制作発表会レポート
10月20日(火)、東京にて宝塚歌劇雪組公演 浪漫活劇『るろうに剣心』~原作 和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ・コミックス刊)~ の制作発表会が行われました。
中井美穂さんの司会のもと、宝塚歌劇団 理事長・小川友次、宝塚歌劇団 演出家・小池修一郎、雪組トップスター・早霧せいなら雪組出演者8名が登壇。さらにスペシャルゲストとして、アニメ版「るろうに剣心」で緋村剣心の声を担当した元月組トップスター・涼風真世さんも登場しました。「るろうに剣心」の生みの親、和月伸宏氏もこの模様を見守り、サプライズでコメントを寄せてくださいました。
華やかに行われた制作発表会の様子を詳しくお届けします。
個性的なキャラクターが躍動するパフォーマンス
和月伸宏氏が1994年4月に週刊少年ジャンプで連載開始後、シリーズ売上累計5900万部を超える大ヒットとなった人気コミック「るろうに剣心」。1996年にはアニメ化、2012年には実写映画化されいずれも大ヒットを記録しました。このたび早霧せいなを中心に充実期にある雪組が初のミュージカル化に挑みます。
まず披露されたパフォーマンスでは、雪組出演者8名がそれぞれの役柄に扮して登場し、一瞬にして会場を『るろうに剣心』の世界に染め上げます。まずは緋村剣心役の早霧せいなが、左頬の十字の傷など原作から抜け出たかのような姿で登場。「不殺の誓いのため、逆刃刀に持ちかえた孤高の流浪人、緋村剣心」というナレーションにぴったりの鋭さの中にも憂いある目線、抜刀斎と称された剣心らしい美しい剣さばきで魅了します。
次に神谷活心流の師範代であり剣心を側で支える神谷 薫役の咲妃みゆが、竹刀を振り“剣術小町”ぶりを見せて新たなヒロイン像を印象づけます。
さらにキャラクターが一人ずつ登場。相楽左之助役の鳳翔 大は身長よりはるかに大きい斬馬刀を振り回しダイナミックに。武田観柳役の彩凪 翔はワイングラス片手に“金こそすべて”という悪徳商人ぶりをアピール。元新撰組三番隊組長・斎藤 一役の彩風咲奈は、軍服姿で斎藤 一の必殺技・牙突も披露します。過去の罪を背負った女医・高荷 恵役の大湖せしるは、しっとりとした動きの中で恵の艶やかさや気丈さを表現。冷徹さを秘めた四乃森 蒼紫役の月城かなとは、蒼紫ならではの二刀流とロングコートで凛々しくキメます。そして、オリジナルキャラクターである加納惣三郎役の望海風斗が、伝説の美剣士と名高い元新撰組隊士の謎めいた雰囲気をまとって登場。剣心との緊迫感溢れるライバル関係にも期待が高まります。
最後は8名が揃って登場し、作品世界の魅力を充分アピールするパフォーマンスとなりました。
- 制作発表会 ムービー
宝塚歌劇&「るろうに剣心」ファン共に楽しめる舞台を
次にアニメ版で緋村剣心の声を務めた元月組トップスター・涼風真世さんがスペシャルゲストとして登場。雪組生の躍動感あるパフォーマンスを見て、「まるで宝塚歌劇のために『るろうに剣心』があるのではないかと思いました!」と興奮。早霧の剣心については、「自分が声を担当していたとは思えないぐらい素敵で、『おろ?』と言うのもとても良かったです」と話します。「和月伸宏先生が抱く緋村剣心のイメージを壊さないように、声に魂を吹き込んで演じていました」と、剣心役についての想いも語ってくれました。
制作発表を見守っていた和月伸宏氏も、壇上の涼風さんたちから呼び掛けに応えて、声のみで参加してくださいました。今回のパフォーマンスを見て、「『るろうに剣心』は恵まれているなとしみじみ思いました。まさにこの作品は宝塚のためにあるようです。皆さんバッチリで感動しました」と話します。さらにいくつか質問に答えてくださいました。
宝塚歌劇をご覧になったことはありますか?
和月伸宏氏
「最近2回拝見しました。とても華やかで女性が夢中になるのも当然だなと。101年続くエンターテインメントのすごさを感じました」
宝塚歌劇の『るろうに剣心』への期待
和月伸宏氏
「宝塚歌劇のファンには『るろうに剣心』の世界を、『るろうに剣心』のファンには宝塚歌劇を楽しんでいただけるような作品になれば嬉しく思います。オリジナルキャラクターの加納惣三郎については、剣心と薫の間に立つような恋敵的要素もあるとお聞きしました。自分では思い付かなかった宝塚歌劇らしいキャラクターで、漫画にも出してみたいと思うくらいです。『星逢一夜(ほしあいひとよ)』『La Esmeralda(ラ エスメラルダ)』を拝見し、雪組の皆さんの演技力ならと安心しています。自由に思う存分演じてほしいです」
原作者の和月氏から大きなエールを受け、雪組生とスタッフが一丸となってつくりあげる舞台にどうぞご期待ください!
パフォーマンスの後、雪組出演者8名が公演への意気込みを語りました。
雪組トップスター 早霧せいな(緋村 剣心役)
多くの人を笑顔にする使命のもとで生きている剣心は、自分の宝塚人生と重なる
「和月先生が描かれ様々な分野で大ヒットを記録している“るろうに剣心”を、今の雪組で上演できることに運命や奇跡を感じます。このご縁を大切にしたいです。嫌う人はいないくらいに愛されている剣心というキャラクターを演じるプレッシャーはありますが、私自身も剣心に惚れています。彼は人斬りという過去を持ちながらも、明るい未来のため、より多くの人を笑顔にするという使命のもとで生きていると感じています。今の私の宝塚人生と重なるものがあり、自分自身を剣心に投影しながら役を生き、演じ、皆様に愛されたいと思います。日本物には多く出演していますが、このように派手な“剣心色”と言える着物は初めてです。(頬の)傷もそうですが、今日は自ずと自分の内側から熱いものがこみ上げてきました。作品がさらに大きく育つよう、心を込めて演じたいです」
雪組トップ娘役 咲妃みゆ(神谷 薫役)
前向きでひたむきな生き方に共感。天真爛漫な薫をつくりあげたい
「和月先生の原作を読ませていただき、神谷 薫という人物はとても魅力的な女性だと感じました。彼女の前向きでひたむきな生き方に、私自身も学ぶことや励まされることが多々ありました。原作を読んだときに感じた純粋な印象を一番大切に、小池先生のご指導のもと天真爛漫な薫をつくりあげていきたいです。パフォーマンス披露では大変緊張しましたが、照明やナレーションも加わり、スッと『るろうに剣心』の世界観に入り込むことができました。竹刀の扱いなど慣れない部分もありますが、神谷活心流の師範代と名乗っても恥ずかしくないよう、一生懸命努力したいと思います」
雪組 望海風斗(加納 惣三郎役)
原作ファン・宝塚ファン共に喜ばれるようなオリジナルキャラクターに
「最初にオリジナルキャラクターを演じさせていただくと聞いたときはびっくりしましたが、新しい役で『るろうに剣心』の一員となれることをとても嬉しく思います。まだ役の輪郭などは自分の中でも見えていない状態なのですが、ここに並んでいる魅力的なキャラクターの皆さんに負けないぐらい強いキャラクター像を生み出し、“伝説の美剣士・加納惣三郎”になれるよう頑張ってまいります。原作のファンの皆様にも宝塚歌劇のファンの皆様にも喜んでいただけるような、新しいキャラクターをつくりあげたいと思っております」
雪組 彩風咲奈(斎藤 一役)
“牙突”も披露。意志を貫き続ける男らしい斎藤 一を演じたい
「まさか斎藤 一の役をさせていただけるとは思っていなかったので、とても身の引き締まる思いです。原作を全巻読んだ中で受けた彼の印象は、剣心と同じく幕末を生き抜きながら、明治の世で剣心とはまた違った意志を貫き続けている男の力強さです。手袋を付け、サーベルの代わりに日本刀を持っているのも珍しいですし、このように軍服を着ると改めて気持ちが引き締まります。有名な“牙突(がとつ)”をパフォーマンスで披露させていただきましたが、まだまだ未熟なのでしっかり稽古に励み、素敵な男らしい斎藤 一を演じたいと思います」
雪組 彩凪 翔(武田 観柳役)
独特の空気を持つ色濃い役。悪役の表現方法を研究してゆきたい
「先ほど早霧せいなさんが『剣心は皆様から愛されるキャラクター』というお話をされましたが、私はまさに正反対の、皆様から嫌われるキャラクターとも言える、色濃い役を演じさせていただきます。強いインパクトのあるキャラクターであり、武田観柳の持つ独特の空気を出したいと思います。(これだけの悪役は)とても勉強になります。どうすればみんなから憎まれるのか、色々な表現の仕方があると思うので、これから研究して舞台に臨みたいと思っております」
雪組 鳳翔 大(相楽 左之助役)
斬馬刀を自由に扱えるように筋力もつけ、男らしい人物像に
「左之助は豪腕で怪力、直情型の熱い男で、やはり最初にイメージしたのは斬馬刀(ざんばとう)という大きな刀を持って戦う姿です。クールな剣士が多いなかで、左之助は斬馬刀を振り回したり拳を使ったりと、みんなと少しタイプが違います。さらに悪一文字を背負って生きている、男らしい人物だと思います。剣心と出会い変わっていくところ、仲間との絆なども大切に演じたいです。まずは斬馬刀を自由に扱えるように筋力をつけ、稽古に励みたいと思います」
雪組 大湖せしる(高荷 恵役)
大好きな原作の世界に生きられて光栄。罪ゆえの妖艶さなどを表現したい
「小さい頃から漫画の“るろうに剣心”が大好きでしたので、その世界の住人として生きられることをとても光栄に思っております。私が演じる恵は、秘められた過去を持った謎めいた女性です。その罪ゆえの妖艶さなどを表現していきたいと思っております。色濃い役を数多くさせていただいていますが、これまでとはまた違った人物像をつくりあげていきたいです」
雪組 月城かなと(四乃森 蒼紫役)
二刀流にロングコート。秘められた野望や仲間への思いもしっかり見せる
「パフォーマンスを終えて皆様のご期待のほどを感じ、身の引き締まる思いです。蒼紫を演じるにあたっては、二刀流での立ち回りはもちろん、和月先生が原作で描いていらっしゃるクールな外見に秘められた野望や、仲間への熱い想いをしっかり表現したいです。ロングコートと長い前髪の奥に光る瞳というのも、皆様が蒼紫にイメージされるところだと思います。まずはロングコートをしっかりさばけるように頑張りたいと思います」
最後に早霧せいなが、「皆様の期待以上のものをお見せできるよう、心を込めてつくっていきたいと思います」と力強くコメントしました。『ルパン三世』でもキャラクターの個性や世界観を宝塚歌劇の舞台に融合させ、成功に導いた雪組。日本物を得意とする実力を活かしながら、明治維新後の時代を舞台にした勢い溢れる新たな名作にご期待ください。
今作で脚本・演出を担当するのが、『エリザベート』『THE SCARLET PIMPERNEL』『ロミオとジュリエット』など人気作を数多く手掛ける演出家・小池修一郎。
制作発表会では、人気コミック「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」初のミュージカル化となる本作への意欲を語りました。
宝塚歌劇ができる最大を目指し、楽しい公演にしたい
脚本・演出 小池修一郎
「今日のパフォーマンスを見て、改めてこの作品は宝塚歌劇にぴったりだなと、かなり良いものになると実感いたしました。宝塚歌劇で上演するにあたり、和月先生から新しい役を作った方がいいのでは、とアドバイスをいただき驚きましたが、色々資料を読み、加納惣三郎という人物を新たにオリジナルキャラクターとして加えることになりました。愛に殉じたと言われる惣三郎が、明治維新の後に生き延びていたら…という設定が面白いかなと思っております。大変長い原作 で、色々なキャラクターにそれぞれの戦いがあり、様々な技が登場しますが、宝塚歌劇ができる最大を目指し、楽しい公演にしたいと思います」
原作の中からどのように展開してゆくのか
「原作の中の“東京編”と言われる最初の一連のシリーズをベースにしたいと思います。そこに幕末からの因縁のある加納惣三郎が絡んでくる構図を考えています」
「るろうに剣心」が宝塚歌劇とマッチしていると思う点は?
「主人公の緋村剣心が剣豪で強い男だけれど、強いだけではなくチャーミングなキャラクターであるところに魅力を感じました。また、剣心の希望を感じさせるポジティブな生き方や現実と向きあう姿も大変魅力的で、宝塚歌劇が目指す世界と共通していると思います」