制作発表会レポート
1月22日(金)、宝塚歌劇花組公演 UCCミュージカル『ME AND MY GIRL』の制作発表会が行われました。
長年にわたり愛されるミュージカル『ME AND MY GIRL』が、大劇場公演としては8年ぶりに宝塚歌劇の舞台に登場します。この名作に挑むのは、トップスター・明日海りおを中心とする花組。制作発表会ではパフォーマンスを披露し、会場全体がハッピーな雰囲気に包まれました。
親しみやすくハートフル! 誰もが楽しめるミュージカル
『ME AND MY GIRL』は1937年にロンドンで初演、1646回のロングランを記録した大ヒットミュージカルです。宝塚歌劇では1987年に剣幸、こだま愛をはじめとする月組により初めて上演され、大成功を収めました。その後再演を重ね、中日劇場、博多座、梅田芸術劇場などでも上演。累計観客動員数118万人を誇ります。ロマンティックなラブストーリー、心躍る名曲の数々、タップダンスを駆使したダンスなどで綴られ、観劇後も温かい気持ちになれる名作です。
このたび、2008年の月組公演『ME AND MY GIRL』にて本公演でジャッキーを、新人公演で主役のウイリアム・スナイブスン(ビル)を演じた明日海りおが、満を持してビルに挑戦します。恋人サリー・スミスを演じる花組トップ娘役・花乃まりあと共に、どのような恋物語を見せるのか。また主要な5つのキャラクターを花組生が役替わりで演じる点も、ぜひご注目ください。
客席降りの「ランベス・ウォーク」で大いに盛り上がる
制作発表会は、ビル役の明日海りお、サリー役の花乃まりあによる主題歌「ミー&マイガール」からスタートしました。ビルとサリーのトレードマークとも言える衣装を身につけ、軽やかにステップを踏みながら名曲を披露します。サリーの手を優しくとるビルと、可愛い笑顔を見せるサリーの表情やしぐさから愛が溢れ、二人の歌声が心地よく重なります。
次に明日海が「愛が世界をまわらせる」を歌い、途中からジョン・トレメイン卿に扮した芹香斗亜が加わります。口髭をつけた芹香は、ときに渋めの表情も交え新鮮な印象。お酒に酔った二人が男同士の友情を見せながら、“愛がなければ 生きられない”と陽気に歌います。クルクルと表情を変える明日海はビルのお茶目な雰囲気をうまく醸し出し、最後にジョン卿の金時計を手にしてポーズをとると、ジョン卿は驚きの表情。これまた息がぴったりです。
最後は、明日海、花乃、芹香のほかに、花組の華雅りりか、羽立光来、朝月希和も加わり賑やかなナンバー「ランベス・ウォーク」に。明日海をはじめ花組生が客席にまで降りて、明るくランベスの下町スタイルを歌い上げます。会場が一体となる名ナンバーの楽しさを存分に伝え、温かくハッピーな『ME AND MY GIRL』の世界へと導きました。
続いて、宝塚歌劇団 理事長・小川友次、本公演にご協賛いただいているUCC上島珈琲株式会社 代表取締役会長・上島達司様、宝塚歌劇団 演出家・三木章雄、花組の明日海りお、花乃まりあ、芹香斗亜が登壇し、挨拶を行いました。
前向きに誰かを思う大切さを、きちんと伝えたい
脚色・演出 三木章雄
「1987年の初演では演出助手として参加していました。楽しいミュージカルを楽しくお伝えするために、いろいろな努力をされていた演出の小原弘稔先生の姿を見ていますので、今回も“楽しい作品をお届けする”という想いを持ち続けると同時に、いま絶好調の明日海りお演じるビルに大変期待しています。『ME AND MY GIRL』はとても楽しいミュージカルですが、ビルがいかにして自分のアイデンティティやルーツを発見していくかという側面もとても大切です。ビル、サリー、ジョン卿をはじめとして、互いに互いを思いやるという感情が様々に描かれていて、それがこの作品の素晴らしい点ですので、“前向きに誰かを想うことが大切なんだ”というメッセージが伝わる、楽しい作品になるようにつくっていこうと思います。」
ビルは今まで演じてきた役の中で一番理想に近い役
花組トップスター 明日海りお
「最初に出演いたしました『ME AND MY GIRL』(2008年・月組公演)では新人公演でビルを演じさせていただき、とても楽しかった思い出があります。ビルは今まで演じてきた役の中でも、一番理想に近い役です。ビルの温かくて芯が真っ直ぐなところ、サリーへの一途な愛、そして、彼のふざけているようでいて、本当は誠実なところが大好きでしたので、もう一度ビル役に出会うことができて、とても幸せです。今回は主要キャストの役替わりもありますので、お客様に何度でも足をお運びいただきたいです。」
大好きな憧れの作品。夢のような機会をいただき幸せ
花組トップ娘役 花乃まりあ
「『ME AND MY GIRL』は入団前から劇場でも観劇し、映像も何度も観るぐらい大好きな憧れの作品です。今回出演させていただくという夢のような機会をいただき本当に幸せです。いままで先輩方が演じてこられたサリーという素敵な女性のことを、しっかりと勉強して、この素晴らしい作品に携わらせていただく幸せを噛み締めて頑張ります。」
どのナンバーも楽しく、いまからお稽古が楽しみ
花組 芹香斗亜
「今回は役替わり公演ということで、ジョン卿とジェラルドの二役をさせていただきます。私は『ME AND MY GIRL』に出演させていただくのは初めてなのですが、今日少しパフォーマンスをさせていただいただけでも、どのナンバーも楽しく、袖から見ているのも楽しかったので、いまからお稽古が楽しみです。多くの皆様にたくさん観ていただけたら嬉しいです。」
花組出演者の明日海りお、花乃まりあ、芹香斗亜が、それぞれ意気込みを語りました。
明日海 りお【ウイリアム・スナイブスン(ビル)】
歌詞に込められた想いがにじみ出るビルを
「『ME AND MY GIRL』は私も一ファンとして観ていた大好きな作品ですので、再演を重ねても“『ME AND MY GIRL』は変わらないね、ハッピーだね”と皆様に感じていただけるように、花組生と稽古に取り組んでいこうと思います。ビルの持つ温かさと包容力、自由奔放さがとても格好いいと感じています。また、本心をストレートに出すのではなく、表面的にはちょっと乱暴に振舞うところも彼の魅力のひとつです。ビルの決意や懐の深さ、台詞や歌詞に込められた想いがにじみ出るように、歌も鍛錬に鍛錬を重ねて、ビルとして伸び伸びと駆け回る姿を皆様に観ていただきたいです。初演でビルを演じられた剣幸さんには、『私でよければ何でも教えるからね』とおっしゃっていただきました。前夜祭もありますので、色々とご指導していただければと思います。」
花乃 まりあ【サリー・スミス】
夢や幸せを感じていただけるように…
「主題歌の『ミー&マイガール』の“二人の愛 ハッピー”という歌詞がとても印象的で素敵だなと思いました。“二人の愛 ハッピー”を大切にしながら、自分自身がこの作品から感じていた夢や幸せを、お客様にも感じていただけるように精一杯、心を込めて演じたいです。サリー役としましては、やはり皆様が思い描くサリー像というものがあると思います。私もサリーがポケットに手を入れているしぐさなどが印象に残っているので、そういうちょっとしたしぐさでもサリーを感じていただけるように、ランベス育ちで魚市場で働いている、というサリーのバイタリティーのある面も含めて、これから勉強して深いところから役をつくっていこうと思います。」
芹香 斗亜【ジョン・トレメイン卿/ジェラルド・ボリングボーク】
ジョン卿とジェラルドの二役に楽しんで取り組みたい
「私はジョン卿とジェラルドという全く違う二役をさせていただきます。ジョン卿ではビルとサリーを見守る温かさと大きさ、ジェラルドは可愛さが魅力かなと思いますので(笑)それぞれの良さをしっかり表現できるよう頑張ります。これまで多くの先輩が演じてこられた役ですが、ハッピーな作品なのであまりプレッシャーに感じず、楽しんで取り組みたいです。また、ジョン卿のように全場通して髭をつけるのは初めてなので、経験者に色々聞いて学びたいと思います。そして三木先生にしっかりついて、稽古に励んでまいります。」
ビル役に深い思い入れのある明日海りおは、パフォーマンスでも抜群の温かさと軽やかさを瞬時に見せて魅了しました。花乃まりあのサリーは明るく元気いっぱいに、渋い中にコミカルさも併せ持つジョン卿を披露した芹香斗亜は、ジェラルドではどんな演技を見せるのか期待が高まります。そのほかの役替わりメンバーを含め、多彩に楽しんでいただける花組公演『ME AND MY GIRL』をどうぞお見逃しなく!
1987年の『ME AND MY GIRL』初演では演出助手を、1995年の月組公演からは長年にわたり本作の脚色・演出を担当している宝塚歌劇団 演出家・三木章雄。制作発表会ではそんな三木ならではのエピソードを披露しました。
素晴らしいメンバーと共に全力投球で臨みます
花組公演に向けての意気込み
「私が初めて『ME AND MY GIRL』の演出をメインで引き受けたのが、天海祐希さん主演の再演(1995年・月組公演)でした。その年にちょうど阪神・淡路大震災があり、まだ震災の爪痕が残っている中で、当時の月組生が本当に明るく演じて、“信じることが大切”という作品のテーマを全力で表現してくれました。『ME AND MY GIRL』はよく“男性版のマイ・フェア・レディ”とも言われますが、シンデレラストーリーというよりは、“主人公が努力して頑張った結果、幸せをつかむ”という物語です。今回は明日海を筆頭とする花組で、作品の明るさを前面に押し出し、原点に立ち返ってつくっていこうと考えています。スタッフも大変エネルギーが要求される作品ですから、全力投球で臨みます。」
ビルを演じる明日海りおについて
「明日海のことは下級生のときからよく見ていますが、特に花組に移ってからの成長、飛躍ぶりは素晴らしいと思います。彼女が演じるビルはとても懐が深く、ヘアフォード家との人間関係のつくり方も先天的につかんでいる賢い人。マリア公爵夫人の期待に応えようとする、とても善良な部分も持っています。ビルがいかにして貴族という自分のルーツを発見していくのか。そのあたりを明日海には強く深く演じてほしいです。また、私が一番好きなナンバー『私の手を握って(HOLD MY HAND)』では、ビルが“誰かが 君を見なきゃ それは僕の仕事さ”と歌うのですが、実際の英語の歌詞は“You require a lot of looking after.That's one job in which I take a pride.”、つまり“君は僕に思いきり面倒をかけるけど、君の面倒を見るのが僕の仕事で、そのことにプライドを持っている”というように歌っています。明日海には日本語の短い歌詞の奥にある部分まで、リアルに伝わるように演じてほしいし、彼女ならそれができると期待しています。」
サリーを演じる花乃まりあについて
「サリーという役は、ランベスの魚市場で働いている下町の女の子ですから、歩き方からしても従来の娘役のセオリーに反するようなことも要求されます。そういう意味では花乃が本来持っているバイタリティーのある面が、とても活かされるように思います。彼女は静と動、両面を持っている娘役ですから、とても期待しています。そして最後には美しく変身してほしいですね。」
ジョン卿、ジェラルドを演じる芹香斗亜について
「ジョン卿はビルとサリーを見守り、二人を成長させようとする優しい面を持った人。芹香は昔からとても落ち着いたところがあり、それを舞台上で芸として出せたらとずっと思っていました。青年役とはまた違う髭の似合うジョン卿を、一歩踏み込んで演じてほしいです。この役を乗り越えることによってひと回り大きくたくましくなり、骨太な男役になってほしいと期待しています。一方で甘えん坊なジェラルドは、等身大の役だと思います。こういう役はこれから先、あまり回ってこないのではないかと思うので、そういう意味でも最大限に魅力的に演じてほしいです。」
花組メンバーへの期待
「『ME AND MY GIRL』はミュージカルであり、ここぞという場面では台詞ではなく歌で表現されます。歌でお客様を陶酔させ、納得させられるように歌唱力を大いに磨いて臨んでほしいと思います。とても素晴らしいメンバーだと思うので、ぜひ一人でも多くのお客様にご覧になっていただきたいです。」