中村一徳が語る
『Music Revolution!』の見どころ
海外ミュージカルの演出、そして伝統的な華やかなショーの作り手としても、幅広い作品で実力を発揮する演出家、中村一徳。雪組では前作『ファントム』も担当し、今の雪組の魅力を知り尽くした演出家として、今回のショーではどう魅せるか。今作の見どころを聞きました。
音楽の起源を探り、現代の音楽を楽しむ
音楽の起源をテーマに選んだきっかけ
クラシック、ジャズ、タンゴ、ラテンなど、音楽には様々なジャンルがあり、それぞれに顕著な特徴があるわけですが、それらの起源をさかのぼってみると、革命であったり、アフリカからアメリカに渡ったリズムがジャズとなったり、また様々な国の人々の影響を受けてタンゴが生まれたり…と、人間が背負っていた歴史や感情に辿りつきます。言い換えれば、音楽の起源とは、人類のエネルギーそのものではないでしょうか。多彩なジャンルの新しいスタイルの音楽を楽しめる現代ですが、一度音楽の「原点」について知り、深く触れてみると面白いのではないかと、興味を持ったことが始まりです。
タイトルにある“Revolution”とは
音楽の起源を振り返り、発祥当時の音楽から今の形への変化を比較したときに、現代の人々の感性が加わるとこんなにも変化するのか!と感嘆させられることがあるのですが、その表現として、革命を意味する“Revolution”が思い浮かびました。例えば今回は、皆さんがよくご存知のクラシックの曲を現代風にアレンジして、本来とは違う形で使ってみたいと考えています。現代人による現代の感覚で、既存の音楽の面白さに触れてみようという趣向です。
ショーの構成と見どころ
幕開きは“革命”をコンセプトに、さらに進化し、新境地を切り拓いていく雪組の姿をお見せできればと考えています。また、革命の歴史を持つ南米を背景にした、少し芝居テイストを入れた場面もあります。その他にも、ジャズの起源やクラシックの場面などを考えていますが、クラシックに関してはアレンジを駆使して2場面ほど創りましたので、楽しみにしていただけたらと思います。
今の雪組がショーで巻き起こす“音楽の革命”
雪組トップスター・望海風斗について
昨年、雪組大劇場公演『ファントム』を担当し、望海のトップスターとしての実力を目の当たりにしました。その後の主演作、東急シアターオーブ公演『20世紀号に乗って』でも、芝居での彼女の魅力が十分に発揮されていることを実感しましたし、お客様にもとても素晴らしい評価をいただけたと伺っています。彼女はショー作品においてももちろん、男役としての格好良さを存分に生かすことができるスターですので、今回も、その情熱的な個性と素晴らしい歌声、ダンスを、うまく融合できればと思っています。
雪組トップ娘役・真彩希帆について
真彩は、歌の巧さはもちろんですが、ダンスにおいても、ダンス力とその持ち前の明るさで魅了することができる娘役です。芝居風のナンバーや中詰めでソロも歌ってもらいますので期待しています。
そして、望海とのコンビネーションの美しさも大切にしたいので、デュエットもたっぷりご用意しています。この二人だからこそ醸し出せる、コンビとしての華やかさも、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
彩風咲奈について
彩風は、『ファントム』のジェラルド・キャリエールもそうでしたが、近年は特に演技に重みを感じさせ、頼もしい存在になってきました。そんな彼女には今回、ジャズのメロディーに乗って踊る、芯になる場面を用意しています。もともと、ショースターとしての魅力を持ち合わせた男役ですので、正統派男役としての真骨頂ともいえる場面を創り上げてほしいと思っていますし、彼女ならやってくれると確信しています。
雪組に揃う魅力的なスターたちについて
まず、彩凪翔は、彼女特有の華やかさを持った男役です。味付けの違ういくつかのシーンに出てもらいますので、彼女の持ち味を生かしつつも新たな魅力をもって、作品全体の幅を広げてくれるのではないかと期待しています。また、朝美絢には現代風にアレンジしたクラシックを歌ってもらいますが、その次のシーンの望海の歌に繋がる役割を担いますので、どのように魅せてくれるのか楽しみです。
雪組を知り尽くした演出家、と称されて
2017年の『Dramatic“S”!』や全国ツアー公演の『“D”ramatic S!』、直近では『ファントム』と、最近雪組を担当させてもらうことが多かったからでしょうか。私としてもよく知り尽くしているつもりです(笑)。
今の雪組は、一人ひとりが持っている実力に加えて、人間性がとてもよく出ている組だと思います。同じ曲でも、望海が歌ったからこんな風に伝わった、真彩が歌ったからこういう風に感じる、といったように、それぞれの個性で印象を変えられるスターばかりですので、どう演じ、どう創り上げてくれるか、彼女たちのこれからをお客様にもお楽しみいただけたらいいですね。
出演者自身の持つ個性を感じていただきたい
ショーを創るうえでのこだわり
ショーが芝居と明らかに違うのは、出演者が、役名ではなく、芸名で光り輝ける点だと思います。もちろん、芝居には芝居の難しさがありますが、ショーでは、役柄の力を借りずに自分本来の姿で舞台に取り組まなければなりません。ですから、出演者が良い意味ですべてのものを削ぎ落して“芸名が歌い踊る”作品になるように心掛けています。
宝塚歌劇の魅力は、団体でありながら全く違った個性が刺激し合い、ぶつかり合うことで作品を創り上げるところにあると思います。この『Music Revolution!』でも、中心メンバーだけではなく、舞台に立つ全員が個性を発揮して輝いてくれることでしょう。それをお客様に感じていただきたいですね。
お客様へのメッセージ
雪組生と、専科からの頼もしい出演者・凪七瑠海のエネルギーを結集し、心が昂り血が湧き上がるようなショーをお見せしたいと思っております。それは激しい場面だけでなく、静かな曲を使った場面でも同じことで、音楽の持つエネルギーを感じて、歌う人、踊る人がエネルギーを発揮することによってはじめて作品に命が吹き込まれるものだと思います。そういった部分を大切に、望海を中心とした充実の雪組の魅力を存分に、お客様へお伝えできればと考えております。ぜひ、劇場に足をお運びください。
【プロフィール】
中村一徳
大阪府出身。1988年宝塚歌劇団に入団。1994年、17世紀半ばの李氏朝鮮を舞台にした『サラン・愛』(花組)で演出家デビュー。『大上海』(1995年雪組)、『香港夜想曲』(1996年花組)と、アジアを舞台にした作品を発表。宝塚歌劇の伝統と現代的なシャープさが光るレビュー『プレスティージュ』(1996年月組)で宝塚大劇場デビュー。1999年には往年の名作レビューをリメイクした『華麗なる千拍子’99』(雪組)を担当。同名の名作映画をミュージカル化した『雨に唄えば』(2003年星組、2008年宙組、2018年月組)、小説「オペラ座の怪人」をもとにした『ファントム』(2004年宙組、2006年花組、2011年花組、2018年雪組)を手掛けた。近年は『Shining Rhythm!』(2012年雪組)、『Fantastic Energy!』(2013年月組)、『My Dream TAKARAZUKA』(2014年雪組)、『Melodia -熱く美しき旋律-』(2015年花組)などの、娯楽性の高い宝塚歌劇ならではの華麗なレビュー作品を多く生み出している。2017年に上演された雪組公演『Dramatic“S”!』に続き、同年全国ツアー版として望海風斗主演の『“D”ramatic S!』を担当、スターたちの魅力を存分に引き出す演出で好評を得た。