制作発表会レポート
4月15日(金)、東京にて宝塚歌劇宙組公演 三井住友VISAカード ミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』の制作発表会が行われました。
宝塚歌劇団 理事長・小川友次、三井住友カード株式会社 代表取締役社長・久保健様、宝塚歌劇団 演出家の小池修一郎と小柳奈穂子、宙組トップスター・朝夏まなと、宙組トップ娘役・実咲凜音が出席し、多くの報道陣が集まりました。
宙組トップコンビが本作の楽曲を披露し、幻想的な世界へと引き込んだ制作発表会の模様を詳しくお届けします。
日本初演より20周年、宝塚歌劇団が誇る名作ミュージカル
『エリザベート』は1992年にオーストリアのウィーンで誕生した音楽性の高いミュージカル。全編素晴らしい楽曲で綴られ、ハンガリー、スウェーデン、オランダ、ドイツなどでも上演された人気作です。これを1996年に宝塚歌劇団が小池修一郎の潤色・演出で日本初演。独特の世界観で、一気に観客を虜にした伝説の公演となりました。稀有な美貌の持ち主であると同時に、自由奔放な生き方を求めた少女エリザベートが、オーストリア皇后となったことから辿る数奇な運命。宝塚歌劇では、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)という存在を主役に据えて、ロマンティシズム溢れる世界を構築しました。
1996年の初演後、再演を重ね、上演回数899回、観客動員数216万人を達成。まさに宝塚歌劇を代表するミュージカルが、今年、宝塚歌劇初演から20周年を迎えました。
この節目にトート役に挑むのは宙組トップスター・朝夏まなと。エリザベート役を宙組トップ娘役・実咲凜音、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ役を真風涼帆、エリザベートを暗殺する無政府主義者のルキーニ役を愛月ひかるが演じます。またオーストリア皇太子ルドルフ役を澄輝さやと、蒼羽りく、桜木みなとが役替わりで演じます。
情熱を覗かせた麗しき朝夏トート&気品に満ちた実咲エリザベート
制作発表会は、『エリザベート』の楽曲披露からスタートしました。
「愛と死の輪舞(ロンド)」の音楽が流れ、トートに扮した朝夏まなとが振り返ると、まずその目力に圧倒されます。黄泉の世界へ一瞬でいざなうような強い瞳、ストレートの髪が印象的な麗しきトートの降臨です。長いネイルを付けた美しい指先の動きひとつからも、朝夏まなとがつくり上げるトートの世界が広がります。“死”という存在が、エリザベートを愛する胸の内を情感豊かに歌い上げ、カリスマ的な魅力を漂わせました。
次に白いドレスに身を包んだエリザベート役の実咲凜音が登場。朝夏まなとと「私が踊る時」をデュエットしました。
エリザベートの愛を手にする自信をみなぎらせ力強く歌う朝夏トートに相対する実咲エリザベートは、気品に満ちた佇まいと凛とした歌声で強い意思を表現。それぞれの決意がぶつかり合う、緊迫感あふれる名ナンバーを、たっぷりと聴かせました。
パフォーマンス終了後には、出席者が登壇しそれぞれ挨拶を行いました。
様々なものを削ぎ落とし核心を突いた朝夏トートが新鮮
小池修一郎(潤色・演出)
「20年前の『エリザベート』初演の制作発表を思い出し、月日の重みを感じております。今日、朝夏まなとの「愛と死の輪舞(ロンド)」、そして実咲凜音との「私が踊る時」を聞き、様々なものを削ぎ落としたことによって核心を突いた朝夏のトートは想像以上に面白く、とても新鮮なトート像だと感じました。これから仕上がっていくのがとても楽しみです。実咲凜音が演ずるエリザベート役は満を持してではありますが、キャリアがあっても相当な緊張感を強いられる役だと思います。実咲なりのエリザベート像を見つけて、朝夏のトートに対抗できるエリザベートをつくりあげて欲しいです。そして、今回から小柳奈穂子が共同演出として私を支えてくれます。1998年の宙組公演以来、2002年の花組公演を除いて、助手として公演を支えてくれた彼女が存分に腕を振るってくれると思います。」
チームワークの良い宙組ならではのビビッドな舞台に期待
小柳奈穂子(演出)
「1996年の初演時は、私はまだ宝塚歌劇団に入団前で『エリザベート』はぜひ観たほうがいいと言われながらも、話題の作品だったのでチケットを入手できませんでした。その人気作品に共同演出としてここに座らせていただいていることに、隔世の感があります。朝夏を中心とした宙組はチームワークの良い組ですので、コーラスも含めてとてもビビッドな『エリザベート』が生まれるのではないかと期待しています。」
大変思い入れのある作品。自分なりに突き詰めていきたい
宙組トップスター 朝夏まなと
「日本初演から20周年という記念すべき年に、『エリザベート』を上演させていただく責任と喜びをひしひしと感じております。『エリザベート』は、私自身大変思い入れのある作品で、春野寿美礼さん主演の花組公演に入団1年目で出演し、初台詞をいただきました。その一言がうまく言えず、小池先生ご指導のもと特訓していただいた覚えがあります。そんな思い出深い作品で、主人公のトート役に挑戦させていただくことも、とてもプレッシャーはありますが、小池先生がおっしゃっていたような、核心を突いた削ぎ落とされたトート像を、自分なりに突き詰めていきたいと思っております。宙組はとても団結力があって、それぞれの向上心がとても強いので、この大作に体当たりで挑み、皆様に楽しんでいただける宙組の『エリザベート』をしっかりとつくりあげていきたいと思います。」
20周年に出演できるのは奇跡。魂を込めて取り組みたい
宙組トップ娘役 実咲凜音
「宝塚歌劇での『エリザベート』20周年という記念すべき年に、この作品に携わらせていただけることを奇跡のように思っております。とても嬉しい反面、今プレッシャーも感じています。目の前の壁はとても高いのですが、演出の小池先生をはじめ、小柳先生、そして朝夏さん率いる宙組の皆でつくりあげる新たな『エリザベート』をお届けできるように、魂を込めて取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
- 制作発表会 ムービー
役柄に扮し、楽曲をドラマティックに披露した宙組トップコンビが、報道陣からの質問に答え、『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』への想いを語りました。
朝夏まなと【トート】
「今まで私はどちらかというと明るい役が多く、普段も“宙組の太陽のような存在になりたい”と公言しているので、その真逆とも言えるトート役を務めることは、私にとっても大きな挑戦です。皆様が抱かれる私のイメージをガラリと覆せるようなトートを演じたいと思います。」
初めて『エリザベート』を観たときの感想
「入団1年目の2002年に、花組公演『エリザベート』への出演が決まり、その時に初めて映像で拝見しました。私はあまりタカラヅカファン歴が長くなく、入団してから色々なものを観るようになったのですが、『エリザベート』はそれまで観た作品とは雰囲気が違い、全編が歌で綴られるスタイリッシュな世界が衝撃的でした。」
好きなナンバーについて
「たくさんありますが、もっと歌い込んでいきたいと思うのは、今日披露させていただいた「愛と死の輪舞(ロンド)」です。これは宝塚歌劇の舞台のためにつくられたオリジナル曲で、トートが一番初めにエリザベートに対する想いを歌うナンバーなので、大切にしていきたいなと思います。」
実咲 凜音【エリザベート】
「今日朝夏さんとご一緒に歌わせていただき、その空気感を肌で感じることができました。朝夏さんが演ずるトートに対するエリザベート像というものを追求していきたいです。エリザベートに関する資料を参考にしながら、彼女の人生の喜怒哀楽をリアルに感じ取れるように、想像を膨らませている段階です。心を込め、すべてを注ぎ込んで演じたいと思います。」
初めて『エリザベート』を観たときの感想
「初めて舞台で拝見したのが、瀬奈じゅんさんがトートを演じられていた2009年の月組公演です。その後、映像ですべての『エリザベート』を拝見しました。印象に残っている場面はやはり1幕最後の“鏡の間”のシーンです。エリザベートが白いドレスを着て振り返った瞬間の気迫に圧倒されました。」
好きなナンバーについて
「素晴らしい曲ばかりですが、特に「私が踊る時」は今日歌わせていただいて、改めて素晴らしい曲だと感じました。」
舞台を経るごとに大きな存在感で輝きを増す朝夏まなと、数々のヒロインを演じ澄んだ歌声にも定評がある実咲凜音。充実のトップコンビを筆頭に、団結力のある宙組が挑む大作ミュージカルは、20周年にふさわしい『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド-)』となるでしょう。ぜひご期待ください!
潤色・演出を担当するのは小池修一郎。宝塚歌劇にとどまらず、いまや日本のミュージカル界を代表する演出家として活躍しています。なかでも『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』は、“トート=死”を主人公に展開する革新的なミュージカルとして観客を驚かせました。1996年に上演された初演の絶賛を受けて、その後、何度も再演される宝塚歌劇の名作となりました。出演者によってアプローチも繊細に変わる作品だけに、どのような舵取りをするかご期待ください。
小柳奈穂子は2002年月組公演『SLAPSTICK』(宝塚バウホール・日本青年館大ホール)でデビューした新進気鋭の演出家。最近では原作漫画の魅力と宝塚歌劇らしさを絶妙にミックスした2015年『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』のヒットが記憶に新しいことでしょう。これまでも小池修一郎のもと『エリザベート』の演出助手などを務めてきた彼女が、独自の感性を反映させた演出で名作にあらたな光を与えます。
それぞれが制作発表会で意気込みなどを語りました。
攻撃的&シャープな印象の朝夏トートで進化を見せる
小池修一郎(潤色・演出)
「朝夏まなとは9代目のトートです。これまで8人、様々なトートへのアプローチがありました。1996年の星組公演でトートを演じた麻路さきさんは『この世で“死”に出会った人はいない。だからその造形は自由なはず』とおっしゃっていました。その言葉どおりに自分なりのトート像をつくり、それ以降トートという役はおおらかな気持ちで取り組める役柄になったように感じます。今日見た朝夏のトートは、想像以上でした。ヴィジュアルも、黒系の髪がシャープな印象で、今までのトートとはまた違う攻撃的な感じがします。これは“死”が本来持つ暴力性みたいなものを感じさせるトートになるのではないかと。有村淳先生の衣装も格好いいですし、進化した形でお届けできると思います。実咲凜音はトップ娘役としてのキャリアもあり、上手く演じてくれると思っていますが、さらに突き抜けた面白いエリザベート像を、自分なりに見つけてほしいと期待しています。皆様もどうぞ楽しみにしていてください。」
—共同演出の小柳奈穂子について
「大変文学性があり、彼女が1998年の宙組公演で初めて『エリザベート』に携わったときから、新鮮でなかなか面白い意見を持っていました。それからも『エリザベート』を上演するたびに、色々と方向性についてなど意見を聞いてきました。稽古は最初に過去のものを掘り起していくところから始まるのですが、彼女は誰よりも『エリザベート』に関して詳しいのではないでしょうか。今回彼女が頼もしく進めていくと思うので、私は私なりの観点でジャッジしていきたいと思います。」
出演者の個性や組の色で変わる“歌舞伎的”な演目
小柳 奈穂子(演出)
「助手として作品に携わるなかで、出演者の個性や、組の色で作品が変化し、だからこそキャラクターの個性が際立ってとても魅力的に見える作品だと感じました。いい意味で“歌舞伎的”な演目だと思います。再演のたび、変わっていないように見えて、実は変わっているというところがとても多く、18年間演出に関わる中で私自身この作品から色々なことを勉強させていただきました。かつて『エリザベート』を客席から観たときに感じた驚きを生かしながら、少しでも力になれるよう頑張っていきたいです。」