制作発表会レポート
7月19日(火)、宝塚バウホールにて宝塚歌劇雪組公演 ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』、ショーグルーヴ『Greatest HITS!』の制作発表会が行われました。
宝塚歌劇団 理事長・小川友次、演出家の正塚晴彦、稲葉太地、雪組トップスター・早霧せいな、雪組トップ娘役・咲妃みゆ、望海風斗が出席。パフォーマンスではダンスや歌を披露し、作品の世界観をひと足早く伝えました。この制作発表会の模様をお届けします。
大人の恋物語&名曲で綴るショーのオリジナル二本立て
早霧せいなを中心とする雪組の大劇場公演4作目は、雪組の魅力を存分に引き出す新作のオリジナル二本立てです。ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』は、20世紀半ばのロサンゼルスが舞台。ある事件を調査する探偵事務所の所長ケイレブ・ハントを主人公に、仲間との友情や彼を支える恋人イヴォンヌとの大人の恋の行方を繊細に描き出します。
一方で、ショーグルーヴ『Greatest HITS!』は、世界中で愛される名曲で構成した躍動感溢れるショー。クールでありながらもホットそしてセクシーな魅力を持つ早霧せいなを中心に、グレイテストな雪組出演者が煌めくハーモニーと情熱的なダンスでステージを盛り上げます。
粋でホットなダンスや歌、芝居仕立てのデュエットを披露
制作発表会ではまず、ショーグルーヴ『Greatest HITS!』からパフォーマンスを披露しました。
舞台上に早霧せいなが登場、ジャジーな雰囲気のなかクールな歌とキレのあるダンスで一気に惹きつけ、華やかな存在感を放ちます。そこに、咲妃みゆ、望海風斗も加わりビートの効いた曲にのせて3人の息が合ったダンスにより、洒落たムードが舞台上に広がりました。続いて、望海風斗が主題歌「Greatest HITS!」を本番の公演さながら張りのある美声で歌い上げます。アップテンポなナンバーからはショーの楽しさが伝わってきました。
次はミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』のナンバー、「シティ・ラプソディー」を雪組トップコンビが披露。星空が煌めく舞台上に、黒いスーツ姿のケイレブ・ハント役の早霧せいなが現れ、しっとりと恋人への想いを歌い始めます。朱色のワンピース姿が印象的なケイレブの恋人、イヴォンヌ役の咲妃みゆも加わり、大人の恋のデュエットへ。一つひとつの動きが、まるで映画のワンシーンを観ているかのような芝居仕立てのナンバーから、ケイレブとイヴォンヌの関係性が浮き上がり、ドラマティックなひと場面となりました。
パフォーマンス終了後には、演出家の正塚晴彦、稲葉太地、雪組出演者らが登壇。それぞれより挨拶させていただきました。
探偵物でありながら、人間ドラマを色濃く描きたい
正塚 晴彦(『私立探偵ケイレブ・ハント』担当)
「今回の作品は、私自身久しぶりの宝塚大劇場・東京宝塚劇場での新作となりますので、モチベーションはマックスでワクワクしている状態です。今の雪組は、魅力的なトップコンビに加え、娘役はもとより男役の人材が豊富だと感じておりますので、この充実した雪組で一番魅力的な舞台になるように作品を創りたいと考えております。探偵物としての物語もありながら、人間ドラマとしての脚本を描きたいと思っており、その上で、鮮やかな事件解決に至ればいいなと自分なりにも楽しみにしています。」
世界をつなぐ「歌」で心が通い合う楽しいショーに
稲葉 太地(『Greatest HITS!』担当)
「私の宝塚大劇場デビュー作は雪組公演で、思い入れがありながらもなかなか縁がなく、こうして6年ぶりに早霧中心の雪組と再び出会うことができて、とても嬉しく思います。世界をつないでいくものがあるとしたら、それは「歌」ではないでしょうか。世界中で歌われている歌、世界中の人たちが口ずさめる歌、そんな歌を集めて、雪組とお客様が心を通わせることのできる、楽しいショーを目指したいです。本作が2016年最後の洋物ショーになりますので、楽しくパワーある今の雪組と作品を創りたいと思っております。」
オリジナル作品で雪組が一つになり力を発揮する
雪組トップスター 早霧 せいな
「前回の『るろうに剣心』、そして間もなく梅田芸術劇場で初日を迎える『ローマの休日』、先日千秋楽を迎えた望海主演の『ドン・ジュアン』と、ここ最近雪組は原作物が続いておりますので、次回の公演では、正塚先生と稲葉先生が今の雪組らしさを存分にお見せできるオリジナル二本立ての作品を創ってくださいました。雪組が一つになって創り上げるこの作品を、一人ひとりの力を余すことなく発揮して、お客様に楽しんでいただける、そして私たち自身も一緒に楽しめる公演にしたいと思っております。」
雪組の一員として楽しい作品をお客様にお届けしたい
雪組トップ娘役 咲妃 みゆ
「久しぶりのお芝居とショー、二本立ての作品に挑戦させていただけるので、今からとても意気込んでおります。新しい作品を生み出してくださった正塚先生、稲葉先生の温かいご指導のもと、早霧せいなさん率いる雪組の一員として、楽しい作品をお客様にお届けできますよう、一生懸命頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。」
念願だった早霧さんの仲間の役で今からとても楽しみ
雪組 望海 風斗
「お芝居では、正塚先生と10年ぶりにご一緒させていただけて、何よりも念願の早霧せいなさんの仲間の役ということで、今からとても楽しみにしております。ショーでは、皆様に馴染みのある曲がたくさん盛り込まれているということですので、お客様との距離感が縮まるのではないかと期待しております。両作品ともに早霧さんにしっかりと付いていき、今の雪組を存分にお客様に楽しんでいただきたいです。」
- 制作発表会 ムービー
制作発表会に出席した雪組の早霧せいな、咲妃みゆ、望海風斗の3名もそれぞれ報道陣からの質問に答え、意気込みを語りました。
雪組トップスター 早霧 せいな
作品の大きなテーマ、想いがお客様に伝わるのが一番
「正塚先生の作品は、会話の中から人物のキャラクターが浮き彫りになる面白さがあると感じています。今回、私と望海は仲間の役になりますので、私たちだからこそ表現できる友情をお見せしたいです。また、これまで咲妃とはあまりハッピーエンドの作品がなかった、と今(報道陣から)お聞きしましたが、私自身は特に結末にはこだわっておりません(笑)。作品の中での大きなテーマや私たちが提示した想いがお客様に伝わることが一番だと思いますので、温かいものをお届けできればいいなと思っております。ショーのある場面で演じる“サンタクロース”は、童心を思い出して、きちんと夢をお届けできるサンタクロースになりたいです。」
●パフォーマンスを披露した感想
「お稽古では(出演中の『ローマの休日』の舞台である)ローマから(今作の舞台となる)アメリカへ無事に行けるのだろうかと自問自答しておりましたが杞憂でした。創ってくださった楽曲が自分の中で、とてもしっくりとなじみ、演じる上で私を助けてくれました。他の雪組メンバーよりもひと足早くに、この2作品の世界にふれることができましたし、このパフォーマンスがお客様へワクワクやドキドキをお届けし、それが劇場まで足を運んでいただくきっかけになれば嬉しいです。」
雪組トップ娘役 咲妃 みゆ
コンビとしてご一緒してきたからこその空気感を出したい
「今回のお芝居で初めて、早霧さんと最初から恋人同士の役です。1年半以上コンビとして、早霧さんとご一緒させていただいているからこその空気感をきちんと出して、お客様に充実した舞台をお届けできればと思っております。」
●パフォーマンスを披露した感想
「お客様にこの作品の魅力をお届けできるよう、一生懸命に今日のパフォーマンスのお稽古に取り組んでまいりました。緊張はしましたが、冒頭に早霧さんが煌びやかに登場されるのを舞台袖から拝見していて、本当にワクワクしました。そこに加わって踊らせていただくのがとても楽しかったです。」
雪組 望海 風斗
早く早霧さんと、雪組のみんなと一緒に作品を創りたい
「私が演じるジム・クリードは早霧さん演じるケイレブ・ハントの探偵仲間です。『ルパン三世—王妃の首飾りを追え!—』から早霧さんと何作かお芝居をさせていただいているので、「仲間」として自然な空気感が出せるのではないかと思っております。また、ショーではお客様との距離感がグッと縮まるであろうところが楽しみで、醍醐味だと思います。」
●パフォーマンスを披露した感想
「私はショー部分のみの出演でしたが、パフォーマンスをすることで、自分の気持ちも身体も一歩先に進めたような気がします。早霧さんと雪組のみんなと一緒に、早く作品を創りたいという気持ちになりました。」
これまでのお芝居で敵対する役柄を演じることが多かった早霧せいなと望海風斗は、初の仲間役ということで制作発表会でも喜びの表情を見せていました。また雪組トップコンビが都会的な大人の恋愛に挑戦する今作、パフォーマンスからしっくり馴染んだ恋人同士という雰囲気を醸し出し、これまでの作品とは違う魅力を印象付けました。
芝居巧者の揃う雪組が見せる、心の機微を繊細に描いた正塚作品。さらに素晴らしい楽曲で彩られた趣向を凝らした稲葉の新作ショー。いずれも今の雪組をさらに輝かせることでしょう。どうぞお楽しみに!
ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』の作・演出を担当するのは、これまで数多くのオリジナル作品を手掛けてきたベテランの正塚晴彦。『銀の狼』(1991年月組初演)など陰のある男が主役の硬派な作品から、『メランコリック・ジゴロ』(1993年花組初演)など複雑な人間模様を温かくコミカルに描いたものまで、幅広い作風で男役のダンディズム、人間の多面性を表現してきました。今の雪組メンバーのために書き下ろした新作はそれぞれの個性がキラリと光る、味わい深い作品となることでしょう。
ショーグルーヴ『Greatest HITS!』の作・演出を担当するのは、新進気鋭の稲葉太地。ヴェネツィアの謝肉祭をテーマにしたショー・グランデ『Carnevale(カルネヴァーレ) 睡夢(すいむ)』-水面に浮かぶ風景-(2010年雪組)で大劇場デビューを飾って以来、独創的なショー作品で観客の心をとらえてきました。2015年に手掛けた『宝塚幻想曲(タカラヅカファンタジア)』(花組)は、同年開催の台湾公演でも好評を博すなど、勢いのある稲葉が生み出す新作のショーに期待が高まります。
それぞれが制作発表会で作品の構想や意気込みなどを語りました。
正塚 晴彦(『私立探偵ケイレブ・ハント』担当)
思わず笑ってしまう場面も。シリアス一辺倒ではない探偵物
「早霧と望海、彩風の役は以前からの知り合いで、共同で探偵事務所をやっているという設定です。それぞれが抱える案件を分けあい助け合う中での友情も含めて、シリアス一辺倒ではない探偵物にしたいと考えています。深刻な場面もありますが、思わず笑ってしまう要素も取り入れたいですね。単に探偵物としてのストーリーを追うだけではなく、各人のプライベートな部分をより色濃く描きたいと思っております。役者は稽古をして計算をしながら演技をするわけですが、早霧はそれらを一切捨てて舞台で生きているかのように演じる感覚が強い人だと思います。最も説得力のある舞台を創れるわけですから、そこが彼女の最大の魅力だと思います。お客様はハッピーエンドを期待されているというお声も聞きますが、ご期待にそぐわないものにはならないだろう、とだけ申し上げておきましょう。」
稲葉 太地(『Greatest HITS!』担当)
早霧サンタも登場! 雪組の魅力を最大限に味わってほしい
「早霧はどこまでも走って行きそうな“元気玉のようなエネルギッシュさ”が魅力だと思います。その印象は下級生の頃から全く変わらず、むしろエネルギーの出し方に深みを増してパワーアップしていました(笑)。そんな彼女のエネルギッシュさは今の雪組全体にも波及していて、そんな雪組のパワーと早霧の多面的な魅力を最大限に味わっていただける作品にしたいと思っています。宝塚大劇場公演では少し気が早いですが、東京宝塚劇場公演の頃には街もクリスマスムード一色です。あわてん坊過ぎて早く街に出て行った早霧サンタも登場する予定です。咲妃には彼女の魅力を生かし、芝居的な要素のある場面を担ってもらうつもりです。また、望海は圧倒的な歌唱力が持ち味ですので、リアルな感情を歌で表現してもらいたいと考えています。その他にも雪組の出演者には魅力的な人がたくさんいますので、稽古をしながらやりたいことがさらに増えてくると思いますし、私自身も楽しみにしています。」