珠城りょう×上田久美子

月組公演『桜嵐記(おうらんき)』の作・演出を担当するのは、常に独自の感性で挑戦を続けてきた演出家・上田久美子。
舞台上に繊細な世界を生み出す上田が、珠城りょうの退団公演をどのように描くのか注目が集まります。珠城がこれまでに出演した上田作品を振り返り、その魅力をご紹介します。

『月雲(つきぐも)の皇子(みこ)』-衣通姫(そとおりひめ)伝説より-(2013年)

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珠城の宝塚バウホール公演初主演作であり、上田にとっても演出家デビュー作。美貌の皇子と皇女が禁じられた恋に落ちる“衣通姫伝説”を題材に、悲しい運命を美しく描いた。
珠城は気高く優しい主人公、木梨軽皇子(きなしかるのみこ)が都を追われ、野性的に変貌する様を見事に演じ切った。

上田久美子が語る

バウホールでの初主演に珠城が感じていた不安など、本人にしか分からない葛藤もあったと思います。しかし、役者は舞台でどれだけ熱を発するか、観客をその熱に巻き込めるかがとても大切です。彼女は当時からそれができる人でしたし、お稽古場でも普段どおりの姿で熱心に頑張っていたので、演出家としては何の不安もありませんでしたね。

『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』(2018年)

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上田の初のショー作品は、ほとんどのキャラクターが通し役というストーリー仕立てで、珠城は月から乗り込んできた自由で型破りな大悪党、バッディ役。
天性の大らかな明るさも生かされ、どこか憎めない魅力的な悪党像をつくり上げた。

上田久美子が語る

“悪”の魅力は、ある種の洒脱な動きが要求されますが、珠城は小手先で粋さを表現するのではなく、“悪の美学”の魅せ方をしっかりと研究したうえで、彼女らしいバッディ役をつくり上げてくれました。冒険的な内容のショーに、世の中の正しいとされる型から外れることへの強さや自由さを受け止めながら、臨んでくれたと思います。


武将・楠木正行の、儚くも鮮烈な命の軌跡を、一閃の光のような弁内侍との恋と共に描く、ロマン・トラジック『桜嵐記(おうらんき)』。心に染み入る物語を紡ぎ出す上田が、この作品が宝塚最後の舞台となる珠城の新たな魅力を引き出します。どうぞ劇場でお楽しみください。