トミー・チューン氏会見

『グランドホテル』の特別監修を務めるトミー・チューン氏は、2015年の第69回トニー賞特別功労賞を含め、トニー賞に10回輝いている偉大な俳優・演出家・振付師です。全米芸術勲章、ドラマ・デスク賞(8回)、アステア賞(3回)など複数の功労賞も受賞しています。ダンサーとしてキャリアをスタートし、『Grand Hotel』ではトニー賞の演出賞・振付賞を受賞。『The Will Rogers Follies』『My One and Only』『Nine』などでもトニー賞を受賞。映画『Hello Dolly』などに出演するほか、ラスベガス屈指のハイテクショーでも華々しい活躍を見せました。エンターテインメントへの情熱はとどまることなく、現在もワンマンショー『Taps, Tunes and Tall Tales』で全米ツアーを行っています。
1993年の月組公演『グランドホテル』では演出・振付を担当。同時上演のミュージカル・ショー『BROADWAY BOYS』では作・演出・振付を担当し、ブロードウェイに夢と憧れを抱いてやって来る青年二人の、ストーリー仕立てのショーを生み出しました。

制作発表会ではトミー・チューン氏も報道陣の質問に答え、様々な想いを語りました。   

インスピレーションの源、“音楽だけは止まらない”

1993年に宝塚歌劇の『グランドホテル』『BROADWAY BOYS』を手掛けた時の思い出

「芝居とミュージカル・ショーの両方を担当させていただきましたので大変な困難のなかでチーム全員が本当に頑張っていたと思います。特に音楽を担当していたスタッフたちは、『グランドホテル』のスコアを女性のキーに合わせるという作業があり、新たな楽曲を創らなければならずかなり苦労されていました。また、涼風真世さんが演じるオットー・クリンゲラインが他のキャラクターよりも際立つように創らねばならなりませんでした。ミュージカル『Hello Dolly』の作詞・作曲家であるジェリー・ハーマンも『BROADWAY BOYS』に携わり、タカラヅカのスタイルに添って創るということで、とても努力していました。今日は岡田先生と並びながら、一緒にオリジナル作品を創ったことを懐かしく思い出しております。」   

1989年の『グランドホテル』はどのような想いを込めて創られたのか

「私がまだ子どもだった頃、MGMの映画「グランド・ホテル」を観ました。グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ライオネル・バリモア、ウォーレス・ビアリー、ジョーン・クロフォードなどが出演していました。この映画を大人になりあらためてテレビで観た時、これは素晴らしいミュージカルになる要素がたくさんあると感じました。そしてヴィッキー・バウムの原作を読むとその中に、“この物語はホテルの様々なスタッフ、ゲスト、金持ち、貧しくても財産を使い宿泊する人、色々な人々が行き交う話ではあるけれど、音楽だけは止まらない”とありました。音楽は止まらない! まるで彼女がそのページから私に語りかけているような気がしました。そこからインスピレーションを得て創り上げた『グランドホテル』は、大成功し私もトニー賞の演出賞・振付賞をいただきました。そして今でも作品はベルリンやフランス、イタリア、全米ツアーと世界中で上演されています。」   

月組公演の出演者の印象と、新生月組と創る宝塚歌劇の『グランドホテル』への期待について

「今日は彼女たちのエネルギーをとても感じました。今の段階では、スケッチを描いているような状態だとご理解ください。これから稽古を重ね、彼女たち自身の中でさらにキャラクターを深めていくのだと思います。この世に“時間”というほどのギフトはありません。彼女たちは私にとって、本当に素晴らしく才能ある“チルドレン”です。この作品は大人のための芸術的な作品ですが、最近高校生たちが『グランドホテル』を上演しているのを私は拝見したのですが、とても情熱をもって演じていて素晴らしいと感じました。なぜ彼らはあの年齢で表現できるのだろうと、逆に色々と教えられました。この新しい月組でも、きっと大きな感動が生まれるものと期待しています。」   

今回の再演では男爵に焦点を当てることになるが、そのことによってどのような色合いになるのか

「それはこの場では申し上げられません(笑)。これからその作業をしていきます。岡田先生をはじめ、若い生田先生のような方たちと一緒に作品を創ることができることを楽しみにしています。生田先生とはニューヨークでもお会いしましたが、懸命に色々と考えてくださっていて、まるで私の若い頃を見ているようでした。そして月組の素晴らしい方々とご一緒できることを大変嬉しく思っております。」