前夜祭レポート

2016年4月29日(金)に初日を迎える宝塚歌劇花組公演 UCCミュージカル『ME AND MY GIRL』の「前夜祭」が、4月8日(金)宝塚大劇場で開催されました。歴代の出演者をゲストに迎え、大いに盛り上がった「前夜祭」の模様を詳しくお届けします。

宝塚大劇場では8年ぶりの再演となる『ME AND MY GIRL』。その「前夜祭」とあって、開演前から会場内はお客様の期待の高さを感じさせる熱気に包まれました。

当日は花組トップスター・明日海りお、花組トップ娘役・花乃まりあをはじめとした花組出演者のほか、これまで『ME AND MY GIRL』に出演した卒業生6人が出席。1987年の初演を大成功に導いた元月組トップコンビの剣幸さん・こだま愛さん、1995年の再演でサリー・スミス役を演じた元月組トップ娘役・麻乃佳世さん、2008年の再々演に主演した元月組トップコンビの瀬奈じゅんさん・彩乃かなみさん、セドリック・パーチェスター役を長年好演した未沙のえるさんが、宝塚大劇場に勢揃いしました。

明日海りお&花乃まりあがハツラツと歌やタップダンスを披露

明日海りおの開演アナウンスの後、お馴染みの『ME AND MY GIRL』の序曲が流れると、弾むような生演奏の調べに自然と心が浮き立ちます。幕が開くとそこはヘアフォード家のホール。

明日海りお演じるウイリアム・スナイブスン(ビル)と、花乃まりあ演じるサリー・スミスが元気に登場、下町のランベスとは違う豪華な屋敷ではしゃぎながら、楽しそうに未来を語り合います。

ビルのちょっとしたしぐさにも、客席からワッと笑いが。ポケットに手をつっこんで、下町娘らしい話し方をする花乃まりあも生き生きとした表情。無邪気なビルとサリーのやりとりの中に見える大きな愛に、観ている方までハッピーな気分になります。
そして主題歌「ミー&マイガール」をデュエットし、タップダンスでも魅せます。息の合ったコンビネーションで、ふたりの声のハーモニーがとても心地よく響き、ミュージカルとしての見せ場がたっぷりのキュートなナンバーを披露しました。

役替わりメンバーも一堂に。花組版への期待が高まる

次に花組組長・高翔みず希の「先輩たちの残した伝説を超えたいというチャレンジ精神をもって、稽古に励んでいます」という挨拶につづき、花組のメインキャストが紹介されました。

まず明日海りおが「花組がこの作品に挑戦させていただけることが本当に幸せ」と上演に向けてコメントをすると、花乃まりあも「憧れていた作品に出演できてとても光栄」と作品への想いを語りました。

口髭を蓄えたジョン卿役に扮し、頼もしくコメントした芹香斗亜と瀬戸かずや。男役から女役への“美しい変身”に、観客も釘付けとなったジャッキー役の柚香光と鳳月杏。落ち着いた雰囲気で早くもマリア公爵夫人役の貫禄と気品を醸し出していた桜咲彩花と仙名彩世。ジェラルド役の水美舞斗は、同期である柚香光のジャッキーに「大好きだよ!」と告白し会場が盛り上がる一幕も。パーチェスター役の鳳真由は歌のワンフレーズを取り入れて、楽しく意気込みを語りました。

伝説の剣ビル&こだまサリーの歌に大きな拍手!

続いて「ゲストコーナー」となり、こだま愛さんがサリーの名曲「一度ハートを失くしたら」を、剣幸さんがビルを象徴する印象的なナンバー「街灯によりかかって」を披露。

花柄のワンピースで銀橋を渡りながら歌うこだま愛さん。観客に目でも訴えかけるように歌う姿は表情豊かで、曲の中に込められた切ない乙女心が胸に迫ってくる感動的な熱唱でした。

「街灯によりかかって」を剣幸さんが歌い出すと、もうそこは温かい“剣ビル ワールド”。心からサリーを想う気持ちが柔らかい歌声に乗せて届けられ、観客は至福のときを過ごしました。剣さんならではの、人間愛がにじみ出る懐の深い歌声に、手拍子が沸き起こり、劇場中が温かい雰囲気に包まれました。

思いがけないエピソードが続々飛び出したトークコーナー

次は卒業生と花組生(明日海りお・花乃まりあ)とのトークコーナー。ゲストMCは、パーチェスター役を300回以上も演じ、“伝説のパーチェスター”と呼ばれた、未沙のえるさんです。

卒業生がひと言ずつ挨拶をし、この「前夜祭」に出席できた喜びや作品に寄せる想いを語りました。その後、過去の『ME AND MY GIRL』の映像が大きなスクリーンに映し出され、様々なエピソードが飛び出しました。

剣幸さんは「初演より来年で30年ですよ!」と感慨深げ。1987年の初演時は、ロンドン、ニューヨーク、宝塚歌劇(東京公演)の世界三都市同時上演が話題になりました。上演前に本場の舞台を生で観た剣幸さんは、ビル役のロバート・リンゼイさんに貴重な台本をプレゼントされたことを披露(その台本は『宝塚歌劇の殿堂』に展示中)。ビルの大きなマントの扱い方をリンゼイさんに教えてもらったと話します。また、「海外では3分に1回ぐらい皆さん笑っていたのだけれど、(宝塚版では)階級の違いの面白さなどをどうやって出そうか…」と、文化の違いを前に悩んだというエピソードを披露しました。

こだま愛さんも「無我夢中でした。コクニー訛りを日本語でどう表現するか。最初は大阪弁や横浜弁風に言ってみたり」と、稽古場から工夫して役創りしたことを打ち明けました。

麻乃佳世さんは再演時、「ミミさん(こだま愛)から頂いたイヤリングを舞台でつけていたんです!」とコメント。また、阪神・淡路大震災が起きた1995年の上演だったことを振り返り、「UCC上島珈琲様にご協賛いただき上演できたこと、とても幸せに思っています」と語ります。ビル役の天海祐希さんと同時に本公演で退団された麻乃佳世さん。新人時代から共演する機会の多かった二人だけに、「本当にビルとサリーのような関係で、それがそのままお客様に伝わればいいなと思って演じていました。『ME AND MY GIRL』はコンビの良さが自然に浮き彫りになる作品ですよね」と話していたのが印象的でした。

瀬奈じゅんさんが明日海りおの新人公演話も披露

2008年上演時の月組トップコンビ、瀬奈じゅんさんと彩乃かなみさんからは、公演中に瀬奈じゅんさんの付けマツゲが汗で取れてしまったというエピソードが飛び出しました。「どうしようと思っていたら、サリー(彩乃かなみ)が『これを使ってください!』と自分の付けマツゲを取って差し出してくれた」と瀬奈じゅんさんが思い出を語ると、彩乃かなみさんも「二人が一番覚えているのがこの出来事です!」と話し、息の合ったトップコンビぶりに客席からも笑い声が響きました。

この2008年の月組公演にて、本公演では役替わりでジャッキーを、新人公演でビルを演じたのが明日海りお。瀬奈じゅんさんが「本公演では娘役だったみりおちゃん(明日海りお)が、新人公演でビルを演じた時、とても生き生きとしていたのが印象的」と当時を振り返ると、明日海りおも「(男役として)大きく足を一歩踏み出せたのが、嬉しかったです! 瀬奈さんに色々と教えていただき、新人公演後に『良かったよ』と言っていただいた時は涙が出ました」と、新人公演を思い出しました。さらに「出演者だけでなく、お客様にも愛され続けている作品なので緊張はありますが、“やはり素晴らしい作品だ”と感じてもらえるように頑張ります」と、頼もしく抱負を語りました。
花乃まりあは、「今日は素晴らしい先輩方と一緒に並ぶことが出来て胸がいっぱいです」と、歴代の出演者に囲まれて緊張の面持ちながらも笑顔を見せました。

大人数での「ランベス・ウォーク」で熱気は最高潮に
2階席まで出演者が現れ、笑顔満ちあふれる!

「トークコーナー」終了後は、第1幕ラストに歌われる『ME AND MY GIRL』の代名詞ともいえる名ナンバー「ランベス・ウォーク」のパフォーマンスを披露。賑やかに集まったそれぞれのキャラクターたちを、舞台狭しと演じる花組出演者の生き生きとした姿に釘付けとなります。

舞台から客席に降りての「ランベス・ウォーク」は2階客席まで出演者が登場し、大きな手拍子とたくさんの笑顔で劇場が埋め尽くされました。これぞ最高のハッピー・ミュージカル!
カーテンコールでは卒業生たちも加わり、「前夜祭」だけの豪華な「ランベス・ウォーク」大合唱となりました。日常を忘れさせる痛快なナンバーは、心がスカッと晴れ渡ってゆくようです。
未沙のえるさんは、「ビルとサリーの相手を思う気持ちがあるからこそ、それがお屋敷のみんなにも伝わり心が溶けていくのが『ME AND MY GIRL』の魅力。ぜひ作品に流れている人間愛などを、次へと伝えてください」と花組生へエールを送り、大きな拍手の中「前夜祭」は幕を閉じました。

客席と先輩からのエールや愛をしっかり受け止めた花組出演者は、さらに稽古に励み期待以上のハートフルな舞台を見せてくれることでしょう。誰からも愛される名作の新たな魅力を、ぜひ花組の舞台で発見してください!