制作発表会レポート
9月27日(金)、宝塚歌劇雪組公演 ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』の制作発表会が行われました。
制作発表会には、宝塚歌劇団理事長・小川友次、宝塚歌劇団演出家・小池修一郎、雪組トップスター・望海風斗、雪組トップ娘役・真彩希帆、彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢が出席しました。
傑作映画、世界初のミュージカル化!
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は、セルジオ・レオーネ監督による1984年公開のギャング映画で、急成長を遂げる20世紀のアメリカを舞台に、ノスタルジックに展開される友情と絆、そして恋が描かれた作品です。この作品に触発されつづけてきたという演出家・小池修一郎が、確かな実力を備えた望海風斗率いる雪組とともに、世界初のミュージカル化に挑みます。
まるで映画そのもの、ダンディーでゴージャスな世界観!
制作発表会は、出演者が繰り広げるドラマティックなパフォーマンスから始まりました。
暗闇に包まれた舞台中央に、ひと筋のライトが差し込むと、主人公ヌードルスに扮した望海風斗のシルエットが浮かび上がります。力強さのなかに、哀愁をにじませた佇まいは、裏社会を生きてきた彼の過去を物語り、会場は一気に作品の世界へと引き込まれます。次に、同じ世界に属する親友マックス役の彩風咲奈が加わり、久々の再会を喜び合う場面に。続いて望海は、ブロードウェイのスターとなった初恋の女性デボラを演じる真彩希帆を迎え入れ、どこか切なさも感じさせる、ムードたっぷりのデュエットダンスを披露します。
曲調が変わり、バー「スピークイージー」の歌姫キャロルに扮した朝美絢が登場すると、マックスとキャロルのカップルによる、大人の色気漂うダンスシーンに。そして、一同の運命を大きく狂わせることになるジミー役の彩凪翔が、4人の心を掻き乱すように舞台上に駆け込みます。最後に5名が勢揃いすると、作品世界を充分に体現した圧巻のパフォーマンスに、会場からは惜しみない拍手が贈られました。
望海風斗を中心に充実期を迎えている雪組が、2020年の幕開けにお届けする話題のミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』に、どうぞご期待ください!
- 制作発表会 ムービー
パフォーマンスの後、宝塚歌劇団演出家の小池修一郎、雪組トップスター・望海風斗、雪組トップ娘役・真彩希帆、彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢によるトークショーが行われました。雰囲気たっぷりのパフォーマンスから一転、時には笑いも起こる、和やかな雰囲気のなか、作品にかける思いを語りました。
司会:まずは、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を宝塚歌劇で上演することになった経緯を教えてください。
小池:今回、望海風斗が主演ということで、どんな作品がいいだろうかと考えたときに、私自身が是非とも彼女に演じてもらいたいと思ったのが、この作品でした。もともと原作映画の大ファンで、この作品にインスパイアされて創った作品もいくつかあるほどです。しかし今回は、嬉しいことに、この映画そのものをミュージカル化したいという願いを実現できる運びとなりました。
司会:宝塚歌劇版の見どころはどんなところでしょうか?
小池:望海の歌唱力と、それに追随する真彩希帆、そして雪組のレベルの高さを最大限に活かしたミュージカルにしたいですね。そして、ダークな人物のストイックさは、男役の美学と合致しますので、その点でも魅力的な作品になるのではないかと思います。つまり、普通の社会において活躍している人物よりも、ヌードルスのような裏街道を歩いている人物を演じさせた時に、より輝く類いの魅力です。男役の完成形を見せてくれている今の望海なら、華やかさやエネルギッシュな面だけではなく、もうひと味プラスした、人生のアイロニーや哀愁といったものも出せると思いますし、それこそが役の魅力になると期待しています。
司会:映画は登場人物の少年期から、青年期、実年期までも描かれていますよね。
小池:望海にはヌードルスの少年期からすべて演じてもらうつもりです(笑)。
望海:宝塚歌劇では、少年時代を違う演者が演じることが多く、私も小池先生の『アデュー・マルセイユ』(2007年花組)で主人公の少年時代をさせていただきましたよね。今回は通して演じますから、役として積み重ねた絆や関係性を表現するうえで、より気持ちもつくりやすくなるのではないかと思っています。
司会:ヌードルスはどのような人物だと思いますか?
望海:一言で言うと“静かな人”でしょうか。すべてを自分の中で消化する人ですね。しかし、その裏には色々な人との関係性によって背負っているものがあり、そこからにじみ出る哀愁が、彼の魅力に繋がっているのではないかと感じました。現代のように情報も簡単に得ることができなかった時代だからこそ、目と目を合わせてのやりとりや、雰囲気から察して感じ取り、理解しあうことが魅力なのだろうと思います。きっと今の時代の方にも素敵だと感じていただける部分ですので、私もこのヌードルスというひとりの人間を、周りの登場人物たちとの関係性を大切に演じたいです。
普通に見えて普通ではないヌードルスの大物感のようなものを、タカラヅカ生活17年で培ってきたものと重ねて出せるよう、頑張ります。
トークショー<後編>では、出演者の声を中心に、映画を観たときの感想を交えながら、役作りやこの作品への思いなどをお届けします。
司会:雪組の皆さんは映画をご覧になって、どのような感想を持たれましたか?
望海:これまでに、マフィアを描いた作品には出演させていただいたことがあり、この映画も勉強のために観ておりました。哀愁や、一筋縄ではいかない友情や恋愛といった、大人の世界観にとても惹きつけられました。小池先生もこの映画が好きだとお聞きし、いつか宝塚歌劇で舞台化することがあれば、ぜひ出演したいと考えていましたが、今回、その夢が叶いますことを、とても嬉しく感じております。
真彩:初めて映画を拝見した時、デボラの瞳がとても綺麗で、どこかミステリアスだと感じたことが、印象に残っています。きっとそれは、少女が大人の女性へと成長していく、狭間の時期特有の雰囲気なのではないかと思いますので、私もしっかりと表現していきたいです。
小池:宝塚歌劇版では、デボラのミュージカル女優としての面をより拡大して、自分を持っている魅力的な女性として描きます。
司会:より高みを目指すような女性ですね?
小池:そうです。19世紀末から20世紀初頭には、アメリカという国で這い上がりたいと思って移り住んだ移民がたくさんいました。その人たちの中から多くの芸術家が生まれ、アメリカの一つの文化を創っていくのですが、そのためには大きな苦労が伴い、それ故に、裏街道に逸れてしまった人もたくさんいた、というわけです。
彩風:ギャングの世界を描いていますが、友情や愛情など、人と人の繋がりが詰まっており、その美しい世界観もあって思わず見入ってしまいました。この素晴らしい作品に出演させていただけることを大変幸せに思います。映画の中で特に印象的だったのは、何度も出てくる、マックスがヌードルスを無言で見つめるシーンです。その表情、その心、その瞳の中に、どんな気持ちが潜んでいるのかを考え、マックスの心を大切に演じてまいります。
望海:悪役をやってみたいと以前から言っていたよね?
彩風:はい。ギャング役の先輩の望海さんに少しでも近づけるよう(笑)、しっかりお稽古したいと思います!
彩凪:男性はダンディーで女性は色っぽく、というカッコいいこの作品の世界観に、とても惹かれます。このカッコいい作品に存在できることを、大変嬉しく思っております。ジミーは、意志がしっかりあって、大きな力にも屈しない強さを持っています。また、時代の流れとともに、自身の立場と心境が変化していくさまが、とても魅力的な人だと感じました。
小池:組合運動をしていた実在の人物がモデルで、表と裏の顔を持つ面白い男なので、どう演じてくれるのか楽しみですね。
朝美:ダンディーな男性たちの中で、綺麗なドレスを着た女性の存在がとても華やかで、色気たっぷりに、且つ強く生きているという印象がありました。小池先生の熱いご指導のもと、強さの中にも繊細さを持った女性を演じられるよう、1月の初日まで頑張ってまいります。
小池:キャロルは色気が大事になってくる役ですが、朝美は『グランドホテル』で演じたラファエラという女役が非常に良かったので、期待しています。
司会:衣装のお話が出ましたが、この時代のファッションも楽しみです。舞台ではどのような衣装が登場しますか?
小池:やはり、男役はスーツやタキシードですね。娘役は今日の制作発表で着ているドレスのような雰囲気ですが、いろいろとバリエーションを考えているので、ビジュアルも楽しんでいただけると思います。
真彩:初めてお衣装を着させていただいた時に「なんて繊細なドレスなのだろう」と感動しました。この時代のドレスやアクセサリーは、ラインはシンプルでありながらディテールが美しいので、実際に舞台で着るのが楽しみです。よく“男役は背中で魅せる”と言われますが、娘役である私もこのような背中が大きく開いたお衣装で、背中を追いかけたくなるような女性像を目指したいです。デボラの強さと柔らかさを表現できるよう、頑張ってまいります。
司会:この作品は2020年の宝塚歌劇の幕開けを飾ります。
望海:一年の初めにこのような作品に挑戦させていただけることがとても楽しみですし、良いスタートが切れるのではないかと感じています。
小池:快進撃を続けている雪組ですが、望海風斗はとても勤勉実直な人なので、その背中を見ている雪組の生徒たちも、真面目に頑張ってくれると思います。今回は思いっきりスタイリッシュに魅せてほしいですね。
望海:はい、男役はタキシードでダンディーに、娘役はドレスで華やかに、その中にそれぞれの美学を詰め込んで、初日を迎えたいと思います。雪組のみんなとは、これまで多くの舞台で様々な関係性を演じてきた信頼感があるので、良い作品にできると信じています。どうぞよろしくお願いいたします!
演出家の情熱を受け止めた雪組出演者たちが意欲的に挑む『ONCE APON A TIME IN AMERICA』に、どうぞご期待ください!