『凱旋門』の魅力
『凱旋門』初演を振り返る
『凱旋門』は、緻密なドラマ構成や台詞の秀麗さを持つ作品を創り出す柴田侑宏と、ドラマティックなステージングで観客を魅了し、独創的な舞台を創り上げる謝珠栄の作・演出作品です。2000年6月に雪組により宝塚大劇場にて上演された『凱旋門』は、好評を博し、翌年2001年8月に博多座にて再演されました。
そして今回、望海風斗率いる雪組に、専科から轟悠を加えたメンバーで名作の再演に挑みます。
ミュージカル・プレイ『凱旋門-エリッヒ・マリア・レマルクの小説による-』
2000年・2001年雪組公演 ■主演…轟 悠、月影 瞳
第二次世界大戦前夜のパリ。風雲迫る中でも毅然として起つ凱旋門と、シャンゼリゼの周辺で起こる激しい人間のドラマを、シャンソンをモチーフにした音楽を絡めながら綴った作品。不穏な時代に生きる人々の心情が丁寧に描かれ、主人公の心の葛藤や揺らぎ、虚無感などを繊細かつ熱く演じた轟悠が文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞。“傑作”ミュージカルとの呼び声が高く、今回、18年ぶりの待望の再演となります。
演出・振付 謝珠栄が語る“初演の思い出”
舞台稽古の時間がすごく足りなかったのを覚えています(笑)。位置決めも出来ないまま、最後の通し稽古に入ったにもかかわらず、轟さん、香寿たつきさんをはじめとする出演者の皆さんが完璧に演じてくれて、さすがタカラヅカだなと感心しましたね。大劇場という専用の劇場を持っていることの強みで、劇場の特性も含めた見せ方のすべてを把握していて、とても真面目に取り組んでいる彼女達だからこそ立派な作品が出来たのだと思います。
今回の再演では、初演でも亡命者で外科医のラヴィックを演じた轟悠と、歌唱力・表現力に定評のある雪組トップスター・望海風斗を中心に、新たな演出を加えて上演します。
寺田瀧雄が手がけた「雨の凱旋門」をはじめとする名曲に彩られた、心揺さぶる雪組公演『凱旋門』にどうぞご期待ください。
柴田侑宏×謝珠栄 作品紹介
1998年月組公演『黒い瞳』で初めてタッグを組んで以降、数々の名作を生み出してきた二人の作品は再演を重ねるものが多く、その度に高い評価を得てきました。ここでは、時代が流れても変わることのない人間の心の機微、心に深く刻まれる印象的な台詞と登場人物の心情を、表情や仕草、ダンスなどで巧みに表現した二人の作品をご紹介します。
ミュージカル・プレイ『黒い瞳』-プーシキン作「大尉の娘」より-
1998年月組公演 ■主演・・・真琴 つばさ、風花 舞
2011年雪組公演 ■主演・・・音月 桂、舞羽 美海
1773年、帝政ロシア。陸軍少尉ニコライは赴任途中に大吹雪に遭い、謎の男に助けられる。この男が、反乱の機会を窺うコサックの首領プガチョフとは、この時まだ知る由もなかった…。任地に辿り着いたニコライを待ち受けるのは、どんな未来か。連隊長ミロノフ大尉の娘マーシャとの恋、同僚との確執、敵であるプガチョフとの友情…激動の時代に生きる人々の“心”を描いた。
ミュージカル・プレイ『激情』-ホセとカルメン-
1999年宙組公演 ■主演・・・姿月 あさと、花總 まり
2010年星組公演 ■主演・・・柚希 礼音、夢咲 ねね
2016年月組公演 ■主演・・・珠城 りょう、愛希 れいか
プロスペール・メリメの「カルメン」をモチーフに、ドン・ホセが“宿命の女”カルメンに翻弄され、彼女への愛ゆえに堕ちていく波乱に満ちた生きざまを情熱的に描き出したミュージカル作品。スペインを舞台に人間の愛憎を華麗に描き上げ、原作者のプロスペール・メリメを登場させるなど、意欲的な試みの「カルメン」と評された。また、再演・再々演では新たな演出も盛り込まれた。
ミュージカル・ロマン『ガラスの風景』
2002年星組公演 ■主演…香寿 たつき、渚 あき
1960年代、北イタリア湖畔のリゾートでは、小社交界のパーティーが行われていた。注目は、新住人の青年紳士ジョーイ・バクスター。その日、パーティー会場・シモンズ家の次女クララに殺人容疑がかけられる事件が起こる。妹の容疑を晴らそうとする長女ローラと、彼女に魅かれるジョーイの大人の恋。殺人事件に端を発した小社交界の人間模様をつぶさに描いた。
ミュージカル・プレイ『黒豹(くろひょう)の如(ごと)く』
2015年星組公演 ■主演…柚希 礼音、夢咲 ねね
第一次大戦中、海軍大佐アントニオ伯爵と、侯爵令嬢カテリーナは恋仲だった。しかし大戦後、バルセロナで再会した二人の境遇は一変していた。カテリーナは父の窮地を救うために結婚したが、夫は病死。一方、アントニオは、スペイン艦隊参謀として多忙を極めていた。が、この再会から思わぬ運命の渦に巻き込まれていく…。数奇な運命を辿る二人を中心としたドラマティックなストーリーを展開した。
柴田侑宏と謝珠栄が描き出す作品は、観客の心を掴み、揺さぶり、震わせ、多くの共感を呼んできました。雪組公演『凱旋門』で、ぜひこの“世界観”を体感してください。