制作発表会レポート
5月8日(火)、宝塚歌劇月組公演 三井住友VISAカード ミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』の制作発表会が行われました。
制作発表会には、公演にご協賛いただく、三井住友カード株式会社 代表取締役社長・久保健様、宝塚歌劇団理事長・小川友次、宝塚歌劇団演出家・小池修一郎、月組トップスター・珠城りょう、月組トップ娘役・愛希れいかが登壇しました。
宝塚歌劇を代表するミュージカル、記念すべき10回目の上演!
1992年、ウィーンで誕生したミュージカル「エリザベート」は、1996年に宝塚歌劇で初めて上演されて以来、この月組公演で10回目の上演となる人気作品です。黄泉の帝王トート(死)を主役に、オーストリア皇后エリザベートとの物語を美しい旋律で彩ったこの大作ミュージカルに、作品毎に着実な進化を遂げている珠城りょうと、この公演での退団が発表されている愛希れいかを中心とした月組が挑みます。
異空間へと誘う、魂の熱唱
制作発表会は、『エリザベート』のパフォーマンスから始まりました。
まず、愛希れいか扮するエリザベートが登場し、肖像画のような横顔が浮かびあがると、名曲「私だけに」を静かに歌い始めます。重厚でありながら透明感のある歌声で、誇り高く孤独な皇后の心情を表現。強い意志を歌い上げる愛希に、万雷の拍手がおくられました。
続いて現れたのは、黄泉の帝王トート。エリザベートに怪しげな笑みを投げかけ一礼する珠城りょうは、大胆に、観る者の心臓をも掴みます。披露したのはエリザベートへの激しい想いを熱唱する、「最後のダンス」。不敵な帝王の瞳の奥に揺れる憂いは、他の何者でもない珠城オリジナルのトートを予感させ、新たなる『エリザベート』への期待に、会場の高揚感は最高潮に達しました。
再演のたびに好評を得てきたミュージカル『エリザベート』に、月組が新たな伝説を加えます。どうぞご期待ください!
- 制作発表会 ムービー
パフォーマンスの後、月組の珠城りょうと愛希れいかが意気込みを語りました。
月組トップスター 珠城 りょう【トート】
『エリザベート』のトート役をさせていただくと伺った時は、正直とても驚きました。私にとっては大きな挑戦になると思いますが、悩み、葛藤しつつも前を向いて歩み、務めさせていただくからには、今の月組にできる最高の作品になるよう、努力してまいります。宝塚歌劇において10回目となる『エリザベート』ですが、これまで多くの先輩方がつくってこられた素晴らしい作品の息吹を感じ、尊敬しつつも、一方で今の自分にしかできない、今の月組にしかできない『エリザベート』をお届けしたいと思っております。トートは作品の登場人物の中で実は一番純粋で“人間らしい”のではないかと感じています。そんな彼の感情を、音楽にのせてストレートに表現していきたいです。
また、この公演は相手役の愛希れいかの退団公演でもあります。彼女とは全身全霊で心をぶつけ合って舞台をつくってきました。妥協せずに、真摯に舞台に向き合う彼女の努力を身近に感じてきましたので、今作で一緒に物語をつくるのは最後になりますが、素晴らしい公演にしたいと思います。
楽曲について
本日のパフォーマンスでは「最後のダンス」を歌わせていただきました。“死”のエネルギーを感じさせるワイルドで力強い楽曲ですので、体力的にもハードではありますが、お客様にトートの感情をお届けできるよう、さらに稽古を重ねてまいります。『エリザベート』は素晴らしい楽曲ばかりですが、トートの強さと脆さ、そしてエリザベートの強さが表れた「私が踊る時」を、私のトートと愛希のエリザベートでどのように表現できるかを、自分でも楽しみにしています。
月組トップ娘役 愛希 れいか【エリザベート】
この作品に出演できますこと、エリザベートという役を演じさせていただきますことを幸せに感じると同時に、とても身の引き締まる思いでおります。子供時代の場面から、エリザベートが根本に持っている少女らしい繊細さを大切に演じていきたいです。私はこの公演で宝塚歌劇団を退団いたしますので、今まで見守ってくださったすべての皆さまに感謝の気持ちを込めて、小池先生をはじめ、珠城さん率いる月組の皆さんと一緒に、精一杯努めてまいりたいと思います。
楽曲について
私は「パパみたいに」のナンバーが、エリザベートの本質を表しているように感じていますので、エリザベートとして、この曲を歌わせていただけることがとても嬉しいです。また、本日は憧れでもあった「私だけに」を歌わせていただき、とてもパワーのいる楽曲だと実感しました。自然にエリザベートの心情を表現できるメロディーラインを大切に、本番に向けて精一杯練習に励んでまいります。
『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』の潤色・演出を手掛けるのは、宝塚歌劇のみならず現代日本のミュージカル界を代表する演出家として活躍中の、小池修一郎です。宝塚歌劇における『エリザベート』だけでも、それぞれの出演者、組の持ち味を生かした演出で、それぞれの作品をオリジナルの色に染めてきました。珠城りょう、愛希れいかを中心とする月組にはどのような色付けがされるのでしょうか。期待が高まります。
10回目の『エリザベート』に、新たな命を吹き込む
小池 修一郎(潤色・演出)
宝塚歌劇での『エリザベート』上演は今回で10回目となりますが、宝塚歌劇団は常にその時代のスターがつくり上げたものをリレーのように繋いで築いた歴史の上に成り立っています。今回の公演で特別な改変はありませんが、歴代の出演者たちが打ち立ててきたことをただ単になぞるのではなく、それぞれが苦労したであろう道を同じように歩み、なおかつその上に自分なりの役を築くことで、舞台に新鮮味が生まれるのだと思います。同じ役でも、ある出演者はとても革新的な斬新さで、また別の出演者は基本に返って古典的な正攻法の役づくりでと、その時代その役者によって個性のぶつかり合いが見られるのが『エリザベート』の面白さです。今の月組はそれぞれに個性があって、それが凝り固まっていないところが魅力的な組だと思います。その魅力が『エリザベート』という定番ともいえる作品をつくる上で、どのような変化を遂げ、新しい命を吹き込むか、私自身もとても楽しみにしております。
珠城りょうは、私が演出した『THE SCARLET PIMPERNEL』と『ロミオとジュリエット』の新人公演で主役を務めており、歌を中心としたミュージカルの中で役をつくっていくことは既に経験済みですが、今回あらためて主役を演じることで、自分の力でまた新たな扉を開いてくれるのではないかと思います。トート(死)は死のエネルギーそのものを表した役です。時には世界を滅ぼすほどの“死”の力を、珠城は熱量を持って演じてくれるであろうと、とてもワクワクしています。
そして、この作品で宝塚歌劇団を退団する愛希れいかにとって、エリザベート役は彼女の集大成となるでしょう。これまでこの役は、どちらかというと儚げな美貌の皇后として演じた者と、力強い女性として演じた者に大別できますが、愛希はその両方の接点をうまく表現することができるのではないかと、期待しています。