『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』の魅力
演出家 中村暁が語る スーパー・レビュー『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』の見どころ<前編>
これまで、結晶をコンセプトにした『CRYSTAL TAKARAZUKA -イメージの結晶-』(2014年月組)、世界の祭りがテーマの『VIVA! FESTA!』(2017年宙組)など、エネルギッシュなショー作品を手掛けてきたベテラン演出家・中村暁。宝塚歌劇105周年の幕開けとなる今作で、中村が抱いている作品の構想や見どころをじっくり聞いた。
タイトルに込めた想いについて。
「星」を意味するスペイン語は“ESTRELLA(エストレーラ)”ですが、今作では星組生全員の魅力をお見せしたいということから、複数形で『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』と名付けました。星というとその“輝き”によって、人々に何かを与える存在、願いをかけるもの、というイメージがあります。今作では満天の星々を星組の生徒にたとえて、彼女たち自身をモチーフに各場面を創っていきます。
どのような構成になるか、お聞かせいただけますか。
まず、スパニッシュ風ロックのオリジナル曲に合わせて、紅ゆずる、綺咲愛里、礼真琴、七海ひろき、瀬央ゆりあらスターたちがメドレーで歌います。そこに男役、娘役が次々と現れて盛り上げる、躍動感のあるプロローグです。さまざまな演出方法でお客様に楽しんでいただきたいと思っていますのでご期待ください。
続いて、J-POPを使った第2章の星メドレーでは、若さ溢れるフレッシュな雰囲気や、切ない感じなどを織り交ぜ、綴っていきます。
冒頭からの盛り上がりにワクワクしますね。その後はどんな場面が展開していきますか?
第3章は、紅・綺咲のトップコンビが中心となり、星空をバックに一夜の夢を歌い踊る「星夢(スタム)」という場面です。1曲の中で多彩にメロディが変化し、そこに掛け合いのコーラスが絡む、ドラマティックな構成です。
そして、礼を中心とする男役が歌とダンスで魅せる第4章から、第5章の中詰めへ。
星印「*(アスタリスク)」をモチーフにした「アスタリスク・メドレー」と題し、お馴染みの洋楽を、ふとメロディに気づいていただけるような新しいアレンジでつなげていきます。総踊りの場面では、曲の雰囲気を変えることで“ひねり”を効かせ、派手に、華やかにシーンを締めくくります。
終盤からフィナーレにかけての見どころは。
第6章「星鷺(ほしさぎ)」では、宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」に登場するジョバンニとカムパネルラの役を、紅と綺咲が演じます。カムパネルラは、ここでは少女という設定にしました。夜空を舞う星鷺たちが、二人を星空へと誘う幻想的な場面です。
フィナーレでは、男役による黒燕尾の群舞や、トップコンビのデュエットダンスなどが展開します。オリジナル曲に始まり、皆さんが聴いたことのある有名な曲をアレンジしたものや、J-POPまで登場しますので、きっと幅広い方に楽しんでいただけると思います。
全編を通してさまざまな楽曲が登場しますね。どのように選曲されるのですか。
オリジナル曲を創る工程では、「こういう雰囲気で」などのリクエストとともにイメージ段階の歌詞を作曲の先生にお渡しすることが多いのですが、想像していた以上のメロディが上がってくるので嬉しいですね。
オリジナル曲以外については、今回のレビューでは全曲、自分であまたの音楽を聴いて探してきた曲を使用しますが、望んでいた雰囲気の曲と出会った時の喜びはひとしおです。もしかして、一番楽しい作業かもしれません(笑)。
演出家 中村暁が語る スーパー・レビュー『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』の見どころ<後編>
インタビュー<後編>では、紅ゆずる率いる星組スターの魅力を中心に話を聞いた。
星組トップスター・紅ゆずるの魅力と、今作で期待すること。
彼女の最近の主演作を観て、舞台を心から楽しむ姿勢が感じられる、明るいスターだなと、あらためて思いました。一方で、私が演出を担当した『うたかたの恋』(2018年)では、稽古までに役に対する考えをしっかりと深めていて、作品へ真摯に取り組む姿も印象的でした。
紅には、中詰めの総踊りで、それまでのメドレーとはひと味違う、彼女にぴったりな明るくてノリのいいJ-POPの曲を歌ってもらいます。そこで彼女らしさを思う存分表現してほしいと期待しています。
以前彼女が、私が初めて手掛けたショー作品『サジタリウス』(1994年雪組)を「タカラヅカに入る前に観ましたよ!」と話してくれたことがあるのですが、そんなトップスターと今度は一緒にレビューを創れるのがとても楽しみですね。
トップ娘役・綺咲愛里の魅力と、今作で期待すること。
綺咲は『うたかたの恋』では可憐なマリー・ヴェッツェラ役を演じましたが、可愛さがありつつもその奥に芯の強さを秘めているところが、彼女の魅力だと感じます。今作ではそんな魅力に加えて、また違った面を見ていただこうと、フィナーレで、彼女を中心とする娘役だけのダンスシーンを創りました。少し挑発的な雰囲気で魅せてくれると思います。
男役・礼真琴の魅力と、今作での見せ場について。
歌もダンスも得意な礼にぴったりなものをと、私が気に入っている男性グループの曲を使ったシーンを中詰め前に用意しました。若手男役たちとのナンバーで、切なく哀愁漂う雰囲気から始まり、アップテンポになっていく場面です。また、「星鷺」のシーンで紅と綺咲を星空へと誘うソロのダンスなど、多くの場面で活躍してもらいます。
ほかにも、星組には魅力的なスターが揃っていますね。
七海ひろきには、第2章の星メドレーで、若手スターを率いる中心となってもらいます。彼女はしっとりとした雰囲気を持っていて、見つめられると固まってしまいそうな魅力があります(笑)。そういう頼もしいスターが若手と一緒に歌い踊ることで、また新たな変化のようなものが生まれるのではと思います。
瀬央ゆりあには、フィナーレで、切なくも格好いいオリジナル曲をソロで披露してもらいます。彼女は舞台に立つための準備を怠らない努力家でもあるので、そこをさらに活かしてほしいと期待しています。
星組のショーの演出は初めてですが、今の星組の印象は?
トップスターの紅が舞台を心から楽しんでいるので、やはり星組のみんなからも同じような姿勢を感じますね。このレビューでもそんな姿をしっかりお見せできたらと思います。また、個性的な若手がたくさんいますので、彼女たちの魅力も幅広くお届けしたいです。
最後に、お客様へのメッセージを。
いつも、タカラヅカの品を大切にしつつ、躍動的な“何か”を意識して作品を創っていますが、このレビューでも、“珍しきもの、面白きもの、華やかなりしもの”を、場面や曲ごとに少しずつ詰め込んでいきたいと思っています。その結果として、お客様の心を動かすことができれば嬉しいです。
タイトルに「星たち」とあるとおり、星組が誇る“ESTRELLAS(エストレージャス)”が華やかな舞台で躍動する姿を、新春から大いにお楽しみください!
【プロフィール】
中村 暁
大阪府出身。1977年宝塚歌劇団に入団。1985年、アメリカのハイスクールを舞台にした青春ドラマ『スウィート・リトル・ロックンロール』(月組)で演出家デビュー。『黄昏色のハーフムーン』(1990年雪組)で宝塚大劇場デビュー。『サジタリウス』(1994年雪組)で初めてショー作品を手掛ける。その後『ドリアン・グレイの肖像』(1996年星組)、『マノン』(2001年花組)など芝居も多数手掛け、『麗しのサブリナ』(2010年花組)では名作映画を緻密にミュージカル化した。近年は『Dance Romanesque(ダンス ロマネスク)』(2011年月組)、『GOLD SPARK!-この一瞬を永遠に-』(2012年雪組)、『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』(2014年月組)、世界各地のFESTA(祭り)をテーマにした『VIVA! FESTA!』(2017年宙組)など、タカラヅカ的な伝統の中に現代的なセンスが光るショー作品を次々と発表している。
ゴージャスに輝く! 2019年の星組の魅力
“エストレージャス”は、“星々”を意味するスペイン語。スーパー・レビュー『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』は、星組出演者の魅力を、人々の心を照らす満天の星々にたとえ、バリエーション豊かな歌やシーンでおくるファンタスティックなレビューです。公演に先立ち、輝く今の星組を改めてご紹介しましょう。
星組の誕生から現在
星組が誕生したのは、東京宝塚劇場の開場を翌年に控えた1933年。宝塚歌劇の4番目の組として新設されました。以来、タカラヅカらしい華やかでエネルギッシュなステージをお届けしてきた星組。組の名前に違わぬゴージャスなスターや、スケールの大きなスターを数多く輩出してきました。
トップスター・紅ゆずるが率いる現在の星組も、その伝統を継承し、個性豊かなメンバーが揃う華やかな組として活躍しています。
2019年も進化する、星組の魅力
星組トップスター・紅ゆずるとトップ娘役・綺咲愛里は、ともに組替え経験のない生粋の星組出身者。星組らしくキラキラ輝く存在感を放つトップコンビです。星組の象徴として、クラシックな正統派のスタイルから、タカラヅカの枠にとらわれない演目まで、幅広い作品世界を美しく華やかに体現してきました。
トップスター・紅の闊達な雰囲気が、組全体にも表れている現在の星組。伸びやかに個性を育む空気があり、バラエティに富んだ魅力を持つスターが活躍中です。熱気に包み込まれるような、エネルギーに満ちたステージは、活気に溢れ、熱い星組魂が脈々と受け継がれています。
星組らしさを詰め込んだ、今作の見どころ
『ESTRELLAS(エストレージャス)~星たち~』では、メドレーで盛り上げる躍動感のあるプロローグに始まり、星空を背に一夜の夢をドラマティックに歌い踊るシーン、「銀河鉄道の夜」をモチーフにしたシーンなど、印象的な場面が目白押し。さらに、若手メンバーがフレッシュな魅力をアピールするナンバーや、紅の歌にのせて派手に華やかに魅せる総踊りなど、冬の星空にも負けないきらめくステージをご堪能いただけます。
宝塚歌劇105周年の幕開けに相応しい、パワフルな星組のレビューを、どうぞお見逃しなく!
2019年タカラヅカに輝く、星組のスターたち
トップスター・紅ゆずるという、ひときわ明るい星を頂点に、舞台の上で星(スター)たちがそれぞれに輝きを放ちます。ここでは、今の星組でまばゆく光るスターたちをご紹介します。
紅 ゆずる Yuzuru Kurenai
華やかなスター性があり、多彩な輝きを放つ星組トップスター。現代的なセンスと、タカラヅカらしいクラシカルな魅力を持ち合わせる。開放的で明るいキャラクターと独自の個性を存分に発揮し、芝居、ショー共に紅らしいエンターテインメント性溢れる舞台で客席を沸かせ続けている。2018年10月~11月に行われた第三回台湾公演でも、エネルギッシュな舞台を繰り広げ、好評を博した。
● プロフィール
大阪府出身。2002年『プラハの春』で初舞台。同年、星組に配属。2008年『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』で新人公演主演を務める。2011年『メイちゃんの執事-私(わたくし)の命に代えてお守りします-』でバウホール公演主演。その後数々の公演で活躍。2017年1月より星組トップスターに就任。同年3月『THE SCARLET PIMPERNEL』で大劇場トップお披露目。2018年、抱腹絶倒の落語ミュージカル『ANOTHER WORLD』の康次郎役を、持ち前のセンスを活かして好演。同年、『Thunderbolt Fantasy(サンダーボルト ファンタジー)東離劍遊紀(とうりけんゆうき)』では、謎めいた美丈夫・凜雪鴉(リンセツア)を妖しい魅力で演じた。この作品は台湾公演として台北、高雄の2都市でも上演され、大きな成果を残した。
綺咲 愛里 Airi Kisaki
キュートなルックスの可憐な娘役として早くから注目を浴び、切れのあるダンスで観客を魅了。トップ娘役の大劇場お披露目公演である2017年3月『THE SCARLET PIMPERNEL』では、マルグリット役で落ち着いた大人の魅力を開花させた。少女から妖艶な女性の役まで、公演ごとに新たな一面を見せ、ますます華やいだ輝きを放っている。
● プロフィール
兵庫県出身。2010年『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台、同年星組に配属。2014年『The Lost Glory —美しき幻影—』で新人公演初ヒロイン。その後多くの作品で活躍の場を与えられ、2017年1月『オーム・シャンティ・オーム -恋する輪廻-』より、紅ゆずるの相手役としてトップ娘役に就任。2018年『うたかたの恋』マリー・ヴェッツェラ役、『ANOTHER WORLD』お澄役、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』丹翡(タンヒ)役と、演技の幅を広げている。
礼 真琴 Makoto Rei
伸びやかな歌声と躍動的なダンスが目をひく実力派スター。近年ますます男役としての輝きを増し、快活な魅力で星組を支える。2019年5月には全国ツアー『アルジェの男』『ESTRELLAS ~星たち~』で主演を務める。ドラマティックな往年の名作への挑戦で、さらなる新境地が期待される。
● プロフィール
東京都出身。2009年『Amour それは・・・』で初舞台、同年星組に配属。2013年『ロミオとジュリエット』で新人公演主演。その後多くの新人公演で主演を務める。2014年『かもめ』、2016年『鈴蘭(ル・ミュゲ) —思い出の淵から見えるものは—』に主演。2017年『THE SCARLET PIMPERNEL』のショーヴラン役で高い評価を得た。同年、『阿弖流為 –ATERUI–』で主演し、誇りを守る為に戦った男の生き様を熱く演じ上げた。2018年は『ANOTHER WORLD』で米問屋の若主人で遊び人の徳三郎役を表情豊かに演じ、硬軟自在の演技力で進化を見せている。
七海 ひろき Hiroki Nanami
洗練されたルックスと、爽やかな色気が魅力の男役スター。磨きのかかった表現力と芝居心を感じさせる演技で活躍。華やかなスター性と温かみのある存在感で、星組男役スターの一翼を担う。今作が、惜しまれつつのラストステージとなる。
● プロフィール
茨城県出身。2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、同年宙組に配属。2009年『薔薇に降る雨』で新人公演主演。2013年『the WILD Meets the WILD』で、バウホール公演W主演。2015年に星組へ組替え。2017年『燃ゆる風 -軍師・竹中半兵衛-』に主演。戦国の世に類稀な智略を以って名を馳せた軍師、竹中半兵衛を熱演した。2018年、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』では流浪の剣客・殤不患(ショウフカン)を演じ、深みのある演技で観客を魅了した。
瀬央 ゆりあ Yuria Seo
端正な容姿と繊細な演技力をもつ男役スター。一作ごとに成長し、星組の舞台を盛り上げる存在として活躍の場を広げつつある今、目が離せない男役の一人である。
● プロフィール
広島県出身。2009年『Amour それは・・・』で初舞台、同年星組に配属。2015年『ガイズ&ドールズ』で新人公演主演。2017年『阿弖流為 –ATERUI–』では、心ならずも朝廷の命を受け苦悩する坂上田村麻呂役で、存在感を示した。2018年『ドクトル・ジバゴ』のパーシャ(ストレリニコフ)役では、一人の人間の中に生じていく変化をきめ細やかに表現。同年2018年8月『New Wave! -星-』では、紫藤りゅうと共に星組若手メンバーを率いた。同年10月『デビュタント』で宝塚バウホール単独初主演。人との出会いや経験を通じ、成長への一歩を踏み出す良家の青年イヴを、瑞々しく好演した。
ご紹介したスターに加えて、個性豊かな星組のエンターテイナーたちが、めくるめく多彩な魅力でお届けするスーパー・レビュー『ESTRELLAS(エストレージャス) ~星たち~』。どうぞご期待ください。