演出家 藤井大介が語る

パッショネイト・ファンタジー『Cool Beast!!』の見どころ

ヒットメーカーとして、数々の人気作品を生み出してきた演出家・藤井大介。花組でも多くの作品を手掛け、出演者の魅力を存分に引き出してきた藤井が、柚香光を中心とした今の花組公演を演出するにあたり、作品への意気込みを聞いた。

情熱的なラテンの世界で、柚香光の野性的な色気を

『Cool Beast!!』は、どのような作品ですか?

柚香光演じる最高にクールな野獣の王者“ベスティア”と、華優希扮する艶やかな花“フローレス”、そして瀬戸かずやの世界一優しい人間“エストーム”の3者がそれぞれに惹かれ合っていくストーリーを軸に展開するショーです。妖しくも濃厚な世界を、ラテンの音楽に乗せて情熱的に描きます。
時空を超えたり、時には男女の性別を超えたりしながら繰り広げる、ショー作品だからこそ表現できるファンタジーの世界をご覧いただこうと思っています。

作品の見どころを教えてください。

見どころとしては、血が騒ぐようなラテンのリズムに乗せた激しいダンスと、柚香をはじめとした出演者たちのワイルドな色気をぜひご覧いただきたいですね。
プロローグからとてもハイテンションで野性味のある幕開きで、私自身、とてもワクワクしています。
ほかにも、ラヴェル作曲のクラシック「水の戯れ」に乗せ、柚香と華が裸足でデュエットダンスを踊るシーンがあるのですが、柚香が素晴らしいダンステクニックを披露してくれていますので、これも見どころの一つですね。

そして中詰めは?

設定は“獣たちの舞踏会”です。出演者たちには、ジャングルに棲むいろいろな獣に扮して暴れ回ってもらいます。この場面は思い思いにそれぞれの個性を主張してくれたら面白くなると思います。

セットや衣装もジャングルをイメージしたものに?

ジャングルというと、密林や草原をイメージされる方も多いと思いますが、アスファルトジャングルのような鉄骨の雰囲気を取り入れた、現代のクラブ風のセットを考えています。プロローグの衣装も、スタイリッシュにゴールドを用いるなど、あえて現代風を目指しています。

柚香光率いる花組の魅力について

藤井先生は、花組と縁が深いですね。

数えてみたら、花組の大劇場公演を担当するのは今回で9回目でしたね。どの時代も華やかでキラキラしていて、一人ひとりの個性が際立っている組ですね。
今回は“野獣”がテーマですし、彼女たちの個性がぶつかり合って、さらに激しくボルテージが上がるような舞台をお届けしたいと思います。

先生から見て、柚香光の魅力とは?

音楽学校時代からすでに輝いていたので、以来注目して見続けてきました。もちろん演技的な計算もできますし、理性的でもあるのですが、その反面、計算を感じさせないのびやかさ、感性のままに歌い踊っているところに、大変魅力を感じています。柚香にしか出せないリズム感など、特有の魅力を持っている人です。

今や組を引っ張る立場ですが。

細かく言葉で指導するタイプではなく、彼女自身が伸び伸びと取り組んでいる背中を見て、花組のみんなも刺激を受けているのではないでしょうか。言葉よりも、身体で発するエネルギーが素晴らしいなと思いますね。

この公演でトップ娘役の華優希が退団します。

普段の彼女を一言で表現すれば“可愛い”ですが、最後にあえて妖艶な大人の女性に挑戦してもらいます。舞台に立っているだけでも醸し出される不思議な“華”のある人ですから、ベスティアと自然と惹かれあっていく妖しげな感じをうまく表現してくれるでしょう。フィナーレでは柚香と大人っぽいタンゴを踊ってもらいますので、ご注目ください。

瀬戸かずやも宝塚を卒業しますね。

とてもかっこよくて、色気のある良い男役の退団は本当に残念で、今はまだ彼女のいない花組が想像できません。今回は、瀬戸が扮する“エストーム”が野獣の世界に迷い込むという設定で、いろいろな見せ場を用意していますので、最後に魅力を爆発させてほしいと思います。

専科からは、美穂圭子、凪七瑠海が出演します。

二人は、世界を創っている神様という設定の役なのですが、本当に神様のように花組生を優しく温かく、そして力強く包み込んでくれています。共に素晴らしい実力の持ち主ですので、非常に頼もしいですね。

最後に、お客様へのメッセージを。

花組にとっては久しぶりのショー作品です。トップスター・柚香光の魅力をふんだんに引き出すことを考えて創っておりますので、まずはそこを楽しみにご覧ください。
世の中がこのような状況で、やむなく人数を減らしての公演にはなりますが、稽古場にはそれを感じさせないほどの熱気が漲っております。初夏に向けて暑くなっていく時期にぴったりの作品で、是非ひと時の夢をお楽しみください。出演者一同、お待ちしております。

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【プロフィール】

藤井 大介

東京都出身。1991年宝塚歌劇団入団。1997年宝塚バウホール公演『Non-STOP!!』(月組)で演出家デビュー。2000年『GLORIOUS!!』(宙組)で宝塚大劇場公演デビューを果たす。トップスターのお披露目公演(『Joyful!!』2003年雪組・『宙 FANTASISTA!!』2007年宙組)、退団公演(『Dear DIAMOND!!』2015年星組・『Forever LOVE!!』2016年月組ほか)も数多く手掛けている。2005年韓国公演、2013年台湾公演ではショー作品の作・演出を担当し、宝塚歌劇の魅力を存分に発揮した作品で両公演とも好評を博した。『“R”ising!!』(2010年宙組)や『REON!!』(2012年星組)、『DRAGON NIGHT!!』(2015年月組)などライブやコンサートでもその手腕を発揮。2017年の『Santé!!』~最高級ワインをあなたに~(花組)では、ワインの香り漂うような、瀟洒で華やかな舞台で客席を酔わせたかと思うと、2018年には『Gato Bonito!!』 ~ガート・ボニート、美しい猫のような男~(雪組)で情熱的でセクシーなラテンの世界を再現してみせた。同年、代表作の一つである『EXCITER!!』(2010年花組)を『EXCITER!!2018』(花組)のタイトルで再構築、柚香光を主演に全国で上演し、好評を博した。その後も、『クルンテープ 天使の都』(2019年月組)、『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~(2020年宙組)など、多彩な作品を生み出し続けている。エネルギッシュで独創的な作品を次々と送り出し、宝塚歌劇のショーシーンを牽引するひとりとして活躍している。