『Santé!!』の見どころ
藤井大介×花組
6月2日から宝塚大劇場にて上演される花組公演のレビューは、フランス語で「乾杯!!」の意味を表す『Santé!!』。様々な夢や愛、ロマンが詰まった街パリを舞台に“ワインを飲んで見る数々の夢”をテーマとした、芳醇な香りと大人の雰囲気を放つ作品です。作・演出を担当するのは、現代的かつエネルギッシュなレビュー、ショー作品を多数生み出してきた演出家・藤井大介。藤井がこれまで手掛けてきた、花組での上演作品を振り返ってみましょう。
レビュー・アラモード
『Cocktail』─カクテル─ (2002年、2003年)
疲れたとき、悲しいとき、人はカクテルを飲む。楽しいとき、幸せなときもまた、人はカクテルを飲む。どんなときにも様々な夢を見せてくれるカクテル。一夜の夢、一夜の幻、一夜の芳香…。
美しく、またドラマチックな幾多のカクテルから受けるイメージを綴り合せて、華やかにお洒落に、そして各スターの個性をシェイクして構成されたレビュー。
2002年3月の初演で高い評価を得て、同年8月に博多座、翌年10月には全国ツアー公演と相次いで再演されました。
レビュー・スペシャル
『アプローズ・タカラヅカ!』-ゴールデン90- (2004年)
宝塚歌劇90周年の冒頭にあたり、宝塚歌劇の魅力のすべてを見せようと作られた、ゴージャスで明るく楽しいレビュー。真紅で表現される情熱的なプロローグから、黄金の輝きの中で出演者たちが煌めくフィナーレまで、色彩感溢れる世界を作り出しました。宝塚大劇場公演時には当時の各組トップコンビが交替で特別出演し、90周年の幕開きをより豪華に飾りました。
※三木章雄、齋藤吉正との共同演出
三井住友VISAシアター レビュー・ファンタジア
『TAKARAZUKA舞夢(マイム)!』 (2004年)
タイトルの示す通り「夢に舞う宝塚」を美しく華やかに表現したレビュー。ギリシャ神話に登場する数々の英雄、神の中からゼウスを主人公に、神話の中に見る愛の形を、華麗にダイナミックに描きました。プロローグの天地創造に始まり、ゼウスの誕生、ゼウスとヘラの結婚、トロイア戦争、戦争により廃墟と化した神殿で世界の終わりを感じたゼウスが流した涙により輝かしい神殿が甦るまでがストーリー性を持って綴られました。
X JAPANのYOSHIKI氏により、この作品のために新曲が提供されました。
スパークリング・ショー
『EXCITER!!』 (2009年、2010年、2017年)
刺激、熱狂、興奮をもたらす者“EXCITER”。ありふれた人生も、ちょっとした刺激、スパイスでバラ色に輝く。“音の革命”“美の革命”“男の革命”…。愛と夢を現代社会に送り届ける宝塚こそ“EXCITER”であるという軸の上に、究極に格好良い場面で構成された現代的でエネルギッシュなショー作品。
2009年に初演し大好評を博した本作品は、翌年に再演。さらに、2017年3月~4月に2017年版として『EXCITER!!2017』が花組全国ツアー公演で上演されています。
レビュー
『Le Paradis!!(ル パラディ)』-聖なる時間(とき)- (2011年)
「華」「夢」「時」をテーマに、華やかで夢があり、「人生」はただ一度、そんなちょっぴりほろ苦いイメージを持つパリの魅力を現代的な視線で捉え、パリの各地の色、香りから連想する場面によって構成した、大人向けのレビュー作品。
ラテン・パッショネイト
『CONGA(コンガ)!!』 (2012年)
ラテンの世界をテーマに、強烈なリズムとパッショネイトなダンスで、当時のトップスター蘭寿とむ率いる花組の魅力を存分に見せ、男っぽさと大人の色気を前面に出した情熱的なショー。真夏に相応しく、熱く刺激的に華やかに展開されました。
2012年の『CONGA(コンガ)!!』以来、5年ぶりに花組全員揃っての宝塚大劇場公演を担当する藤井大介。明日海りおを中心に、充実期を迎えた花組の新たな魅力が満載のレビュー・ファンタスティーク『Santé!!』に、どうぞご期待ください。
演出家 藤井大介が語る
1997年のデビュー以来常にチャレンジ精神を掲げ、スターの個性や魅力を余すことなく発揮し、心に残る作品を生み出し続ける演出家、藤井大介。2009年の初演から人気を博したショー『EXCITER!!』を、明日海りおの個性に合わせてリニューアルした花組全国ツアー公演『EXCITER!!2017』の成功も記憶に新しい。その藤井が、明日海りお・仙名彩世の新トップコンビの宝塚大劇場お披露目となる次回作『Santé!!』を手掛けるにあたり、話を聞いた。
『Santé!!』のテーマについて
「Santé!!」とはフランス語で「乾杯!!」という意味です。2002年に花組で上演した『Cocktail』では、さまざまなカクテルをテーマにしましたが、今回はワインに絞って、ワインが持つ多彩なイメージを各場面に散りばめた華やかな作品をつくりたいと考えました。今年は『モン・パリ』誕生90周年に当たりますので舞台をパリに、華やかなレビューにできればという想いが発端です。
作品の内容について
花組といえば、「男役の色気」が魅力のひとつとしてあると思うのですが、今回はANJU先生(元花組トップスターの安寿ミラさん)に、格好いいジゴロの場面の振付を担当していただきます。ANJU先生にはもう一場面、この公演が宝塚大劇場でのお披露目となる明日海と仙名の新トップコンビによるデュエットダンスの振付もお願いしています。初々しさは残しつつも、ワインを飲んだあとの余韻を感じさせるような、どこか大人っぽい雰囲気のデュエットダンスになると思います。他にも見どころはたくさんあって、たとえば明日海の意外とコミカルな面を生かした、酔っ払ってしまって……というような場面や、フレンチカンカンなども取り入れる予定です。そして、赤ワインにはイエス・キリストの血を象徴するような逸話が数多く残っていますので、今回はそこにインスピレーションを得て、迫害により命を落とした人物の流した血がワインとなり、それを飲んだ人々が再生していく……といった、幻想的でストーリー性のある場面も盛り込みたいと思っています。またフィナーレでは、『Cocktail』のときにも使用した長渕剛さんの楽曲「乾杯」で、花組男役の「これぞ黒燕尾!」といった場面もお見せしたいですね。
作品タイトルに込めた想い
私自身、お酒が好きで今作のモチーフであるワインも大好きなので、55分という限られた上演時間のなかで、ご覧いただくお客様に、まるでワインを飲んでいるように癒されて、楽しい気分になっていただきたいという想いを込めました。ワインと一口に言っても、情熱的で濃厚な赤ワインもあれば、爽やかですっきりした白ワイン、甘いロゼワイン……というように、ワインのいろいろな面をショーの中に醸し出せたらと思っています。
トップスター明日海りおの魅力や期待しているところ
明日海とは、彼女が月組時代の『Apasionado!!(アパショナード)』以来、9年ぶりに『EXCITER!!2017』で一緒に仕事をして、グッと男っぽくなったなと驚きました。当時はまだ若手男役ということもあって、彼女が普段から持っている優しい印象が前面に出ていましたが、今はそれだけではなく、伝統的な花組の男役らしいギラギラとした部分も加わりました。ますます芝居心に磨きがかかり、ちょっとした遊び心もある素晴らしいスターだと感じました。ただ格好いいだけでも、美しいだけでもなく、人間的にもとても素敵な人なので、私自身も彼女の多彩な魅力を探りながら、ショーの中でいろいろなキャラクターを演じてもらおうと思っています。彼女がトップスターに就任してからまもなく丸3年になりますが、明日海自身、「花組の男役はこうあるべき」という意識を強く持っているようで、名実ともに頼もしい“花組のトップ”になったと感じています。更に『Santé!!』で高みを目指してほしいですね。
トップ娘役として宝塚大劇場お披露目となる仙名彩世の印象、魅力
下級生の頃から三拍子揃った実力派の娘役で、いつも舞台を締めてくれていた仙名が、トップ娘役に就任したことがとても嬉しいです。可愛いだけではなく大人の色気も出せるという、彼女の両面をうまく引き出したいです。男役と同じく、“花組の娘役”にも代々受け継がれている衣装の着こなしや髪型のこだわりがありますが、その点でも仙名にはセンスの良さを常々感じていて、トップ娘役としてとても頼もしい存在です。明日海とのコンビは始まったばかりですが、『EXCITER!!2017』でのふたりのコンビネーションには、すでに安定感のようなものも感じられました。
芹香斗亜の印象、魅力、期待しているところ
芹香には、ずばり“ザ・タカラヅカの男役”といった品のよさがあり、正統派の男役のイメージがあります。ビジュアルも綺麗ですが、『CONGA(コンガ)!!』(2012年花組)の際は、見た目以上に熱いものを持っていそうな予感めいたものがありました(笑)。今回はそのあたりをうまく引き出したいですね。芹香はもちろんのこと、花組はそれぞれの個性が際立った組ですので、各人の持ち味を舞台に散りばめると、きっと面白い舞台がつくれるだろうと、私自身ワクワクしています。
あらためて宝塚歌劇の魅力とは
やはり、夢の世界だというところですね。お客様がひととき現実を忘れて、疲れを癒し、夢を見ることができる、そんな世界は宝塚歌劇だけだと思います。そして、ビジュアルも精神も美しいことも魅力ですね。タカラジェンヌは、素顔は可憐な女性たちですが、いざ舞台に上がると、途端に独特の輝きを放ち出す、そこはやはりフェアリーですね。
お客様へのメッセージ
花組は今、明日海を中心に充実期を迎え、光り輝いています。この度、明日海の相手役に仙名が就任したことで新たな化学反応が起こり、新しい花組の時代に入っていくと思いますので、今作ではその過程を楽しんでいただきたいです。お酒がお好きな方はもちろん、お子様やお酒を飲まれない方にも、まるでおいしいワインを飲んだときのような高揚感を味わっていただけるレビューにしたいです。そして、終演後に「最高級のワインだった」と喜んでいただけるように、これから花組の出演者と、そして今回は専科から美穂圭子と星条海斗という心強い助演を得て、全員で力を合わせて頑張ります。ぜひご期待ください。
【プロフィール】
藤井 大介
東京都出身。1991年宝塚歌劇団入団。1997年宝塚バウホール公演『Non-STOP!!』(月組)で演出家デビュー後、2000年『GLORIOUS!!』(宙組)で宝塚大劇場デビュー。スターの魅力を最大限に引き出す発想力豊かな作風に定評があり、トップスターのお披露目公演(『Joyful!!』2003年雪組・『宙 FANTASISTA!!』2007年宙組)、退団公演(『Dear DIAMOND!!』2015年星組・『Forever LOVE!!』2016年月組ほか)を多数手掛ける。『“R”ising!!』(2010年宙組)や『REON!!』(2012年星組)、『DRAGON NIGHT!!』(2015年月組)などライブやコンサートでもその手腕を発揮。時代に即したスピード感溢れるエネルギッシュな作品の数々で21世紀の宝塚歌劇のショーシーンをリードしている。