モーリー・イェストン氏インタビュー

『ファントム』の作詞・作曲を手掛ける音楽家モーリー・イェストン氏が、雪組の稽古場にお越しになりました。稽古の様子を見学された印象を、イェストン氏に伺いました。

写真 [写真左から]小川 友次(宝塚歌劇団 理事長)、真彩 希帆(雪組)、モーリー・イェストン氏、望海 風斗(雪組)、中村 一徳(宝塚歌劇団 演出家)

稽古場の印象は?

本当に素晴らしかったです。
雪組の皆さんは全員で協力して作品を創り上げようという精神があり、一つの大きな家族のように感じました。
彼女たちの類まれな音楽性もさることながら、私をもっとも驚かせたのはその演技力です。
全員がとても優れた役者であり、一人ひとりが役を深く理解した上で、美しい歌声と演技を融合させ、曲に役の表現をのせていることがしっかりと伝わってきました。彼女たちが創り上げるイマジネーションの世界に自然と導かれ、心を捉えられました。
稽古の段階であるにも関わらず、そのような完成度に達していることに興奮を覚えています。
こんなにも素晴らしい才能を持った方々がいらっしゃる宝塚歌劇団は本当に特別であり、圧倒されました。今日皆さんにお会いできたことを本当に幸せに思います。

望海風斗について

望海さんは非常に才能のある役者です。彼女は『ファントム』という作品がとても好きで、3回目の出演である今回、ずっと演じてみたかったという主人公エリック(ファントム)役に臨むと伺いましたが、彼女なりのエリックに対する深い理解が伝わってきました。
仮面で顔を隠していても、心の内に美しさや音楽に対する愛情を秘めたエリックを、望海さんは素晴らしい歌声と演技で表現してくれています。
今回の公演は、私が今までに観たファントムの中でもトップクラスのものになるだろうと感じています。

真彩希帆について

クリスティーヌ役の真彩さんは本当に美しい声をお持ちです。
クリスティーヌは楽曲「Home(私の夢が叶う場所)」で、“I’m Home この舞台なの 美しい音楽が溢れ 私を包むの” “この舞台でいつの日か歌うのよ”と歌いますが、演じている真彩さん自身も“この舞台がHome”だと思っており、彼女にとっても舞台で歌うことは人生の夢だったのです。それにより彼女のパフォーマンスには“真実性”が生まれます。
私の仕事はその“真実”が観る者に伝わる曲を書くことです。真彩さんはその意図をはっきりと理解し、素晴らしい演技を見せてくれました。

稽古場で印象に残った楽曲

どれも素晴らしかったので、一つに決めるのはとても難しいですが……。エリックとキャリエールの曲「You Are My Own(お前は私のもの)」に一番感動しました。
望海さんとキャリエール役の彩風さんにはお伝えしたのですが、この曲は、キャリエールがファントムに「我が息子よ」と意を決して伝えたことに対して、エリックが「僕もあなたが知らないことを打ち明けるよ。父親だと前から気づいていたよ」と美しい“真実”を打ち明け合うシーンです。
この曲を初めて書いた瞬間に引き戻されるような気持ちになりました。今回このお二人のデュエットを聞けただけで、来日した甲斐があったと思えました。

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公演に向けての期待

『ファントム』は、宝塚歌劇では2004年の初演から幾度となく再演されていますが、私はエンターテインメントに携わる者として、上演ごとになにか新しい発見が生まれると考えています。雪組の皆さんは、自分の役に没頭するだけではなく、一人ひとりが誠実に向き合い、互いに支え合って作品を創ろうとしているのがよくわかります。
このような形で作品が創られるとき、お客様は現実世界をひと時忘れ、一生心に残る時間を過ごすことができるのです。
私の目から見ても、雪組の皆さんは世界レベルのプロフェッショナルであり、彼女たちが創り上げる今回の公演は、自信を持って世界にお届けできる素晴らしいものになると確信しています。