制作発表会レポート
8月20日(火)、宝塚歌劇月組公演 日本オーストリア友好150周年記念 UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』の制作発表会が行われました。
制作発表会には、公演にご協賛いただく、UCC上島珈琲株式会社 代表取締役会長 上島達司様、ウィーン劇場協会 代表取締役 フランツ・パタイ氏、ウィーン劇場協会 ミュージカル芸術監督/脚本・クリエイティブ デベロップメント クリスティアン・シュトゥルペック氏、脚本・アイディア ティトゥス・ホフマン氏、宝塚歌劇団理事長 小川友次、宝塚歌劇団演出家 齋藤吉正、月組トップスター 珠城りょう、月組トップ娘役 美園さくらが登壇しました。
ウィーンの大ヒットミュージカルに、個性豊かな月組が挑む
「I AM FROM AUSTRIA」は、「エリザベート」「モーツァルト!」など数々の大ヒットミュージカルを世に送り出したウィーン劇場協会が、2017年にオーストリアそのものを題材として制作したミュージカル。オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒ氏が綴る名曲の数々に乗せ、コメディー要素を散りばめつつ「故郷」や「家族」をテーマに描いた、華やかな作品です。
珠城りょう率いるエネルギッシュな月組メンバーが、この話題作を日本初上演いたします。
ひと足早くウィーンの風情漂う会場
制作発表会は『I AM FROM AUSTRIA』のパフォーマンスから始まりました。
軽快なリズムに乗って登場した、ジョージ・エードラー役の珠城りょうが、「NIX IS FIX(全てが可能)」を披露。会場を一瞬にしてハッピーなウィーンミュージカルの世界に誘います。
続いてエマ・カーター役の美園さくらが登場すると、主題歌「I AM FROM AUSTRIA」をしっとりと歌い、やがて珠城とのデュエットへ。ソフトで美しいメロディーは、まさに音楽の都で生まれた珠玉の旋律。作品への大いなる期待に胸を膨らませた会場からは、万雷の拍手が送られました。
心潤す数々のナンバーに乗せて描かれる、ハートフルなウィーンミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』に、個性豊かな月組メンバーが挑みます。どうぞご期待ください!
- 制作発表会 ムービー
宝塚歌劇団とは『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』以来縁の深い、今作のオリジナル・プロダクション、ウィーン劇場協会、ならびに作家から、『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』の上演にあたって、温かいコメントが寄せられました。
宝塚歌劇団とのさらなる友情関係を
ウィーン劇場協会 代表取締役
フランツ・パタイ氏(Franz Patay)
ウィーン劇場協会は、ウィーン市に所属する最も大きな会社のひとつで、オペラハウスとミュージカル劇場をそれぞれ2つずつ所有しています。それらの劇場で、一年間にオペラは約100回、ミュージカルは約500回上演されています。海外作品の上演に加え、私たち自身で新しい作品の制作も手掛けており、「エリザベート」「モーツァルト!」「ダンス オブ ヴァンパイア」「貴婦人の訪問 -THE VISIT-」など、日本でもすでにお馴染みの作品もございます。これらの作品はこれまで21ヶ国で上演され、2,600万人のお客様がご観劇くださいました。
この“サクセスストーリー”は、23年前に「エリザベート」を海外では初めて宝塚歌劇団が上演してくださったことに始まります。つまり、ウィーン劇場協会と宝塚歌劇団との友情関係は、すでに四半世紀近く続いていることになるのです。今回の「I AM FROM AUSTRIA」の上演を通して、この関係がより一層深まることを心より祈っております。
150年の友好関係にある両国ですので、オーストリアでは寿司などの日本食は有名で、非常に人気があります。同じように、「ドナウ川のさざ波」という曲は、日本の多くの方々がご存知なのではないでしょうか。今作で歌われる「I AM FROM AUSTRIA」も日本の皆さまに広く知っていただき、愛されるよう、願っております。
大きな感動に満ちた特別な作品
ウィーン劇場協会 ミュージカル芸術監督/脚本・クリエイティブ デベロップメント
クリスティアン・シュトゥルペック氏(Christian Struppeck)
「I AM FROM AUSTRIA」は、オーストリアという国に対する愛情溢れるオマージュであり、ユーモアと大きな感動に満ちた作品です。自分の故郷がどこなのか、自分の帰る“家”はどこなのかという、重要な問いをテーマに、オーストリアと関係性の深い新たなミュージカルを創作することは、我々にとって大変特別なことでした。
ウィーンを舞台としたこの物語の音楽は、最も美しく、とても著名なオーストリアのポップソングの数々で構成されています。
その音楽を創ったのは、オーストリアのレジェンドとも言えるラインハルト・フェンドリッヒ氏です。ゴージャスで感動的なメロディーと、輝かしく薫り高い歌詞を持つ力強い楽曲の数々は、作品を大きな成功へと導いてくれました。ウィーン公演では2年間にわたり連日満席の状態が続き、合計50万人以上のお客様に観ていただいております。こうして、「I AM FROM AUSTRIA」はウィーン劇場協会が制作したミュージカルの中でも最も成功した作品のひとつとなりました。
そして、これから日本で歩みを継続することは大きな誇りであり、宝塚歌劇団が我々に厚い信頼を寄せ、日本で初めて上演してくださることを大変名誉に感じております。スタッフおよび出演者の皆さま、そして何より、心より敬愛する日本の観客の皆さまが、「I AM FROM AUSTRIA」に大きな喜びを見出し、お楽しみいただけますよう、心より祈念いたします。
テーマは、アイデンティティの探求と発見
脚本・アイディア
ティトゥス・ホフマン氏(Titus Hoffmann)
この作品は、軽快でユーモアに溢れ、しかも観客の心に深く触れる、ウィーンオペレッタの伝統にのっとりつつもモダンな物語を、という意図で制作されました。そして、楽曲の入る箇所を先に決め、いわば“後付け”の形で筋を練り上げ構築するという特殊な手法がとられましたが、そのプロセスは非常にエキサイティングなものでした。既存の曲が、まるでこの物語のために作曲されたかと感じられるような工夫を凝らしています。
完成までには、国際的に活躍するクリエイティブチーム、そして選び抜かれた俳優たちとともに、2回のワークショップを開催しました。
そこで推敲を重ね、練り上げたうえで、9週間にもわたるリハーサルを行い、3年半の歳月を費やして、ようやく2017年9月、ライムント劇場において陶酔的とも言える初日を迎えるにいたりました。
実在するものと見せかけのものとを明確に見分けることがますます困難になっている今の世界において、独自のアイデンティティの探求と発見をテーマに創った物語を、世界的にも有名な宝塚歌劇団によって引き続き語られることを、大変嬉しく、名誉に感じています。先ほど本来ウィーン方言で歌われていた曲を、珠城りょうさんと美園さくらさんが日本語で歌われましたが、とても自然で、大きな驚きと感動を覚えました。このお二人ならきっと素晴らしい舞台を創りあげてくださることと確信しております。
パフォーマンスの後、月組の珠城りょう、美園さくらが意気込みを語りました。
月組トップスター 珠城 りょう【ジョージ・エードラー】
宝塚歌劇がウィーン劇場協会制作のミュージカルを上演するのは『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』に続いて2作目ということで、とても身の引き締まる思いです。今回の『I AM FROM AUSTRIA』は、月組でも上演させていただいた『エリザベート』とは、世界観や雰囲気、そして楽曲も全く違いますので、また新たな挑戦の機会を与えられたことを、大変光栄に感じております。先日、ウィーンの劇場でこのミュージカルを拝見した時、ウィーンの皆さんに非常に愛されている作品なのだと肌で感じました。そんな作品を上演することは、大きな責任とともに、プレッシャーを感じますが、齋藤先生にご指導いただきながら、月組の仲間と一緒に、大切に、丁寧に創りあげていきたいと思います。
私が演じるジョージは、ホテルの御曹司ではありますが、内面的にはごく普通の青年で、両親との確執を抱えています。そんな彼の一番のテーマは、“成長”であり、“自立”なのではないかと感じています。美しい音楽に乗せて紡がれるのは、恋愛だけではなく、家族愛、友情、そして祖国に対する愛です。必ず何かが心に残る温かい物語ですので、大人世代だけではなく、SNSなどが普及する“今”を舞台にした今作と同じ時代を生きる若い世代の方々にも、是非ご覧いただきたいですね。
今の月組は、一人ひとりが個性を発揮しながら仲間のことも思いやることができる、大変充実した状態にあると感じます。月組がこの作品をお届けする意味も考えながら、作品からメッセージを感じ取り、皆さまにお伝えできれば嬉しく思います。
月組トップ娘役 美園さくら【エマ・カーター】
日本とオーストリアの友好150年という記念すべき年に、このような素晴らしい作品に携わることができ、とても光栄に思っております。私もウィーンの劇場で観劇させていただきましたが、今までに体感したことのないような、華やかで、それでいてスタイリッシュなパフォーマンスに圧倒されました。その感動を余すところなく日本の皆さまにお届けできるよう、精一杯お稽古を頑張ってまいりたいと思います。
私が演じさせていただくエマ・カーターは、ハリウッド女優として華やかな世界に生きているからこそ、孤独や苦悩を抱えている女性です。そんなエマが美しい故郷に戻って来た時に感じる心の解放を、素晴らしい音楽に乗せて、繊細に表現できるよう努めてまいります。今置かれている場所で、それぞれが気持ちを育てていく過程を大切に想うという歌詞は、多くの方に共感していただけると思いますので、しっかりと気持ちを込めながら、大切に歌わせていただきたいです。
独自の目線でオリジナリティ溢れる作品を数多く送り出してきた、演出家・齋藤吉正。彼の精緻かつ新鮮な演出により宝塚歌劇の舞台で繰り広げられる、ウィーン発の新たな大ヒットミュージカル作品に注目が集まります。
作品のメッセージ、オーストリアの文化を日本に伝えたい
齋藤 吉正(潤色・演出)
ウィーンでとても人気のあるこの作品のことは存じ上げていましたが、まさか宝塚歌劇で上演されるとは思っておりませんでした。日本とオーストリアの国交が結ばれて150年、そして宝塚歌劇105周年という記念すべき年に、この公演の演出を担当させていただけることに、誇りを感じると同時に、責任を痛感しております。作品のタイトルでもあるナンバー「I AM FROM AUSTRIA」には、オーストリアの歴史、文化が描かれ、“オーストリア第二の国歌”と親しまれています。この曲に代表される、作品が持つメッセージや、オーストリアの文化を、今回、日本の皆さまにお伝えできればと思っております。
日本でも広く知られている、「エリザベート」「モーツァルト!」等々、ウィーン劇場協会作品の多くはウィーンオペレッタの歴史を模範とし、メロディーで台詞が綴られますが、「I AM FROM AUSTRIA」はそれらとは形式が異なります。素晴らしい楽曲とウィットに富む台詞が合わさった、大変楽しい作品ですので、老若男女すべての皆さまに喜んでいただけると確信しています。
月組は、『ME AND MY GIRL』『1789 -バスティーユの恋人たち-』『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』などを上演し、海外ミュージカルに強い組という印象があります。また、月組のチームワークの良さ、温かさに、この作品の持つアットホームな雰囲気と共通するものを感じますので、頼もしいリーダーに成長した珠城りょう率いる現在の月組なら、きっと良い作品に仕上げてくれることでしょう。
◆宝塚版『I AM FROM AUSTRIA』の演出について
宝塚歌劇の公演では、ご存知のとおり大勢の出演者が出演しますが、今回は特にレビューシーンが豊富な作品ですので、一人ひとりの出演シーンも多くなります。そして、美術、衣装、セットも宝塚歌劇ならではのものになると思います。例えば、ウィーン版ではLEDを駆使した大きなケーキ型のセットがベースとなっていますが、盆やセリなどを活用し、宝塚らしいと感じていただけるよう、流麗な転換を意識して創ってまいります。
また、このミュージカルが宝塚歌劇によく似合うと考える要素として、ストーリーの面白さもさることながら、ミュージカルナンバーがふんだんに使われていることが挙げられます。バラエティ豊かなナンバーに彩られた楽しいお話の後には、宝塚歌劇ならではの華やかなフィナーレをご用意していますので、そちらも是非楽しみにしていてください。
10月の初日を目指し一生懸命努めてまいりますので、どうぞご期待ください。