作品の魅力
「グランドホテル」の歴史
月組公演『グランドホテル』は、1928年のベルリンを舞台に、高級ホテルを訪れた人々が一日半のうちに繰り広げる様々な人間模様を描いたミュージカルです。1929年に原作となる小説が出版されてから、演劇、映画、ミュージカルと多様な形で公開され、そのたびに大きな反響を呼んできました。愛情や友情など、人間のもつ様々な感情や登場人物一人ひとりの生き様を美しい音楽に乗せて描き、時代を超えて感動を呼ぶミュージカル『グランドホテル』。その歴史をご紹介いたします。
1929年
- 原作となる小説「ホテルで出会った人々」"Menschen in Hotel"(ヴィッキー・バウム 作)が出版される
1930年
- 原作を劇化した「グランド・ホテル」がニューヨークで上演
1932年
- ハリウッドの映画制作・配給会社MGMにより「グランド・ホテル」映画化
- 1932年度の《アカデミー作品賞》を受賞
◆出演者・スタッフ |
・ グレタ・ガルボ(MGM専属のトップスター) |
<監督> |
・ エドマンド・グールディング |
1958年
- ロバート・ライト、ジョージ・フォーレストのコンビ(作詞作曲)が「アット・ザ・グランド」という題名でミュージカル化
地方都市にて試演される
1989年
- トミー・チューン演出・振付により「グランド・ホテル」がブロードウェイにて初演
- 1990年度《トニー賞》で12部門にノミネート、5部門で受賞
<受賞部門> |
・ 振付賞(トミー・チューン) |
トニー賞とは
ニューヨークのブロードウェイでその年に上演された演劇・ミュージカル作品に毎年与えられる、米国で最も権威のある演劇賞。制作者、演出家としてもブロードウェイの発展に貢献した、女優のアントワネット=ペリー(愛称トニー)を記念して、1947年に創設された。受賞の有無により、ブロードウェイでのロングランを左右する偉大な賞。
1991年11月~92年1月
- オリジナル・キャストを含む豪華キャストでの来日公演(東京・京都・名古屋)
1993年4月
- 宝塚歌劇 月組にて『グランドホテル』初演
涼風真世を中心とする月組で宝塚バージョンを上演
トミー・チューン氏を演出・振付に迎え、オットー・クリンゲラインを主役に生きる喜びを謳い上げた
◆スタッフ |
・ 演出・振付: トミー・チューン |
2017年1月
- 宝塚歌劇 月組にて『グランドホテル』再演
珠城りょうが演じるフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵を主人公に新たなシーンや楽曲も加わる新生『グランドホテル』
◆スタッフ |
・ オリジナル演出・振付、特別監修: トミー・チューン |
主な配役 | 2017年 月組 | 1993年 月組 | |
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フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵 | グランドホテルに長期滞在する貴族 多額の借金を抱えている |
珠城りょう | 久世星佳 |
エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ | ロシア出身の伝説的なバレリーナ 5度目の引退公演をベルリンで行うためにグランドホテルに滞在している |
愛希れいか | 羽根知里 |
オットー・クリンゲライン | プライジングの会社の元簿記係 重病を患い余命をグランドホテルで過ごしたいと願う |
美弥るりか | 涼風真世 |
フリーダ・フラム[フラムシェン] | 映画スターになることを夢見るフリーのタイピスト | 早乙女わかば 海乃美月 |
麻乃佳世 |
ラファエラ・オッタニオ | グルーシンスカヤの忠実な付人 | 暁 千星 朝美 絢 |
天海祐希 |
エリック・リトナウアー | フロント係 | 朝美 絢 暁 千星 |
汐風 幸 |
オッテルンシュラーグ | グランドホテルを定宿としている医師 | 夏美よう | 汝鳥 伶 |
ヘルマン・プライジング | アメリカの実業家 オットーの元上司 |
華形ひかる | 箙 かおる |
高級ホテルを訪れる人々の、様々な人生模様を描くこのミュージカル。今回は、宝塚歌劇の初演には無かった場面も追加し、装いも新たにお届けします。
新月組トップスター・珠城りょうの宝塚大劇場お披露目公演として、24年ぶりに蘇る話題の名作『グランドホテル』を、どうぞお見逃しなく!
レビューの父「岸田辰彌」
2017年、宝塚歌劇で初めて“レビュー”が上演されてから90周年を迎えます。日本初の“レビュー”を作り上げた岸田辰彌と、“タカラヅカ・レビュー”の誕生について紐解いてみましょう。
浅草オペラで活躍していた岸田辰彌は、宝塚歌劇団に入団後、4,000人収容できる劇場で上演するにふさわしい演目を模索する小林一三より命を受けて一年余りの海外視察に赴きました。そして1927年9月、自身が見聞きした海外の情景、音楽をレビューに仕立て、“帰朝みやげ”として上演したのが『吾が巴里よ<モン・パリ> 』でした。
宝塚歌劇の初期の作品は、お伽歌劇と題される作品、歌舞伎の演目等から題材を得た短い歌劇、和洋の舞踊などを組み合わせた3本立て、5本立てが多く、それらのほとんどは場面数の少ない演目でした。その中で、岸田が作り上げたのは、幕無し16場のスピーディーな場面転換、上演時間1時間半、登場人物延べ200人以上、大階段(16段)、ラインダンスや羽根扇をとり入れた、それまで誰も観たことのない斬新な舞台でした。観客は枠にとらわれない自由な演出に圧倒され、『吾が巴里よ<モン・パリ> 』はたちまち大好評を博しました。
さらに、『吾が巴里よ<モン・パリ> 』初演の翌年には、岸田の手により続編『イタリヤーナ』 を上演。その後も“岸田レビュー”を継承した白井鐵造が『パリゼット』をはじめ、『ローズ・パリ』『花詩集』など、新たな試みをとり入れた傑作レビューを次々と世に送り出し、宝塚歌劇を象徴する数々の主題歌も生みだされました。
まさに“レビュー時代”の幕開けとなった『吾が巴里よ<モン・パリ> 』で披露された数々の手法は、後のタカラヅカ・レビューの基本スタイルとなり、今もなお宝塚歌劇の舞台に受け継がれています。
『吾が巴里よ<モン・パリ> 』の歴史
▼印をクリックしてご覧ください。
▼ 1920~1940年代
1927年(昭和2年)
■9月 |
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【豆知識】
1927年(昭和2年)9月の花組公演 レヴユウ『吾が巴里よ<モン・パリ>』にて、宝塚大劇場の舞台で初めて16段の大階段が使用されるが、現在は26段となっている。
【花組】
レヴユウ
『吾が巴里よ<モン・パリ>』Mon Paris
岸田辰彌 作・振付
白井鐵造 振付補
1927年9月1日~9月30日
岸田辰彌の洋行土産作品で、日本初のレビューとして大好評を得た作品。お土産話「モン巴里」と題し、上海を振り出しに、印度、エジプトを経て、花の都巴里に至るまでを、串田福太郎(奈良美也子)が1年6か月の旅を振り返る形で描いた。
■10月 |
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【雪組】
レヴユウ
『吾が巴里よ<モン・パリ>』岸田辰彌 作・振付
白井鐵造 振付補
1927年10月1日~10月31日
串田福太郎役は雪野富士子。
1928年(昭和3年)
■6月 |
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【月組】
レヴユウ
『モン・パリ』岸田辰彌 作・振付
白井鐵造 振付補
1928年6月1日~6月30日
串田福太郎役は門田芦子。
■7月 |
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【雪組】
レヴユウ
『モン・パリ』岸田辰彌 作・振付
白井鐵造 振付補
1928年7月1日~7月31日
【豆知識】
1931年(昭和6年)9月に白井鐵造の作・振付による花組公演 巴里土産 レヴユウ『ローズ・パリ』(薔薇の巴里)で、オーケストラ・ボックスと客席の間に設けたエプロン・ステージを試用。現在の「銀橋」の始まりとされる。
1947年(昭和22年)
■9月 |
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【花組】
レビュー20周年記念故岸田辰彌追悼グランド・レビュー
『モン・パリ』岸田辰彌 作
白井鐵造 演出
1947年9月2日~9月29日
20年前に初演された『モン・パリ』を、戦時中の1944年に亡くなった作者・岸田辰彌の追悼記念として再演。往時を偲ぶ豪華な舞台が、懐かしい主題歌を交えて繰り広げられた。主人公の串田福太郎(越路吹雪)が、仲間たちと共に過去を振り返る形でレビューが進行された。
■10月 |
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【月組】
グランド・レビュー
『モン・パリ』岸田辰彌 作
白井鐵造 演出
1947年10月1日~10月30日
▼ 1950~1970年代
1957年(昭和32年)
■8月 |
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【豆知識】
1957年(昭和32年)8月の雪組公演 レビュー30周年記念『モン・パリ』では50段の大階段が使用される。翌年の1958年(昭和33年)には、舞台奥にある大道具を引き出して組み立てる設置方式から、舞台天井に吊り下げた大階段を電動で降下させる方式に変わる。
【雪組】
レビュー30周年記念
『モン・パリ』白井鐵造 構成・演出
1957年8月1日~8月30日
日本最初のレビュー『モン・パリ』が上演されて30年。この記念公演は、題名は同じであるが内容は旧作と異なり、この30年間に上演された数々の名作レビューから、「パリゼット」「すみれの花咲くころ」「サセ・パリ」など、特に思い出深い主題歌を30曲集めて作られた。
【豆知識】
1963年(昭和38年)の花組・星組合同公演 グランド・ミュージカル『タカラジェンヌに栄光あれ』で、91人がラインダンスを披露(前年11月に東京で初演)。
【豆知識】
1973年(昭和48年)には、舞台天井に吊り下げられている大階段を軽合金製に造り変え、軽量化を図る。
1977年(昭和52年)
■7月 |
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【雪組】
白井鐵造監修
モン・パリ誕生50年
グランド・カーニバル
内海重典 製作
横澤英雄 構成・演出
岡田敬二 構成・演出
草野旦 構成・演出
1977年7月1日~8月9日
『モン・パリ』初演から50周年に当たる1977年、宝塚歌劇団が総力を挙げてお届けした大レビュー。日本にレビュー時代を築いた白井鐵造が監修、数々の名作を発表してきた内海重典が製作に当たり、三人の作者が腕を競った三部構成の豪華作品。第一部「アイ・ラブ・レビュー」を岡田敬二、第二部「ビバ!タカラヅカ」を横澤英雄、第三部「ファンタジー」—夢人—を草野旦が担当した。当時としては最大規模の80人でのラインダンスが話題に。
■8月 |
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【花組】
白井鐵造監修
モン・パリ誕生50年
グランド・カーニバル
内海重典 製作
横澤英雄 構成・演出
岡田敬二 構成・演出
草野旦 構成・演出
1977年8月11日~9月27日
▼ 1980~2000年代
【豆知識】
1982年(昭和57年)1月の星組公演 グランド・レビュー『魅惑』では1982年にちなみ82人のラインダンス、1986年(昭和61年)3月の星組公演 宝塚グランド・ロマン『レビュー交響楽』では126人がラインダンスを披露。
1987年(昭和62年)
■8月 |
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【花組】
モン・パリ誕生60年
『ザ・レビュースコープ』横澤英雄 作・演出
1987年8月7日~9月23日
日本最初の本格的レビュー『モン・パリ』誕生60周年を記念する豪華大作。『モン・パリ』誕生のセレモニーをショーアップしたAブロック、レビューの三つの味わいの変化を楽しむBブロック、続いてシャンソンで綴るドラマティックレビューのCブロック、日舞バレエによるレビュー讃歌のDブロック、そしてフィナーレのEブロックと五つのブロックで構成された。
■9月 |
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【雪組】
モン・パリ誕生60年
『ザ・レビュースコープ』横澤英雄 作・演出
1987年9月25日~11月10日
【豆知識】
1988年(昭和63年)から、1927年9月1日に日本初のレビュー『吾が巴里よ<モン・パリ> 』が初演されたことを記念し、毎年9月1日を「レビュー記念日」とした。以降、2007年まで、タカラヅカ・レビューの誕生を讃えるイベントや公演がこの日に合わせて行われた。
1997年(平成9年)
■8月 |
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【花組】
宝塚グランドロマン
『ザッツ・レビュー』植田紳爾 作・演出
石田昌也 演出
1997年8月8日~9月15日
1997年、宝塚では『モン・パリ』誕生70周年を迎え、東京では1934年に開場した東京宝塚劇場が12月に閉鎖になり生まれ変わった。そんな宝塚レビューの原点を記念する意味から贈られた、レビューへのオマージュ(讃歌)。レビューに憧れ、青春を懸けた男たちの壮大なドラマと絢爛たるレビューシーンで綴った、豪華な一本立て大作。レビュー作りに憧れ田舎から出てきた青年・春風泰平を真矢みきが、彼に惹かれるレビューの踊り子・仙を千ほさちが演じた。
1999年(平成11年)
■6月 |
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【宙組】
グランド・レビュー
『ザ・レビュー'99』岡田敬二 構成・演出
宝塚大劇場 1999年6月25日~8月9日
1000days劇場 1999年10月2日~11月14日
『ザ・レビュー』は1977年に『モン・パリ』50周年を記念して上演され、その年の芸術祭優秀賞に輝いた作品。22年ぶりに再演された今公演では、初演の『ザ・レビュー』より、ロケットの場面と“夢人”の場面を再現したほか、プロローグなどで初演時の主題歌を使い、タカラヅカ・レビュー本来の「豪華・華麗・美しさ」をベースに、初演の持つエスプリを大切にした超大型グランド・レビューに仕立てた。
■8月 |
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【花組】
住友VISAシアター
グランド・レビュー
岡田敬二 構成・演出
宝塚大劇場 1999年8月13日~9月27日
1000days劇場 1999年11月19日~12月26日
2005年(平成17年)
■1月 |
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【宙組】
グラン・ファンタジー
『レヴュー伝説』—モン・パリ誕生77周年を記念して—
草野旦 作・演出
宝塚大劇場 2005年1月1日~1月31日
東京宝塚劇場 2005年2月18日~4月3日
1927年9月1日、岸田辰彌作による日本のレビュー『モン・パリ』が初日の幕を開けた。その『モン・パリ』誕生77周年にあたる2005年、ノスタルジックでレトロなパリ・レビューを、今の時代に再構築しようとして作られた作品。『モン・パリ』の主人公串田が案内役を務める形式で展開された。
【豆知識】
2014年(平成26年)3月の月組公演 グランド・レビュー『TAKARAZUKA 花詩集100!!』では宝塚歌劇100周年にちなんだ100人のラインダンス、2016年(平成28年)3月の星組公演 ショー・スペクタキュラー『THE ENTERTAINER!』でも100人を超える黒燕尾・黒燕尾ダルマでのラインダンスを披露。
(いずれも宝塚大劇場公演)