ミュージカル『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-

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  • 「シティーハンター」原作者 北条 司先生からのメッセージ
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演出家 齋藤吉正が語る
ミュージカル『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-の見どころ

幅広いジャンルの作品で、観客の心を躍らせる演出家・齋藤吉正。新生雪組のスタートとなるこの公演で、人気コミックの初の舞台化に挑む齋藤に、その意気込みを聞いた。

原作の世界観を活かしながら、宝塚歌劇らしい作品に

北条司氏原作の漫画「シティーハンター」の魅力は?

ちょうど子供から大人へと成長する多感な時期に「週刊少年ジャンプ」に連載されていた「シティーハンター」と出会い、私自身、大きな影響を受けました。新宿の街や当時の社会情勢などのリアリティの中に、冒険やロマン、それから、たくましくありたいとか、女の子にモテたいとか(笑)、そういう思春期の男の子が持つ夢も詰まっていますよね。でも、それだけではなくて、実はとてもロマンチックな作品でもあるなと強く感じています。

宝塚歌劇で舞台化するにあたって意識した点は?

宝塚歌劇は『ベルサイユのばら』をはじめとして、多くの漫画作品を舞台化してきましたが、今回のように少年漫画に分類される作品、それも「シティーハンター」のような男性ファンの多い作品は珍しいのではないでしょうか。主人公・冴羽獠は、女性に対してはちょっとだらしないけれども、悪と対峙する強さと人への優しさを持ったキャラクターです。彼を取り巻く人々との友情や、恋といった要素は、宝塚歌劇の持つロマンと合致します。原作の魅力と宝塚らしさ、その互いに通じ合う部分を意識してつくっています。

舞台『CITY HUNTER』の見どころは?

原作ファンの一人として、原作を裏切るようなことはしたくないと思っています。北条司先生が描かれた世界観とディテールに宝塚歌劇が持つダイナミズムを加えて、しっかりと冴羽の隠されたルーツや本質を描きたいですね。
宝塚ファンの皆さまには「シティーハンター」の魅力を、「シティーハンター」ファンの皆さまには宝塚の魅力をお伝えできれば嬉しいです。

冴羽獠とリンクする、彩風咲奈の魅力

新トップスター・彩風咲奈について。

思い返すと、彩風には『JIN-仁-』(2012年雪組)の新人公演で主役を演じてもらいましたし、下級生時代から今まで、彼女の節目の度に立ち会えてきた気がします。ちょっとおこがましいですが、その経験が今回、彩風のトップスターお披露目公演を担当するにあたってのアドバンテージになると信じていますし、彼女の魅力を引き出せるようにしたいと思います。

彩風が演じる冴羽獠に期待することは?

彩風は、実直でストイックで、そしてクラシカルな魅力のあるスターです。それと同時に明るさや朗らかさも持ち合わせていますから、そういった部分が二面性を持った冴羽のキャラクターとうまくリンクすると思います。彩風と冴羽、両方の魅力を欲張って両立させたいと思っていますので、ご期待ください。

槇村香を演じる新トップ娘役・朝月希和について。

槇村香も、ショートカットヘアーでパンツスタイルと宝塚歌劇の従来のヒロイン像には収まらないキャラクターです。なにより「シティーハンター」といえば、“100tハンマー”を振り回す香を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
朝月は、華やかな表現をする娘役ですが、組替えによって培ってきた実力が幾層にも積み重なって、どんなタイプの役柄にも適応できる実力があります。この、槇村香という宝塚歌劇史上稀にみるヒロインをつくり上げる過程を、彼女と一緒に楽しみたいと思います。

彩風・朝月コンビの魅力は?

初舞台以来雪組一筋で育った“ミスター雪組”とも言える彩風と、組替えを繰り返してここに辿り着いた朝月は、違う旅路を歩んだ末にやっと出逢えた二人、という印象です。並んだ時のビジュアルがとても新鮮ですね。無垢で瑞々しいコンビの誕生に、とても期待しています。

ミック・エンジェルを演じる朝美絢について。

朝美が演じるミック・エンジェルは突拍子もない男で、まさに自由人です。役を大いに楽しんで、舞台の上で暴れまわってもらいたいですね。彼が果たして冴羽の敵なのか味方なのかはご覧いただいてのお楽しみですが、時にクールに、時にホットに、多彩な魅力を感じていただける役なので、新しい朝美絢をご覧いただけると思います。

新生雪組を支える綾凰華、縣千にも期待が集まります。

槇村香の兄であり、冴羽の一番の理解者でもある槇村秀幸を演じる綾とは、『桜華に舞え』(2016年星組)以来ですが、彼女の持ち味が雪組のカラーと混じりあい、とても良い色になっていると感じます。綾は、芝居に対するアプローチが実直で、深く考えて役づくりをするタイプですから、今回もしっかりと仕上げてくれるでしょう。
そして、縣は…ピッタリですよね(笑)。海坊主は冴羽獠の物語を描くうえで欠かせないキャラクターです。原作ではスキンヘッドですが、宝塚版ではターバンを巻いて、スマートなスタイルにしてみました(笑)。堂々とした風貌と、舞台人としての大胆さが魅力の彼女が、この役をステップにして、さらに成長してくれたら嬉しいですね。

最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

私は、ありがたいことに、文芸作品、海外ミュージカル、ショー、そして漫画を原作とした芝居と、さまざまなジャンルの作品をつくる機会をいただいてきました。野球で言えば、160キロの剛速球は投げられないけれど、変化球の多さで勝負していると言いますか(笑)。これまでの経験を生かし、宝塚歌劇の『CITY HUNTER』をお届けしたいと思います。
不安な社会情勢の下で、少しでも楽しいひと時をお過ごしいただけますよう、この大いなるチャレンジに邁進したいと思っております。どうぞご期待ください。

齋藤吉正

プロフィール
齋藤 吉正

神奈川県出身。1994年宝塚歌劇団入団。1999年宝塚バウホール公演『TEMPEST-吹き抜ける九龍-』(宙組)で演出家デビュー。宝塚大劇場デビュー作である2000年『BLUE・MOON・BLUE-月明かりの赤い花-』(月組)は独自の世界観を描き、インパクトあるショーに創り上げた。また、情熱の愛と夢の数々を描いた2015年『La Esmeralda(ラ エスメラルダ)』(雪組)、台湾公演も行なった2018年『Killer Rouge(キラー ルージュ)』(星組)と、多種多様な趣向を凝らした作品を発表。2019年6月には、宝塚歌劇初となる横浜アリーナ公演『恋スルARENA』(花組)を上演、舞台機構を駆使したエキサイティングな構成で観客を圧倒した。ミュージカルでは、2010年『TRAFALGAR (トラファルガー)』-ネルソン、その愛と奇跡-(宙組)、2016年『桜華に舞え』-SAMURAI The FINAL-(星組)、2019年『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』(月組)など、歴史上の人物を主人公にした独創的な作品を次々に発表。一方、2015年『TOP HAT』(宙組)、2019年『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』(月組)では、海外ミュージカルにも挑み成功を収めた。青池保子氏の代表作をミュージカル化した2007年『エル・アルコン—鷹—』(星組)、大ヒット漫画を原作とした2012年『JIN-仁-』(雪組)など、漫画を原作とした作品でも豊かな感性でヒット作を生み出した。


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原作「シティーハンター」の魅力

大ヒットコミックス「シティーハンター」

シティーハンター

シティーハンター
週刊少年ジャンプ 1985年~1991年 連載

新宿駅東口の伝言板に「XYZ」と書き込むことで現れるスイーパー・シティーハンター。腕は立つけど無類の女好き・冴羽獠と、そのパートナー・香のドタバタコンビが、美女からの依頼を請け負い事件を解決してゆく。累計発行部数5,000万部を超え、今なお愛されるアクションコメディ。

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北条司

シティーハンター 原作者
北条 司
(ほうじょう つかさ)

福岡県出身。’79年に第18回手塚賞で準入選後、翌年に週刊少年ジャンプ増刊号で読切『おれは男だ!』で漫画家デビュー。'81年に初連載『キャッツ♥アイ』で人気を博す。’85年より『シティーハンター』を連載し大ヒット。現在まで累計発行部数は5,000万部を超える。その他、代表作に『F・COMPO』『エンジェル・ハート』がある。

原作者 北条 司先生からのメッセージ

「シティーハンター」が宝塚歌劇で舞台化されると決まった時のご感想をお聞かせください。

とにかくビックリしました。宝塚歌劇といえば上品なイメージがあるので、ひょっとしたら『キャッツ♥アイ』と勘違いされているのではないかと思って確認したほどです(笑)。

ポスターをご覧になっていかがでしたか?

カッコいいですね!僕は勝手に『ベルサイユのばら』のようなビジュアルをイメージしていたのですが、原作の世界観に近付けてくれたといいますか、都会的な格好良さが出ている素敵なポスターだと思います。

宝塚歌劇版「シティーハンター」に期待されることは?

プロットを拝見し、原作を本当に読み込まれていることが伝わりました。めちゃくちゃ期待しています(笑)!僕の周りの宝塚歌劇ファンもすごく楽しみにしてくれているようですし、宝塚らしい舞台になってくれることを願っています。

お客様へのメッセージをお願いします!

とにかく、楽しんでいただけたら嬉しいです。“品”に関しては「シティーハンター」の責任ですので、宝塚ファンの皆様どうか怒らないで下さい(笑)!