藤井大介のショーの世界 ~華やかに、エネルギッシュに~

藤井大介のショーの世界

今や宝塚歌劇のショー・レビューの要として大活躍の演出家・藤井大介。現代的な感覚を取り入れたエネルギッシュなショー、宝塚歌劇100周年を記念した豪華絢爛なレビューなど、多彩な作品を世に送り出してきた。彼が幼い頃から観続けてきた、“宝塚歌劇”への愛にあふれるその作品たちは、観る人の心を掴んで離さない。次回作、望海風斗を中心に一層勢いを増す雪組の『Gato Bonito!!』も楽しみでならない。来る6月8日の開幕を前に、藤井の情熱の原点やこだわりに迫る。   

1.作品創りのこだわり

お客様が元気になれるステージを

藤井の作品といえば、まずプロローグの斬新さが思い浮かぶ。『Apasionado!!(アパショナード)』(2008年月組初演)では、ゆっくりとしたメロディーから曲調が変わると一瞬にして電飾煌めく大階段が登場し、タカラヅカの非日常へと引き込まれた。「お客様がご覧になった後に元気になれる、パワーをお届けできるステージを目指しています」と話す藤井。その言葉通り、スピード感あふれる場面構成や、会場の一体感が生まれる客席降りの演出も光る。『Étoile de TAKARAZUKA(エトワール ド タカラヅカ)』(2012年星組)では、通常はフィナーレで披露されることの多い男役の黒燕尾群舞を冒頭に展開し、その迫力は台湾公演でも熱狂を生んだ。このように、作品の随所に観客のボルテージが自然に上がる工夫が凝らされている。   

写真 『Apasionado!!(アパショナード)』(2008年月組)

  

音楽に満ちた生活から作品は生まれる

ショーの重要な要素のひとつ“音楽”。「私は基本的に音楽がないと生活できないタイプで、家では常にプレーヤーやテレビをつけて、音楽を聴いています。ジャズやクラシック、日本のポップスから演歌まで、ジャンルは問わず、何でも好きですね」という藤井。その習慣を生かすように、宝塚大劇場公演デビュー作となった『GLORIOUS!!』(2000年宙組)では、アメリカで生まれた音楽をテーマに、ブルース、ジャズ、ロック、フォークソング、ラップなどを、バラエティ豊かに取り入れ、巧みな構成で客席を盛り上げた。耳に残るノリのいい主題歌が多いのも、藤井作品が愛される理由のひとつ。「近年は、作曲の手島恭子先生、青木朝子先生にお力を貸していただくことが多く、私にとってお二人の作曲家はミューズのような存在です」と想いを共にするスタッフと創り上げる作品は、世代も国も超える“音楽”の魅力であふれている。   

出演者の一番いいところを引き出したい

これまで“カクテル”“楽器”“ギリシャ神話”など、さまざまなモチーフの作品を創り上げてきた。トップスターの退団公演ではそのスターをイメージしたテーマを掲げ、凰稀かなめを美しいフェニックス(不死鳥)に見立てた『PHOENIX 宝塚!! -蘇る愛-』(2014年宙組)、柚希礼音を最高級の輝きを放つダイヤモンドに見立てた『Dear DIAMOND!!』(2015年星組)など、それぞれの魅力を際立たせる作品を生み出した。藤井は「出演者の一番いいところを引き出したい」と語気を強める。ダンスの名手には、裸足で一人のびのびと踊る場面を与え、ストーリー仕立ての場面では、個性を発揮する出演者にスポットを当てる。出演者一人ひとりを最も輝かせるために、すべての出演者に愛情を注ぎ、細やかに演出するのが藤井流だ。 「花組の下級生時代から、望海風斗の、男役をとことん追求する真摯な姿を見てきた」という藤井と、「ラテン・ショーに出演してみたかった」望海との、今回の組み合わせは大注目。これまでに見たことのない“新しい望海風斗の魅力”に出会えるに違いない。   

写真 『PHOENIX 宝塚!! -蘇る愛-』(2014年宙組)

  

2.作品創りの原点と未来

幼い頃から身近にあった宝塚歌劇

藤井は物心つかぬ頃からタカラヅカの劇場に連れられ、少年時代には、すでに毎公演必ず観劇するという程であったそうだ。「『僕はタカラヅカに入るんだろう』と自然に思っていました。幼い頃からショーの案をノートに書き留めていて、今でもそれが残っています」と笑う。幼くして宝塚歌劇を知り、自然と知識を身につけてきた藤井は、伝統的な、粋で格好いい男役像、可憐で美しい娘役像を、的確に描き出す。一方で、「幼い頃から観てきた舞台の記憶を一度取り払い、新しいものを生み出す努力をしています」とも。『HOT EYES!!』(2016年宙組)では、全場で大階段を使用するというダイナミックな演出を試みた。また、『Forever LOVE!!』(2016年月組)では、娘役が中心となる激しいダンスシーン、ドレスをまとった男役ならではのコケティッシュな魅力を対照的に際立たせ、宝塚歌劇の醍醐味を一層味わい深く表現した。   

写真 『HOT EYES!!』(2016年宙組)

  

今のテーマは「自然体で楽しみながら」

「CDを集めたり、映像を見たりと、仕事のためにインスピレーションの源を熱心に探し回った頃もありましたが、アイデアは必死に考えても湧いてくるものではないとわかり(笑)、今では、ふと自分の目や耳に飛び込んでくるものがあればチェックする、というスタイルになりました」と語る。最近は、旅先の海外で購入したタンゴのCDを聴いているというが、今回の『Gato Bonito!!』に生かされそうだ。「今は、旅行は仕事のために出かけるというより、プライベートの面が強く、もし、そこでヒントがあればメモする、持ち帰るという感じです。『自然体で自分も楽しみながら仕事をしよう』が、これからの僕のテーマですね」と、笑顔を見せる。感性の扉を開きつつ凝り固まらない、柔軟性のあるスタイルで、今後も斬新な作品を生み出してゆくだろう。   


「やはり“夢の世界”であることが、宝塚歌劇の魅力ですね」と話す藤井。魔法にかかるように瞬時に作品の世界に入り込める。そして、スターの魅力に夢中になれる作品を、その豊かな感性と経験で創り上げていく。今作『Gato Bonito!!』でも、望海風斗率いる雪組の魅力を凝縮した、“ゴージャスで熱い夢の世界”を見せてくれるはずだ。

  

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