日本物レビューの魅力
宝塚歌劇の日本物レビューの魅力と楽しみ方
宝塚歌劇の日本物レビューとは?
出演者全員が日本物の扮装で、全場を歌と踊りで構成した日本物レビューは、宝塚歌劇が長い歴史の中で培ってきた、華やかで独創的な公演スタイルです。初めての方でも日本の美を目や耳で、そして心で感じて楽しめる、そんな宝塚歌劇ならではの日本物レビューの魅力を、今作の注目ポイントとともに、一部ご紹介しましょう。
一、豪華絢爛!日本物レビューの“様式美”
拍子木(柝)の“チョン”という音と同時に、“パッ”と舞台上の照明が一斉に入ると、銀橋はじめ、本舞台、花道に豪華な衣装を纏った出演者たちが登場。そのさまは夢夢しいことこの上なし。
これは、日本物レビューの幕開きで多く用いられる「チョンパ」という手法。一瞬にして、劇場空間を煌びやかな“日本物絵巻”の世界へ誘います。こうした日本物レビュー独特の“様式美”は、随所にちりばめられています。脈々と受け継がれた伝統とその時代に合った試みが融合し、新たな歴史を刻む……。こうして今日の宝塚歌劇の日本物レビューが存在し得るのです。
ここに注目!
今回の『雪華抄』でも、お馴染の慶長衣装の若衆や娘らが居並ぶ“チョンパ”で華やかにスタート。宝塚歌劇の男役ならではの思わず溜息が出てしまう若衆姿や、青天の鬘に着流しスタイルの“粋”な美しさは今作でも健在!
二、“究極の美”を細かいディテールで
そんな宝塚歌劇の日本物レビューの醍醐味は“究極の美”。豪華絢爛な着物を身に纏い、優美に舞い踊る出演者を観るだけでも、その美しさにうっとり酔いしれること間違いなしです。出演者のパフォーマンスはもちろん、衣装、装置を含めた空間演出のディテールまで、その見どころの多さは一度では見尽くせないほど。
ここに注目!
今作の衣装デザイン・監修は、国際的に活躍するファッションデザイナー・丸山敬太氏が担当。彼が紡ぎ出す、現代的な中にも古き良き日本の美を見事に表した独自のデザインは、宝塚歌劇の日本物レビューに見事にマッチ。見るだけでも心躍る衣装の数々は、作品のテーマである花鳥風月、日本の四季の美、そしてスターたちの輝きを最上級に映し出しています。
三、緩急に富む展開で魅了する
「日本物レビュー」というだけで、“何だか難しそう”“興味はあるけど敷居が高そう”と、なかなか観劇に至らなかった方も多いのではないでしょうか。実は、日本物レビューは「起承転結」がはっきりしていて思いのほか単純明快! 初心者の方にこそ、ぴったりな演目なのです。
場面ごとのテーマは至ってシンプル。だからといって、決して平坦ではなく、寧ろ場面ごとに緩急に富んでいて、その展開から目が離せません。時には、一糸乱れぬ群舞の迫力や総踊りの華やかさで魅せ、時には、ストーリー性に富んだ場面を、芝居と歌、踊りでドラマティックに魅せることも。
日本古来のテーマや古謡、所作などを織り交ぜつつ、どこか懐かしさを感じる親しみやすいモチーフと、新鮮な表現の場面展開によって、日本舞踊の所作や決まり事などを修得していなくても、すっと作品に入り込むことができます。
ここに注目!
紀州の伝説として有名な「安珍清姫」をモチーフにした“秋から春”への場面は目玉の一つ。歌舞伎の「娘道成寺」といえば、ご存知の方もいらっしゃるのでは? 芝居心のあるトップコンビが演じますので、見応えのある、ドラマティックな仕上がりになっています。舞台上での衣装の早替わりである、歌舞伎舞踊の定番「引き抜き」の一種「ぶっかえり」もお見逃しなく!
四、和のテイストを洋楽で魅せる
宝塚歌劇の日本物レビュー最大の特徴、それは、和のテイストを洋楽で表現すること。本来、三味線の音色や“間”で舞い踊る日本舞踊を、宝塚歌劇では洋楽、オーケストラで伴奏し、独特の華麗な世界を創りあげています。
振付も、本格的な日本舞踊から、ダンス風にアレンジされたものまで、シーンにより多彩に表現されます。
また、和と洋を融合させて発展してきた宝塚歌劇の日本物レビューの特徴的な楽曲として、「すみれのボレロ」や「さくら幻想曲」などが有名です。前者は長く親しまれている宝塚歌劇の楽曲の一つ「すみれの花咲く頃」を、後者は日本古謡「さくらさくら」を、ボレロ変奏で日本舞踊を踊るものです。ボレロのアレンジは、洋物ショーでもおなじみですが、日本物レビューでも、特に盛り上がる総踊り場面での定番曲として使用されることがあります。この絶妙な“和と洋”のコラボレーションにより、日本人の魂を刺激し、ボレロに特徴的な終盤に向けてのテンポアップと相まって、高揚感はさらに高まります。
音楽においても、そのさまざまなリズムと音色、表現の工夫によって新鮮な化学反応をもたらしてきた、宝塚歌劇の日本物レビュー。ここでしか得ることができない心躍る感覚を、ぜひ劇場でお楽しみください。
ここに注目!
今作のオリジナル楽曲は、玉麻尚一先生が作曲、演出の原田諒が作詞を手掛けています。出演者の歌声に加え、古から続く日本の四季と自然の美しさを見事に描く“旋律”と、それを繊細に表現する美しい日本語の“詞”にもぜひご注目ください!
宝塚舞踊詩『雪華抄(せっかしょう)』は、“春夏秋冬”“花鳥風月”といった日本ならではの“趣”がテーマ。“梅”からはじまり“桜”で締める。この季節の移ろいを、格調高い正調な日本物レビューでありながら、いつもとはひと味もふた味も違う上質な世界でお楽しみいただけるはずです。宝塚歌劇だからこそ成し得る舞踊絵巻、若手演出家・原田諒の美的感覚が冴え渡る、贅沢な夢の世界へ……。ぜひ劇場で、お客様ご自身の目でお確かめください!