演出家 中村一徳が語る
Show Stars『Ray -星の光線-』の見どころ<前編>
宝塚歌劇ならではのゴージャスなショーから、海外ミュージカルまで、多彩な作品を手掛ける演出家・中村一徳が、礼真琴を中心とした新生星組による初めてのオリジナルショーを担当する。今の星組にしか出せない“光線”を引き出す中村に、今作への意気込みを聞いた。
作品タイトルについて
今作は礼真琴・舞空瞳の新トップコンビ大劇場お披露目公演ですので、“礼”が率いる新しい星組の船出という想いを込めました。奇しくも「令和」が始まったばかりですから、星組の魅力に新たな時代が始まるパワーをプラスした作品にしたいと思っています。
ショーの構成について
“Ray”というタイトルのとおり、光や輝きをテーマにしていますが、“礼”や“麗”、そして“令”“霊”など、音の響きから連想した場面を考えています。各場面を出演者たちがどのように表現してくれるのか、とても楽しみですね。
トップコンビのシーンについて
礼の歌から始まり、新生星組のスタートを切るという新鮮な気持ちを、出演者全員の歌とダンスで見せるオープニングの後、トップコンビだけのしっとりとした歌を用意しました。礼と舞空の二人が、星組で相手役として組むことは運命だと思いますし、この巡り合わせを大切にしてほしいとの願いを込めて、たくさんの星たちの中から、たった二つの星が巡り合うような歌のイメージにしています。
ほかに、運命を予言する“霊夢(れいむ)”という言葉に着想を得て、礼と舞空を中心にした大人数での場面を作りました。タンゴの楽曲に乗せて、運命を予言された二人の出会いをお見せしたいと思います。タンゴで大人っぽい雰囲気ではありますが、白い衣装なので爽やかな印象になるのではないでしょうか。そして、フィナーレのデュエットダンスでは、柔らかい雰囲気で踊ってもらいます。二人のバラエティに富んだ魅力を楽しんでいただきたいですね。
その他のシーンは?
中詰めは、神秘的で幸せをもたらすとも言われる「霊鳥」をテーマにしています。ほかの場面とはカラーを変えて、オリエンタルな雰囲気にしようと思っています。そして、霊鳥が空を舞っていくと古代ギリシャの世界へと繋がります。なぜ古代ギリシャかと言いますと、2020年、“令”和2年は東京オリンピックが開催されることもあり、オリンピックを意識した場面を作りたいな、と(笑)。オリンピックは元々、オリンピアの神々をたたえる祭典でしたから、競い合い、高め合って勝利を目指す姿をダンスで表現してもらいます。
フィナーレについて
フィナーレの冒頭に、新しい星組のフレッシュさを感じていただける場面を用意しましたので、楽しみにしていただきたいですね。
そして、定番ではありますが、黒燕尾の男役による大階段での群舞もあります。ここではクラシックの曲をかっこよくアレンジした楽曲を予定しています。その後、華形ひかる、愛月ひかる、瀬央ゆりあをはじめとした男役と娘役のナンバーになり、デュエットダンスへと続いていきます。
映像を使用した演出について
『雨に唄えば』(2018年月組)、『ファントム』(2018年雪組)でもご一緒したJaijin Chung先生に、今作でも映像をお願いしています。大胆なアイデアで作られた繊細な映像が魅力的で、大変信頼を寄せている先生です。今回もとても面白いものを作っていただきました。ショーの中のスパイスとして楽しんでいただけると思います。ご期待ください。
Show Stars『Ray -星の光線-』の見どころ<後編>
インタビュー<後編>では、礼真琴ら出演者や、星組の魅力を中心に話を聞いた。
新トップスター・礼真琴について
歌もダンスも素晴らしいですし、人を惹きつける華やかさも併せ持っていて、どこが一番の魅力かというのは、非常に難しいですね(笑)。すべてにおいて魅了され、単純な表現になってしまいますが、大変かっこいい男役です。それだけではなく、明るさやキュートさもあって、多面的な魅力に溢れたスターだと感じています。
これからは自分がさらにどれだけ輝くかに加え、トップスターとして星組を高めていく立場になりますから、より一層経験を積んで、大きく羽ばたいてほしいと思います。
新トップ娘役・舞空瞳について
彼女は下級生ながら、着実に一作一作、作品ごとに経験を重ねて、どんどん輝きを増していますよね。一人でも十分に素敵ですが、礼と組むことによって、さらに魅力的になるように感じます。礼と同じく、実力のある人なので求められるクオリティも高くなると思いますが、努力を惜しまないですし、そうした努力は必ず花開くのではないでしょうか。トップコンビとしてのバランスも良く、二人の相乗効果がとても楽しみです。
愛月ひかるについて
最近では「宝塚巴里祭2019」で一緒に仕事をしたのですが、表現力に圧倒されました。以前から、彼女の演技はもちろん、歌やダンスへの気持ちの入れ方や、醸し出すものが非常に魅力的だと思っていましたが、これからもさらに飛躍してくれることでしょう。
今作ではゴスペルが発展してジャズになる「霊歌」という場面を任せています。過酷な状況下の人々が作り出した音楽とそのスピリットの重さを、愛月ならしっかり表現してくれるだろうと信頼しています。
瀬央ゆりあについて
彼女が主演の『龍の宮(たつのみや)物語』を観て、純粋で誠実な印象を受けました。今、まさに伸び盛りの彼女には、金星をテーマにした、新たな光が生まれるようなイメージの場面で、若手メンバーの中心になってもらいます。新しい星組を支える一人として、礼や愛月とはまた違った個性を見せてくれるだろうと、大変期待しています。
専科・華形ひかるについて
彼女は心の中と言いますか、内面から華やかなオーラを放ち、光を感じさせてくれる稀有な人ですね。それを強く感じたのが『ファントム』(2011年花組)のアラン・ショレ役でした。舞台にいるだけで作品全体を華やかにする彼女独特の輝きを持っていると実感しました。今作は彼女の退団公演ということで、花道となればよいと思う場面も作っています。ぜひ、華形の男役としての姿を目に焼き付けてください。
今の星組の印象
私が星組の大劇場公演を担当するのは2002年の『LUCKY STAR!』以来18年ぶりになりますから、まだお互いに様子を見ている雰囲気はありますね(笑)。稽古を見ていて、私自身、とても新鮮な気持ちになります。これまで、客席から星組の舞台を観ていて、スタイリッシュな組という印象を持っていますが、これからさらに、組全体が礼の朗らかな雰囲気に染まっていくのだろうなと思うと、その変化も楽しみです。
最後に、お客様にメッセージを
今回、新生星組の大劇場お披露目公演に携わることができ、大変嬉しく思っています。出演者全員が意識を高く持ち、100パーセントの力を出せる作品、そして、一人ひとりが実力を蓄えることができる作品を目指しております。この公演を最後に、組長の万里柚美が専科に異動し、専科の華形が退団することになり、出演者それぞれに抱える想いはあるでしょうが、今のメンバーだからこその、新しい星組のスタートを祝っていただける作品にしたいと思います。どうぞ、ご期待ください。
【プロフィール】
中村 一徳
大阪府出身。1988年宝塚歌劇団に入団。1994年、17世紀半ばの李氏朝鮮を舞台にした『サラン・愛』(花組)で演出家デビュー。『大上海』(1995年雪組)、『香港夜想曲』(1996年花組)と、アジアを舞台にした作品を発表。宝塚歌劇の伝統と現代的なシャープさが光るレビュー『プレスティージュ』(1996年月組)で宝塚大劇場デビュー。1999年には往年の名作レビューをリメイクした『華麗なる千拍子’99』(雪組)を担当。同名の名作映画をミュージカル化した『雨に唄えば』(2003年星組、2008年宙組、2018年月組)、小説「オペラ座の怪人」をもとにした『ファントム』(2004年宙組、2006年花組、2011年花組、2018年雪組)を手掛けた。レビュー作品では『Shining Rhythm!』(2012年雪組)、『Fantastic Energy!』(2013年月組)、『My Dream TAKARAZUKA』(2014年雪組)、『Melodia -熱く美しき旋律-』(2015年花組)、『Dramatic“S”!』(2017年雪組)、『Music Revolution!』(2019年雪組)といった華麗なレビュー作品を多く担当。ほかにも、礼真琴ディナーショー『MOMENT』(2018年)をはじめ、タカラヅカスペシャル、宝塚巴里祭などでも手腕を発揮している。