演出家 中村一徳が語る

ショー・スプレンディッド『Sensational!』の見どころ

これまで数々の雪組トップスターのショーを手掛け、組の成長を見守ってきた演出家・中村一徳。2月半ば、初日に向けて稽古に励む彩風咲奈率いる今の雪組に感じる魅力や、新作ショーで引き出したい可能性について、話を聞いた。   

大劇場を“センセーショナル”な風が吹き抜ける!

タイトルの『Sensational!』に込めた想いをお聞かせください。

“Sensational”には“素晴らしい”という意味があります。作品のテーマである「命」「愛」「希望」の素晴らしさを、心が弾むような舞台の中で表現したい、との想いを込めました。ますます高みを目指す雪組の、躍動感溢れるショーで、お客様の心を掴んでいきたいと思います。お客様と出演者が一体となる作品になれば嬉しいですね。   

出演者一人ひとりの感性が、作品テーマの表現に活かされそうですね。

コロナ禍の今だからこそ、人との繋がりや、そのありがたさを感じることが多くなりました。「命」「愛」「希望」を表現するうえで、それぞれが普段どういう心掛けでいるのか、そこが一番重要なポイントではないでしょうか。今まで築いてきた心の豊かさを大切にしながら、周りへの感謝の気持ちを持って取り組んだものが、舞台に現れると思います。   

どのような幕開きになりますか?

少しジャズの要素を取り入れた、勢いのあるプロローグです。スタイリッシュに格好良く始めたいと思い、衣装はデザイン、色合いともにシックで落ち着きのあるものを考えています。まずは雪組生たちの迸るエネルギーを感じてください。   

彩風咲奈を中心とした雪組だからこそ魅せられるショーを

トップスター・彩風咲奈の場面について教えてください。

プロローグとはまた趣の違う、男役を中心としたラテンのテイストが入った賑やかなジャズのシーンを用意しています。この場面では、粋なジャケット姿で踊ってもらう予定です。また、オリエンタルで妖しい雰囲気のシーンでは、高貴さを漂わせた魅力を出してくれるでしょう。そして、幻想的な北欧のオーロラの中、彩風の神秘的な姿もご堪能いただきます。ここでは、甘いメロディーですが少しテンポのある歌で表現してもらいます。
彩風は、どんなテーマ性を持たせた役も、自分の色に染めていける実力のあるスターですね。楽曲の世界観に彼女自身の個性がプラスされて、音楽に新しい命が吹き込まれていくのがとても伝わってきます。   

トップ娘役・朝月希和も表現力が豊かなスターです。

朝月の個性を存分に発揮してもらいたいと思い、フィナーレに男役たちとともに踊る場面をつくりました。トップ娘役として、男役の対比となる魅力をバランス良く表現してもらいたいですね。
朝月もダンス、歌ともに、すでに秀でたものを持っていますが、こちらから提示したことに対して、さらに膨らませてくれるだろうと信じています。   

トップコンビがつくり出す雰囲気も楽しみです。

二人ともダンス力がありますから、ダンサー同士、一対一となって踊り合う感じでつくっています。フィナーレのデュエットダンスの曲は、少し大人っぽく、緩やかなテンポです。その分、自分たちの間で表現する部分が大きいと思いますが、上手く息を合わせてつくり上げるダンスを期待しています。   

朝美絢にはどのような見せ場がありますか?

朝美には、軍服姿で男女の恋を描いたストーリー性のある場面を担当してもらいます。タンゴの要素を取り入れた曲をバックに、明るさの中にもしっとりとした大人のムードを感じさせる場面になります。甘い表情や雰囲気が持ち味の彼女ですが、踊る姿はシャープな印象がありますね。彩風とはまた異なる朝美の個性を引き出せれば、より面白い作品になると思います。   

新たに雪組に加わった和希そらをはじめ、綾凰華、縣千ら若手スターの存在も頼もしいですね。

和希には、シーンの雰囲気をガラリと変える役割と、オーロラの場面では、締め括りの彩風とのダンスを務めてもらいます。彩風を中心とする雪組に、彼女が新しい風を吹き込んでくれたことにより、一人ひとりが今まで培ってきたものが合わさり、より多くの色が出せる組になるのではないでしょうか。
綾は、退団を控えての淋しさもありますが、彼女らしい明るさで、前向きに仲間を引っ張ってくれています。中詰めのオリエンタル風のソロ曲は、宝塚人生への想いを込めて歌ってくれることでしょう。それがファンの皆さまに伝われば嬉しいです。
縣には、ジャズの場面の導入を任せています。大変な努力家で、細かいところまで真摯に取り組む人ですね。宝塚バウホールでの初主演も経て、着実に階段を昇っている彼女の、さらなるレベルアップを期待しています。   

雪組出演者全員に活躍の場がありそうですね。

そうですね。出演者のみんなには、与えられた振り付けや音楽、歌詞をそのままなぞるのではなく、例えば初めて曲を聴いた時にどう感じたのかなど、最初に生まれた感性を大切にしてほしいと思います。それは、音楽を聴いてきた経験、いろいろな振り付けで踊ってきた経験といった、自分自身が蓄えてきたものに基づくからです。曲や振り付けでどのような世界を想像できるのか、という感覚を養うことによって、自然と男役として、娘役としての見せ方の幅も広がると思います。受け身ではなく、自ら感じたことを積極的にどんどん出してくれることを望みます。   

最後に、お客様へメッセージをお願いします。

雪組を何度も担当してきましたが、雪組のカラーや歴史の上に、その時々のトップスターがそれぞれの個性を重ね、伝説をつくってきた素晴らしい組だと感じています。今、彩風咲奈のもとで、これまでとはまた違う、新たな雪組の世界観が築かれているのを、皆さまにさらにお伝えしたいと思っております。雪組が持つ実力の高さや底力を、より前面に押し出し、ダイナミックなショーをお届けするべく、雪組のみんなと励んでおりますので、ぜひ劇場でお楽しみください。   

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【プロフィール】

中村 一徳

大阪府出身。1988年宝塚歌劇団に入団。1994年、17世紀半ばの李氏朝鮮を舞台にした『サラン・愛』-ムグンファの花に包まれて-(花組)で演出家デビュー。『大上海』-グラン・シャンハイ-(1995年雪組)、『香港夜想曲(ノクターン)』(1996年花組)と、アジアを舞台にした作品を発表。宝塚歌劇の伝統と現代的なシャープさが光るレビュー『プレスティージュ』(1996年月組)で宝塚大劇場デビュー。1999年には往年の名作レビューをリメイクした『華麗なる千拍子’99』-高木史朗作品より-(雪組)を担当。同名の名作映画をミュージカル化した『雨に唄えば』-SINGIN' IN THE RAIN-(2003年星組、2008年宙組、2018年月組)、小説「オペラ座の怪人」をもとにした『ファントム』(2004年宙組、2006年花組、2011年花組、2018年雪組)を手掛けた。レビュー作品では『Shining Rhythm!』(2012年雪組)、『Fantastic Energy!』(2013年月組)、『My Dream TAKARAZUKA』(2014年雪組)、『Melodia -熱く美しき旋律-』(2015年花組)、『Dramatic“S”!』(2017年雪組)、『Music Revolution!』(2019年雪組)、『Ray -星の光線-』(2020年星組)といった華麗なレビュー作品を多く担当。2021年には、花組誕生100周年を記念したレビュー『The Fascination(ザ ファシネイション)!』-花組誕生100周年 そして未来へ-を演出。ほかにも、ディナーショー、タカラヅカスペシャル、宝塚巴里祭なども担当。『Music Revolution! -New Spirit-』(2020年雪組)では、大劇場作品を彩風咲奈が主演するショーとしてリニューアルするなど、スターの持ち味を巧みに引き出す手腕にも定評がある。

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