   

ますます充実度を増す宙組に、どのようなことを期待しますか?

宙組は、私の見ていないところでも、自主稽古を大変熱心にやってくれていて、上級生から下級生まで、意識の中に「頑張るぞ!」という気持ちが自然に浸透しているように感じます。例えば振り付けがあった翌日には全員がビシッと揃って踊れるようになっています。これは強い団結力があるからこそでしょうね。率いる真風自身が「何でも来い」という雰囲気で臨んでいるので、みんなも大船に乗った気持ちでぶつかっていけるのではないでしょうか。
5組の中で一番歴史の新しい組ですし、新鮮さを持ったまま、「清く正しく美しく」の精神の上に新たな魅力を発揮してほしいと願っています。   

最後に、お客様へのメッセージを。

気軽に旅行できない状況が続いていますが、この宙組公演でイタリア旅行をしたような、楽しい気分をお持ち帰りいただけたら嬉しく思います。暑い時期の稽古を宙組メンバーと共に頑張り、熱いショーに仕上げたいと意気込んでおりますので、ぜひ劇場に足をお運びください。お待ちしています。   

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【プロフィール】

藤井 大介

東京都出身。1991年宝塚歌劇団入団。1997年宝塚バウホール公演『Non-STOP!!』(月組)で演出家デビュー。2000年『GLORIOUS!!』(宙組)で宝塚大劇場公演デビューを果たす。トップスターのお披露目公演(『Joyful!!』2003年雪組・『宙 FANTASISTA!!』2007年宙組)、退団公演(『Dear DIAMOND!!』2015年星組・『Forever LOVE!!』2016年月組ほか)も数多く手掛けている。2005年韓国公演、2013年台湾公演ではショー作品の作・演出を担当し、宝塚歌劇の魅力を存分に発揮した作品で両公演とも好評を博した。『“R”ising!!』(2010年宙組)や『REON!!』(2012年星組)、『DRAGON NIGHT!!』(2015年月組)などライブやコンサートでもその手腕を発揮。また、『Santé!!』~最高級ワインをあなたに~(2017年花組)、『Gato Bonito!!』 ~ガート・ボニート、美しい猫のような男~(2018年雪組)、『クルンテープ 天使の都』(2019年月組)、『Cool Beast!!』(2021年花組)、『Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!』(2022年星組)など、多彩な作品を発表。エネルギッシュで独創的な作品を次々と送り出し、宝塚歌劇のショーシーンを牽引するひとりとして活躍している。真風涼帆率いる宙組とのタッグは、『NICE GUY!!』-その男、Sによる法則-(2019年)、『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~(2020年、2021年)に続き、今作で4度目となる。