制作発表会レポート
2016年の幕開けを飾る宙組宝塚大劇場公演、シェイクスピア没後400年メモリアル ミュージカル『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』、ダイナミック・ショー『HOT EYES!!』の制作発表会が、11月12日(木)に宝塚バウホールで行われました。
宝塚歌劇団 理事長・小川友次、演出家の藤井大介、生田大和、宙組トップスター・朝夏まなと、宙組トップ娘役・実咲凜音、真風涼帆が登壇。宙組出演者は、芝居仕立てのパフォーマンスも披露しました。華やかに開催された制作発表会の模様をお届けします。
初披露の歌と芝居でシェイクスピアの世界が広がる
初めに宙組出演者3名が『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』の役柄に扮し、見応えあるパフォーマンスを行いました。
幕が開くと、ウィリアム・シェイクスピア役の朝夏まなとが、紙とペンを片手に創作にふけっています。シェイクスピアの情熱的な性格を表わすかのような赤い衣装を着こなした朝夏は、これまでのシェイクスピア像を覆す斬新なビジュアル。そこへ妻となるアン・ハサウェイ役の実咲凜音が登場し、彼の詩のインスピレーションとなる様子を芝居を交えて見せてゆきます。デュエットナンバー『言葉が生まれた日』は、“言葉”に魅せられた若きシェイクスピアの原点とも言える出会いの喜び、創作の喜びを表現した楽曲。トップコンビの情感豊かな歌声が、美しい旋律に溶けあいロマンチックな世界へといざないます。
次に真っ赤な照明をバックに現れたのが、シェイクスピアの才能を見出し、創作の場を与えた後援者、ジョージ・ケアリー役の真風涼帆。ヒゲをたくわえた精悍な容姿で、「芸術など勝つための手段に過ぎない!」という台詞に続き、ソロナンバー『消えぬ灯火』を力強く歌います。
最後は朝夏が星空のセットの中でひとり立ち、主題歌『Will in the World』を堂々と歌い上げます。「この世界は一つの劇場 人は誰もが皆役者」という歌詞や壮大なメロディから、作品の大きな世界観、多くの人々に言葉を通して想いを届けたシェイクスピアの人生が立ち上がってくるようです。朝夏の伸びやかな歌声が劇場いっぱいに響き渡り、大きな拍手が沸き起こりました。
続いて登壇者が挨拶を行いました。
生田大和(『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』担当)
「2016年のお正月公演、オリジナル作品を制作するにあたり、今後の宝塚歌劇が200周年に向かっていく中で、宝塚歌劇が宝塚歌劇らしく歩んで行くにはどうしたらいいのかと考えた時、宝塚歌劇でしか上演できないものをつくることが私の使命だとあらためて感じています。作品のキャッチコピー“世界は劇場。人は誰しも、みな役者”は、シェイクスピアの作品の中でも好きな言葉です。人はそれぞれこの世に自分自身の役割があり、居場所があるということだと思います。宙組のメンバーにはみんなそれぞれ役を生きてもらい、お客様にはこの公演から何かを感じ取っていただけたら嬉しいです」
藤井大介(『HOT EYES!!』担当)
「今回、朝夏まなとがトップに就任してから初めての新作のショー作品となりますので、とにかく彼女の魅力、そして朝夏率いる宙組のダイナミックさを、よりゴージャスにお見せしたいと考えております。朝夏の魅力はその伸びやかな手足、歌声、優雅なダンスといったようにいろいろとありますが、彼女を下級生の頃から見ていて、大きくて真っすぐな瞳がとてもチャーミングで印象的だと感じています。今回の作品では、その瞳をテーマに、バラエティーに富んださまざまなジャンルの音楽とダンスを使って、朝夏、実咲、真風率いる今の宙組の若さと魅力溢れるホットでゴージャスなショーにしたいと思っております」
宙組トップスター 朝夏まなと
「宙組が2016年の幕開け、お正月公演を担当させていただくことを、大変光栄に思っております。私のバウホール初主演作(『BUND/NEON 上海』)をご担当いただいた生田先生に、今回オリジナル作品をつくっていただき、とても嬉しく思っております。私自身『ロミオとジュリエット』が好きで、いつかシェイクスピアの作品に出てみたいと願っておりましたが、まさかシェイクスピア本人を演じることになるとは思ってもいませんでした。生田先生がいろいろな描写でキャラクターを浮かび上がらせてくださると思うので、その中で自分なりのシェイクスピアを演じたいです。ショーの藤井先生とも下級生の時からご縁があり、今回私の瞳をテーマにしたオリジナルのショーをつくっていただき、また、ダンスが大好きな私に、『ダンスをたくさん踊ってもらいます』と言っていただいていますので、とても楽しみです」
宙組トップ娘役 実咲凜音
「新しい年の幕開きの公演を宙組がさせていただけることを、とても嬉しく思っております。藤井先生と生田先生、そして朝夏さんを筆頭に、いまのエネルギー溢れる宙組の皆さんと一緒に、さらに盛り上げて行けるように精進して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
宙組 真風涼帆
「私にとりましては、宙組に組替えしてから初めての大劇場でのショーとなりますし、稽古のはじめから宙組全員揃って一緒にスタートできるのも初めてとなります。そういった意味でも、あらためて宙組生として、皆でスタートを一緒に切り、お客様のご期待に応えることができるよう、お稽古に励みたいと思います」
宙組出演者の朝夏まなと、実咲凜音、真風涼帆が、あらためてパフォーマンスの感想や2016年に向けての抱負を語りました。
朝夏 まなと(ウィリアム・シェイクスピア役)
男として作家として、シェイクスピアの二面性を大切に
「パフォーマンスでお芝居のひと場面を演じさせていただき、“言葉を生み出すシェイクスピア”というのがとても強く表れているなと感じました。歌詞の一つひとつが美しく詩的なので、そこを大切に演じました。ビジュアルは現代的な要素があり、資料に残っているシェイクスピアとはかけ離れていますが、シェイクスピアの一人の男としての部分と、いろいろな言葉を生み出す作家としての部分との二面性を大事に演じたいと思います。ショーは全場面大階段が登場するということで、想像がつかないですが足腰を鍛えます! 宙組トップという立場に立たせていただき、毎公演とても充実しています。真風もいい風を吹かせてくれていますし、今、組としても勢いがあるのを感じます。私自身もいい舞台をつくる意欲に燃えておりますので、2016年もお正月から、皆様に喜んでいただける舞台をお届けできるようしっかり務めて参りたいと思います」
実咲 凜音(アン・ハサウェイ役)
インスピレーションの源となるチャーミングな女性像
「ウィリアムの年上の妻アン・ハサウェイ役を演じさせていただきます。パフォーマンスでは彼にインスピレーションを与えられるような女性になれるよう、またウィリアムに積極的に興味をもって近づいていくところも彼女のチャーミングな部分だと思いますので、意識しました。今日はとても緊張しましたが、これからもっともっと役を膨らませていきたいと思います。私自身この1年で、本当にさまざまなタイプの女性の役を演じさせていただき、得ることがたくさんありました。今、宙組のみんなが朝夏さんの背中を見て歩んでいるというのを、稽古場でも舞台上でも肌で感じることができます。これからさらに甘えることなく、向上心を忘れずにいい舞台をつくりあげていきたいです」
真風 涼帆(ジョージ・ケアリー役)
“悪”ではなく“欲”を大切に演じてゆきたい
「本日のパフォーマンスでは、“悪ではなく欲”という意識を大切に演じましたが、大変緊張しました。わたくしにとって今年は激動の1年で、気付いたら今日ここにいる、という感覚です。研10で組替えという経験をさせていただき、本当に毎日学ぶことが多く、貴重な経験をさせていただいていると実感しております。宙組では朝夏さんの下でたくさんのことを学び、いつも朝夏さんと『宙組を観たい』と言っていただける組にしたいね、と話しています。来年も朝夏さんにしっかりついて行き、いろいろなことを学ばせていただくと同時に、宙組がさらに魅力的な組となるよう、微力ではありますが私の出来る限りの力を使って精進していきたいです」
朝夏まなとが宙組トップスターに就任して初の大劇場公演オリジナル2作品となる公演。それぞれが役柄を一からつくりあげ、自らの個性も武器に舞台上で輝きを放つでしょう。演劇ファンの心くすぐるシェイクスピアが題材のお芝居と、エネルギッシュにダイナミックに繰り広げる“全場大階段”という斬新なショー。新年の幕開きにふさわしい華やかで楽しい舞台を、ぜひともお楽しみください。
『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』の作・演出を担当するのは、大劇場公演の舞台が2作目となる生田大和。シェイクスピアの世界を題材に、数々のシェイクスピア作品のエッセンスを散りばめた意欲あふれるオリジナル作品を生み出します。
『HOT EYES!!』の作・演出を担当するのは、これまで『GLORIOUS!!』『Apasionado!!(アパショナード)』『NICE GUY!!』などタカラヅカの華やかさと力強さを絶妙にミックスしたショーを届けてきた藤井大介。
それぞれが会見で今作の意気込みを語りました。
生田大和(『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』担当)
清廉さとチャーミングさをもった朝夏シェイクスピアに
「学生時代からシェイクスピアに興味があり、彼のことを調べていくと彼自身の資料は少なく、正体不明なところが多いという事実に行きつきました。ある種自由度の高いなかで、彼の作品の中にあるヒントや残っている史実をベースに、シェイクスピア像を構築したいと思います。シェイクスピアは18歳の時、年上であるアン・ハサウェイと結婚しました。彼の作品にはロマンチックなものも多く、それがシェイクスピアとアンとの出会いやロマンスに基づいて描かれていたら…。そのようなロマンスを仮定し、そこから人物像をつくっていきました。オリジナル作品として、朝夏さんの魅力に基づいて、清廉さと人を惹きつけてやまないチャーミングさを併せ持ったシェイクスピアを、朝夏さんとともにつくっていきたいです」
藤井大介(『HOT EYES!!』担当)
全場大階段のショーをダイナミックな宙組とつくりたい
「私は幼いころから宝塚歌劇が大好きだったのですが、33年前に観た草野旦先生の『オペラ・トロピカル』という全場大階段のショーに衝撃を受けました。やはり大階段は宝塚歌劇の代名詞的な存在ですので、私もそういう演出に挑戦するのが夢でした。このたび担当させていただく宙組は、ダイナミックな魅力がある組で、長身の男役も多く、全場大階段のショーが格好よく映えるなという思いがありましたので、今回ぜひその演出にチャレンジしたいと思っております。もちろん同じ大階段の見せ方だと面白くないので、場面ごとに違いを見せていく予定です。なるべくいろいろな形で大階段を使い、宙組の魅力をお届けできればなと思います。今回寒い季節の公演ではありますが、より情熱的なステージをお届けしたいという思いをこめて『HOT EYES!!』というタイトルにしました。お正月から盛り上がれる舞台を、宙組のみんなとつくっていきたいと思います」