制作発表会レポート
2月27日(木)に開催された、宙組公演『FLYING SAPA -フライング サパ-』制作発表会では、パフォーマンスの後、演出家の上田久美子、宙組トップスター・真風涼帆、宙組トップ娘役・星風まどか、芹香斗亜によるトークショーが行われました。アナウンサーの中井美穂さんの軽妙な司会により、和やかながらも作品にかける熱い想いが伝わるひと時となりました。
中井:パフォーマンスを見てさらに謎が深まったような印象を受けました。
上田:役の設定など各々に語ってもらいたいところではあるのですが、登場人物の正体や謎を徐々に解明していくことを楽しむタイプの叙事的な作品ですので、詳細な説明は極力控えさせてください(笑)。
中井:わかりました(笑)。お稽古はどのような様子ですか?
真風:今回のような世界観のSF作品に出演させていただくことが初めてですので、日々挑戦、といった状態です。私が演じるオバクは、記憶を失っている兵士で……、趣味はコーヒーを飲むことです(笑)。
上田:まだ第一幕の立ち稽古をしている段階なので、寝ているか、アンニュイな空気を発しているか、コーヒーを飲んでいるか、くらいですね(笑)。
星風:(笑)。最近は時代物やコスチューム物が多かったので、お稽古場でオバク役を演じられる真風さんの姿に、毎日新鮮さを感じています。
芹香:けだるそうな感じがとても素敵でカッコイイです。真風さんは元々男役として無駄な動きが少なく、人が三歩で動くところを一歩、多くても二歩で行くイメージがあり、そのような雰囲気が、オバク役にぴったりだと思います。
上田:怠惰な雰囲気がむしろカッコよく見える、ロングコートが似合う長身の男を主人公に、退廃的なSF作品をいつかやってみたいという夢がありました。そこに“真風涼帆”というぴったりな役者が現れたので、イメージを彼女に寄せて書いたのがこの役です。
真風:私自身とオバクに共通点はあまりないのですが(笑)。でも、お稽古に入ってみて、彼の人間らしからぬ感覚を模索しながらつくるのが、とても楽しいですね。
中井:星風さんはミレナ役にどんな印象がありますか?
星風:謎の多い役だからこそ、ミレナが存在している意味や、行動の意味を、私自身がしっかりと理解したうえで演じ、ストーリーを明確にお客様にお伝えしたいと思っております。
上田:私はどうも星風に“何か大きなものを背負っている”役を演じさせたくなるみたいで(笑)、ミレナも何かを背負っている役ですね。フランス映画のヒロインのような感覚で演じてほしいと、彼女には伝えました。従来の宝塚のヒロイン像とは異なる、コケティッシュで本能の赴くままに行動するような女性像に、勇気を持ってぶつかってほしいですね。
中井:芹香さん演じるノアは、比較的人物像がはっきりしているようですね。
芹香:はい、精神科医ですが、何でも診ます(笑)。
上田:設定は自由で、どのようにも演じてもらえる役です。
芹香:役づくりにあたって上田先生にお尋ねしたいことが山ほどあるのですが…基本は自由につくっていいということですか?
上田:はい。でも、興味があるのでどういう設定にしたかは教えてくださいね(笑)。今回の作品は、どの役にも生きてきた過程に想像の余地があって、出演者も自分が生きたことのない世界で生きられることの楽しさを感じてくれているのではないでしょうか。芝居に対する喜びが出演者全員から伝わってきて、非常に嬉しく思います。
中井:この公演は、世界的に活躍されている作曲家の三宅純さんが楽曲を提供されることも話題ですね。
上田:20年ほど前に留学していたフランスで、アート系漫画を読んでいた時、ヨーロッパでも人気の高かった三宅さんの音楽が偶然流れてきたのですが、その時に今回の作品のベースとなるSFの世界観の発想が生まれました。それであれば源流に戻って、三宅さんにこの作品の音楽をつくっていただけたら…と、実現したお話です。
真風:初めて楽曲をお聴きした時は、大変衝撃を受けましたね。普段は“自分の身体から音楽が出てくる”という感覚が多いのですが、今回は“出てくる”というより、細胞に“染みこんでくる”感覚が強く、それは今までにない新たな体験でした。
星風:作品のアンニュイな世界観と繋がっていて、無意識に身体が動いてしまう感覚が新鮮です。
芹香:心地良い違和感のようなものが魅力的に感じました。
中井:SF作品の難しさはどんなところでしょうか?
上田:SF作品といっても突拍子もない先の未来ではなく、比較的感情移入しやすい近未来に設定しています。舞台上から客席に向かってエネルギーを発散するタイプの作品ではなく、出演者自身がこの世界に入り込むことで、お客様をも引き込んでいく作品だと思いますので、演じる人たちの説得力にかかってくるでしょうね。
真風:『神々の土地』でご一緒させていただいた時は、上田先生が求めていらっしゃることを明確にアドバイスしてくださったのに対して、今回は全く違うアプローチで教えてくださるので、お稽古場では毎日たくさんの刺激をいただいています。
星風:私も『神々の土地』の時に、上田先生が確かなビジョンをお持ちでしたので、それに負けないよう、必死で模索した記憶があります。今回はまた違った形ですが、あの時のことを思い出しながら、日々勉強させていただいています。
芹香:この作品の台本を読んだ時、上田先生の頭の中はどうなっているの、と、感動を超えて不思議に思いました(笑)。先生の繊細なプランに私自身が何かを加えて、そして自身も楽しみながら、しっかりとお客様にお伝えしていきたいです。
真風:わずかな振りや動きをきっかけに役を探求しながら、自分の想像力と集中力の限界に挑戦したいですね。お客様とともにこの作品の世界をつくることができるよう、精一杯努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
真風涼帆を中心とした出演者30名が宝塚歌劇の歴史を新たに拓く、宙組公演『FLYING SAPA -フライング サパ-』に、どうぞご期待ください!