制作発表会レポート
5月25日(水)、宝塚歌劇 三井住友VISAカード ミュージカル『グレート・ギャツビー』の制作発表会が行われました。
制作発表会には、公演にご協賛いただく、三井住友カード株式会社 代表取締役社長 大西幸彦様、宝塚歌劇団理事長 木場健之、宝塚歌劇団演出家 小池修一郎、月組トップスター 月城かなと、月組トップ娘役 海乃美月が登壇しました。
アメリカ文学の、そして宝塚歌劇の不朽の名作がバージョン・アップ!
1991年に雪組で世界初のミュージカル化に成功し、2008年の月組日生劇場公演での再演も大好評を博した『グレート・ギャツビー』。1920年代アメリカの光と影を背景に、一人の男の栄光と挫折を描いた、名作の呼び声高い伝説の作品を、演技力に定評のある月城かなと率いる月組メンバーが、2022年版としてお届けします。
名曲の再現と新曲の披露に、高まる期待
制作発表会は『グレート・ギャツビー』のパフォーマンスから始まりました。
今作の作曲・編曲担当の一人でもある小澤時史氏の甘美なピアノ演奏の中、ジェイ・ギャツビー役を演じる月城かなと、デイジー・ブキャナン役を演じる海乃美月のシルエットが、壇上に浮かびます。小澤氏による新曲「入り江がひとつだけ」のデュエットとなり、二人は熱い気持ちを歌います。
一人残った月城が、哀愁漂う背を向けた立ち姿から、初演より歌い継がれる「朝日の昇る前に」を、決意の中にも愁いを覗かせる歌唱でたっぷりと聴かせ、会場を作品の色に染め上げました。
映画化もされた20世紀アメリカ文学の最高峰と謳われる原作をベースに、宝塚歌劇ならではのテイストを加えてお届けする、三井住友VISAカード ミュージカル『グレート・ギャツビー』に、どうぞご期待ください!
- 制作発表会 ムービー
パフォーマンスの後、月組の月城かなと、海乃美月が抱負を語りました。
月組トップスター 月城 かなと【ジェイ・ギャツビー】
素晴らしい作品に挑戦できますことを、非常に光栄に思っております。誰もが知っている作品だけにプレッシャーもありますが、その分やり甲斐のある役だとも感じています。
この物語には普遍的なものが流れていると思いますし、単なるラブストーリーでもありません。海乃とは様々な作品に挑戦してきましたので、私たち二人だからこそのラブストーリーをつくることができればと考えております。今作を経て、二人のつくる作品の幅も広がるのではないかと思います。
私は歌う時はいつも、芯となるものを一つ決めるように心がけています。ギャツビーはとても複雑なキャラクターで、演じる難しさを感じておりますが、「朝日の昇る前に」を歌うにあたっては、デイジーの愛はもしかしたら幻想かもしれないという不安の中でも、理想に向かって手を伸ばし続ける真っ直ぐな気持ちを芯に据えました。他の楽曲も、歌詞に込める役の心を大切に歌いたいと思います。
小池先生のご指導のもと、月組生一丸となって挑んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
月組トップ娘役 海乃 美月【デイジー・ブキャナン】
『グレート・ギャツビー』という作品に巡り合い、出演させていただけることに、心より幸せを感じております。
ギャツビーが一生をかけて愛した女性を、どのようにつくり上げていくかが大きな課題だと思っております。デイジーはリアリストな面がありますが、とてもロマンチストな部分も持ち合わせている女性だと解釈しています。本日のパフォーマンスでは、その部分を意識しながら、月城さんと二人で醸し出す空気感を大切に歌わせていただきました。
月城さんは表現力が豊かで、人一倍の想像力を持っていらっしゃる方です。そのイメージを周りに伝えてくださることによって、今の月組は同じ方向に進んで行けているのだと、心強く思います。今回の作品は大変奥深く、難しい部分も多いのですが、小池先生にご指導いただきながら、月城さんのイメージされている方向に全員で向かい、精一杯つくっていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
『グレート・ギャツビー』の脚本・演出を担当するのは、数々の名作を送り出してきた、現代日本のミュージカル界を代表する演出家、小池修一郎。その小池が、大劇場デビュー間もない1991年に『華麗なるギャツビー』として初演、華やかな社会に生きる人々の深層までをも浮かび上がらせる見事な演出で、多くの観客の心を震わせました。一本立てに改編した2008年の日生劇場公演を経て、演技巧者が揃う月組で再び挑む今作を前に、意気込みを語りました。
2022年月組ならではの『グレート・ギャツビー』を
小池 修一郎(脚本・演出)
1991年初演時の杜けあきさん、鮎ゆうきさんのトップコンビの素晴らしさが、再演、再々演に導くひとつの原動力となったのだと思っております。31年の時を経て、大劇場で一本立て作品として上演させていただけると当時の私が知ったら、絶叫して走り回るほど喜ぶことでしょう(笑)。
「グレート・ギャツビー」という小説を宝塚歌劇の舞台で上演することは、私の入団当時の宿願でした。片田舎で育った少年が都会での成功を夢見るという話は世界中にあり、その多くが挫折で終わるのですが、ギャツビーの場合は恋愛において挫折し、死に殉ずる、というところに大変惹かれたのです。
そして今あらためて思うのは、彼の生きた1920年代から時代は進み、社会は変わりましたが、いつの時代であろうとも成功者が後に挫折を味わうこともある、ということです。社会との関わり、そして成功ということへの憧れと挫折という普遍的なテーマを持つこの物語は、現代においても、大変説得力があるのではないでしょうか。
大劇場で再演するにあたって、果たして当時のようなエネルギーが自分にまだあるのか自問するところではありますが、新生月組のお披露目公演を大成功させた月城・海乃コンビの演技力と魅力によって、この公演が成功するという期待感を、私自身が持っております。2022年の月組ならではの『グレート・ギャツビー』に、ぜひご期待いただきたいと思います。
◆月組トップコンビについて
先ほどのパフォーマンスでも、トップコンビが大変充実していると感じました。
月城の歌唱力はもとより、その中にも光る演技力、そして豊かな表現力を持っています。爽やかで端正な顔立ちながら、『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』(2018年)のルキーニを演じた時のように、色の濃い役もバリッとできる振り幅の広さが彼女の魅力です。今回、月城に演じてもらうギャツビーは、決して綺麗とは言えない生き方をしている面と、一方で純粋さを感じさせる、二面性を持った男性ですので、まさにピッタリであり、非常に魅力的に演じてくれるだろうと確信しております。
海乃は、楚々とした印象の娘役ですので、デイジーのような驕ったところのあるリッチな女性を演じるのは、ある意味挑戦になるのではないかと思いました。しかし、トップコンビお披露目公演『今夜、ロマンス劇場で』で、美雪という勝気な女性を生き生きと演じていたのを見て、今の彼女ならば、ギャツビーと再会して揺らぐ、微妙な女性心理を上手く表現してくれるだろうと、とても楽しみになりました。
実力に溢れた月城、海乃のコンビと、演技派揃いの月組の力が活かされ、私が考える以上の舞台をつくり上げてくれるでしょう。