『るろうに剣心』入門

3分でわかる『るろうに剣心』

『るろうに剣心』のあらすじ

  

時は明治十一年(1878年)、東京下町にある神谷剣術道場に、緋村剣心と名乗る流浪人が滞在することになる。父の死後、道場を一人で守ってきた神谷活心流の師範代である美少女・神谷 薫は、無双ともいえる剣の腕を持ちながら、人の幸せのためにしかその剣を使わない剣心に惹かれていく。

左頬には十字の傷、逆刃刀で弱き者を助ける剣心こそ、幕末の動乱期に“人斬り抜刀斎”と恐れられた伝説の剣客。明治維新後、“不殺”の誓いをたてた剣心の前にさまざまな色濃いキャラクターたちが現れる。
悪一文字を背負い“喧嘩屋”を名乗る相楽左之助や医者一族の末裔・高荷 恵との出会い、因縁のライバルである元新撰組三番隊組長の斎藤 一との再会、そして闇の実業家・武田観柳、元隠密“御庭番衆”の四乃森蒼紫ら強者たちとの対立…。彼らとの出会いが剣心の信念を動かすことになる。

さらに伝説の美剣士と謳われた元新撰組隊士の加納惣三郎が、大きな敵として剣心の前に立ちふさがる。果たして複雑に絡み合う運命の糸は…。新しい時代の幸せを模索する剣心の生き様が、宝塚歌劇ならではのミュージカルとなって舞台上に生き生きと繰り広げられる。
  

『るろうに剣心』の時代背景

  

誰もが幸せに暮らす世を創ることができると信じ、倒幕を目指す維新の志士として戦った主人公・緋村剣心。
幕末から明治へと時代が大きく変わる転換期を舞台とした物語の背景を紹介する。   

黒船来航

鎖国政策を貫いてきた江戸幕府が黒船来航を機に大きな転換を強いられると、日本国内でも様々な勢力が動き出す。新しい時代を築こうとした代表格が元土佐藩士の坂本龍馬であり、薩摩藩の西郷隆盛、長州藩出身の桂小五郎らも歴史に名を残す。一方、江戸幕府を守るために京都の地で死闘を繰り広げたのが新撰組。局長の近藤 勇、副長の土方歳三、そして三番隊組長を務めた斎藤 一といった屈強な志士の集まりだ。雪組公演『るろうに剣心』では、元新撰組組隊士と言われている加納惣三郎も登場する。   

慶応三年(1867年)に江戸幕府が朝廷に政権を返した大政奉還の後も、旧幕府軍は政権を握ろうと武力を行使。それを倒幕派は黙って見守るわけがなく、慶応四年(1868年)の京都「鳥羽・伏見の戦い」で真正面から衝突。軍事力で勝った新政府軍はその後も旧幕府軍を東へと追いつめ、一連の戊辰戦争の敗北で江戸幕府の時代が終焉する。   

明治政府の欧化主義を象徴する鹿鳴館の様子

新たに誕生した明治の新政府。かつて理想のために戦った武士たちの中には、権力を握るや私利私欲に走る者が出てくる。西欧諸国に追いつくため、技術や文化的な面から刷新を図ろうとした新政府は、武士に帯刀を禁止する「廃刀令」を下す。これによって、かつて活躍した武士の尊厳は打ち砕かれ、刀が過去の産物へとなっていく。   

剣心の生い立ち

  

緋村剣心 役(早霧せいな)

嘉永二年(1849年)、心太(しんた)として誕生した剣心。両親を失い人買いに買われた彼は、ある日夜盗の襲撃に遭ったところを飛天御剣流の師匠に助けられ「剣心」と改名する。大切な人を守り抜く強さを身につけるため、剣の道を志し、飛天御剣流の使い手として研鑽するものの、途中で師匠と喧嘩別れをする。その後、長州藩の軍隊組織である奇兵隊に入隊。桂小五郎の目に留まり人斬りとしての道を歩み出す。

幕末の京都では維新と天誅の大義のもと剣を振るい、「人斬り抜刀斎」として恐れられる存在になる。日本で一、二と称されるほど剣術を磨いた彼は、修羅さながらに人を斬り伝説と化していった。   

©和月伸宏/集英社

鳥羽・伏見の戦いの後は人々の前から姿を消し、流浪人として旅を始める。 血に染まった自らの過去を悔い、もう人を斬らないという“不殺”の誓いをたてた剣心は、人々の幸せを守るために生きていく決意をする。明治となっても弱者が虐げられる時代の中で、弱き者を助けるために逆刃刀を振るい、様々な出会いによって成長してゆく。   

キーワード解説

  • 流浪人(るろうに)
    一つのところに留まらず、旅を続ける流れ者のこと。明治に入ってからの剣心の生活スタイル
  • 神谷活心流(かみやかっしんりゅう)
    薫の父である神谷越路郎が創始した活人剣。相手を殺すのではなく「人を活かす剣」を志とし、剣は人のために振るうと考えている
  • 逆刃刀(さかばとう)
    通常の刀と異なり、その名のとおり刃と峰が逆向きのもの。人を斬る殺傷力をもたないため、“不殺”の誓いをたてた剣心の愛刀として使われる
  • 不殺(ころさず)
    人を殺めることをしないという剣心の誓い。明治維新後の剣心は、どんなに危険な立場に置かれても逆刃刀だけで勝負し、人斬りを行わない
  • 飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)
    剣心が幼少時代に師匠・比古清十郎から教わった、神速の古流剣術。“速さ”を最大限に生かした、一対多勢向きの殺人剣