制作発表会レポート
10月26日(水)、宝塚歌劇宙組公演 ミュージカル・コメディ『王妃の館 -Château de la Reine-』、スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』の制作発表会が行われました。
宝塚歌劇団 理事長・小川友次、『王妃の館 -Château de la Reine-』原作者の浅田次郎氏、演出家の中村暁、田渕大輔、宙組トップスター・朝夏まなと、宙組トップ娘役・実咲凜音が出席。宙組トップコンビがミュージカルのパフォーマンスも繰り広げ、新しいコメディ作品の一端を披露しました。浅田次郎氏も今作への期待を語ってくださり、大いに盛り上がった制作発表会の模様をお届けします。
人気小説の舞台化&パワフルなレビュー
ミュージカル・コメディ『王妃の館 -Château de la Reine-』は、「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞を受賞するなど、輝かしい受賞歴を誇る人気小説家・浅田次郎氏の同名小説が原作。宝塚歌劇にとって初の浅田作品舞台化となります。パリ、ヴォージュ広場の片隅に佇む高級ホテル「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の館)」。ここで前代未聞のツアーを企画した旅行社の奇策のもと、様々な騒動が巻き起こります。かつての城主・太陽王ルイ14世の秘められた物語と共に、コミカルな要素を散りばめた楽しい舞台をお楽しみください。なお、今作は演出家・田渕大輔の宝塚大劇場デビュー作となります。
スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』は、演出家・中村暁による世界各地のFESTA(祭り)をテーマに、エネルギッシュにお届けする新作レビューです。ダイナミックなダンスに加え、『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』を経てさらに歌唱力にも磨きがかかるトップスター・朝夏まなとを中心に、パワー漲る宙組がお届けいたします。どうぞご期待ください。
世界観の広がるパフォーマンスを披露
制作発表会では、宙組トップコンビの朝夏まなと、実咲凜音が、『王妃の館 -Château de la Reine-』の世界を表現する芝居と歌で、それぞれのキャラクターやドラマ性を伝えました。
朝夏まなとが演じるのは、セレブ気取の恋愛小説家・北白川右京。派手なピンク色のスーツをファッショナブルに着こなしつつ、いかにも一癖ある雰囲気を醸し出します。
実咲凜音演じる弱小旅行代理店の女社長兼、ツアーコンダクターの桜井玲子は、自ら企画したダブルブッキングツアーのことで焦っている様子。そのツアーに参加している右京と丁々発止のやり取りを見せます。
パフォーマンスの最後には、次第に心を通わせる二人がそれぞれの人生の中で抱える葛藤を歌うデュエットナンバー「主人公のいない小説」を披露し、美しいハーモニーで聴かせました。
続いて出席者が登壇し、それぞれ挨拶を行いました。
宝塚歌劇団 理事長の小川友次は、朝夏まなと率いる宙組が2015年、全国ツアー公演『メランコリック・ジゴロ』を好演したことに触れ、「朝夏は演技の幅が広く、コメディのセンスも持ちあわせたトップスターです。そこで、彼女のトップ4作目に、ぜひ浅田次郎先生の『王妃の館』を、という話になりましたところ、浅田先生にはご快諾いただき、誠に嬉しく思っています。若き演出家・田渕大輔の大劇場デビュー作ですが、宝塚歌劇らしい、楽しいミュージカル・コメディになると思います」と話しました。
個性豊かなキャラクターが登場する『王妃の館 -Château de la Reine-』は、宙組公演出演者の持ち味や勢いが大いに活かされるでしょう。また『VIVA! FESTA!』では、リオのカーニバル、日本のYOSAKOIソーラン祭りなど世界各地のFESTA(祭り)を、レビューの手法で鮮やかにエネルギッシュに表現します。充実した舞台を見せる朝夏まなと率いる宙組の、約一年ぶりとなるオリジナル作品をぜひお見逃しなく!
- 制作発表会 ムービー
『王妃の館 -Château de la Reine-』の原作者である浅田次郎氏にも、制作発表会にご登壇いただきました。1995年に『地下鉄(メトロ)に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年に『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞するなど受賞歴多数。<天切り松 闇がたり>シリーズや『プリズンホテル』『蒼穹の昴』『シェエラザード』など、発表する作品は次々とベストセラーとなり、2015年には紫綬褒章を受章されました。
浅田次郎氏も宙組公演に向けて、ユーモアを交えながら様々な想いを語ってくださいました。
浅田 次郎氏(『王妃の館 -Château de la Reine-』原作者)
これはパリ旅行中に思いついた“お笑い小説”です
「私はミュージカルが好きで、タカラヅカにも興味を持ちながら、今までご縁がありませんでした。男性に多いことだと思いますが、どうも男一人で観に行くのは気が引け、かと言って男二人で行くのはもっと気が引け(笑)。そうかと言って女性編集者にタカラヅカを観たいとも言いだせずにきました。そんな中で今回、『王妃の館』の舞台化というお話を伺った時は、大変嬉しく躍り上がりました。先日、宙組の『エリザベート』を拝見し、目からウロコでした。宝塚歌劇の伝統を強く感じて頼もしく、また、その伝統を基盤にしながら、新しいものを創っていくというスタイルが素晴らしいなと思いました。
私は色々な小説を書きますが、『王妃の館』は徹頭徹尾、笑いを散りばめた“お笑い小説”として仕上げました。ルイ14世にとても興味があり、パリが大好きな私が、パリへ旅行中に思いついた小説です。この作品がこうした形で舞台化されることは大変喜ばしく、今から楽しみでなりません。」
——宝塚歌劇での舞台化にあたって何かリクエストなどは?
「私は自分の作品が舞台化されたり映像化される時は、一切注文をつけません。どんな気持ちに近いかと言うと、嫁に出した娘がどれぐらい幸せになっているかをドキドキしながらそっと見守るぐらいの感覚です。ですからお任せにし、楽しみにしております。」
——北白川右京を演じる朝夏まなとについて
「朝夏さんのパフォーマンスを拝見して“作家とはこうでないといけない! ”と感じました。私もこういう小説家になりたかったと、とても羨ましくなりました。デビューした時に派手なファッションにすれば、方向性も違ったのかもしれませんが、私はいたって地味な小説家であります(笑)。」
——宝塚歌劇の舞台をご覧になって、あらためて今作に期待されること
「女性だけの劇団である宝塚歌劇ならではの、別世界という雰囲気がとても良かったです。
小説を書く時に悲劇的に書くか喜劇的に書くかという選択を迫られるのがクライマックスです。『王妃の館』では、悲劇と喜劇のどちらで書くかを使い分けながら書いていきましたので、その緩急がどのようになるのか、とても楽しみです。」
宙組トップコンビの朝夏まなと、実咲凜音も意気込みを語りました。
宙組トップスター 朝夏 まなと
コメディ作品に挑戦できることが嬉しい
「今回、宙組にとりまして、約一年ぶりのオリジナル作品の二本立ての公演となります。『王妃の館 -Château de la Reine-』は、浅田次郎先生の小説が原作ということで、2015年の全国ツアー公演『メランコリック・ジゴロ』を上演した際、コメディの楽しさを実感いたしましたので、再び宝塚大劇場・東京宝塚劇場でコメディ作品に挑戦できることを、とても嬉しく思っております。また、この作品は田渕先生の大劇場公演デビュー作でもありますので、宙組一丸となって盛り上げ、浅田先生の素晴らしい作品の世界観を、お客様に喜んでいただけるような宝塚歌劇版の舞台として、お届けしたいと思います。一方、『VIVA! FESTA!』は、今の宙組のパワーを存分に発揮できるよう、私自身が引っ張って行きたいと思います。両作品ともに宙組の魅力を存分に、皆様に楽しんでいただける舞台を目指してまいります。そして、この公演は実咲の退団公演でもありますので、最後までいい舞台を一緒に創りたいと思います。」
●あらためて実咲凜音との最後の公演となることについて
「いつも、より良い作品を創り上げるのが私たちのテーマです。作品を創るうえでは妥協せず、これまでどおりいいものを創れるように頑張ってまいります。実咲には、集大成となる公演で下級生たちにも色々なことを伝えてもらいたいですし、娘役として立派な花を咲かせてほしいと思います。」
●コメディ作品への意気込み
「コメディは“狙ってはいけない”ところが難しいです。何気なく言ったひと言の間が面白いなど、自然なお芝居になるまで稽古場で身体に役を染みこませることが大切だと感じています。さらに自分の意図していないところでお客様が喜んでくださるなど、予測できないのがコメディの難しさでもあり、楽しさでもあります。今回実咲とコメディ作品に挑戦しますが、普段の彼女らしさが出れば一層面白くなると思います(笑)。」
宙組トップ娘役 実咲 凜音
退団公演でまた新しい一面をお見せしたい
「今回は、ミュージカル・コメディとレビューの二本立てということで、今からとても意気込んでおります。お芝居では、今までにない役どころで、最後の公演となりますが、新しい自分をお見せできるように頑張ります。そして、レビューについては、宝塚歌劇団に入団する前、私が客席から観ていた時に抱いた憧れや感動といった思いを込めて、お客様にも、同じように感じていただける、楽しく、素敵で、華やかなレビューにできればと思っております。朝夏さん率いる宙組の皆さんと共に創り上げる時間の一瞬一瞬を大切に、取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
●あらためて退団公演に臨む気持ち
「本日、パフォーマンスをさせていただき、あらためてコメディの難しさを感じました。朝夏さんは本当にお芝居心がある方なので、舞台上でも毎日違う感情表現をされ、多くのことを学ばせていただいています。今作でも、今までに吸収したことを活かし、さらに新しい一面を皆様にお見せできるよう、そして宙組の一員として力になれるように頑張ります。」
●コメディ作品への意気込み
「朝夏さんがおっしゃったように、普段の自分も出しつつ(笑)、“狙ってはいけない”という気持ちで臨みます。まじめに演じれば演じるほど、お客様に面白く見えるのがコメディだと思います。お客様の笑い声や感動によって、一体感溢れる空気を感じることができるコメディ作品を、私自身もとても楽しみにしています。朝夏さんは普段から楽しいお話をしてくださり、ふとかけてくださる言葉に救われることが多いので、そんな朝夏さんにしっかりとついていけるようにがんばります。」
『王妃の館 -Château de la Reine-』の脚本・演出を手掛けるのは、2016年『ローマの休日』のミュージカル化を成功させ、今作が宝塚大劇場デビュー作となる演出家・田渕大輔。『VIVA! FESTA!』の作・演出を担当するのは、『心の旅路』『麗しのサブリナ』といったミュージカルから、『ミロワール』『CRYSTAL TAKARAZUKA』など幅広いショーまで手掛けてきた中村暁です。
それぞれが作品への意気込みを語り、報道陣からの質問にも答えました。
田渕 大輔(『王妃の館 -Château de la Reine-』担当)
朝夏、実咲自身に近い丁々発止のやり取りを楽しんで
「今回、私は初めて宝塚大劇場の作品を担当させていただくのですが、ぜひこの二人で新しいコメディ作品に挑戦したいと思いました。浅田先生の作品のお力をお借りして、二人の新しい魅力をお客様にお届けできる作品を創りたいです。本作は浅田先生の作品の中で生きる独特の色濃いキャラクター、一癖も二癖もある登場人物たちが織り成す群像劇をとおして、北白川右京と桜井玲子が何かを見つけていくストーリーです。私自身、浅田先生の『王妃の館』を拝読した時に温かい気持ちになりましたので、お客様にも温かさを感じていただける作品になるよう取り組んでまいります。」
——宝塚歌劇での舞台化にあたり、どのような要素を盛り込みたいか
「小説の中に描かれている父性愛、永遠の愛、そして大事なものを守るために何かを犠牲にする愛を、宝塚歌劇ならではの男女の愛につなげ、コミカルな形に集約できればと思っています。」
——コメディのなかで朝夏まなと、実咲凜音のどのような魅力を引き出したいか
「朝夏は笑いに対してもストイックですが、何かをキャッチし投げるという瞬発力も持ち合わせていますし、とても陽のオーラを持っている人だと感じています。実咲も彼女の素が出れば本当に面白いと思います。設定が現代ということもあって、普段の彼女たち自身に近い丁々発止のやり取りを、お客様にも楽しんでいただけると思います。」
中村 暁(『VIVA! FESTA!』担当)
宙組の出演者全員が躍動する舞台を創り上げたい
「2017年は、宝塚歌劇にとって大切な『モン・パリ』誕生90周年にあたります。『モン・パリ』は大階段やラインダンスを初めて取り入れたレビューで、現在宝塚歌劇で上演されているレビューのスタイルを創り上げた、偉大な作品です。その記念すべき年にふさわしい作品を創りたいという想いで、スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』を企画しました。“スーパー・レビュー”というサブタイトルには、新しいレビューにしたいという想いを込めています。朝夏まなと、実咲凜音を中心とした出演者全員による、躍動感溢れる舞台を創り上げたいと思います。」
——朝夏まなと、実咲凜音のどのような魅力を引き出したいか
「朝夏には、その大きな瞳に、優しさと強さが同居している印象があります。彼女の優しさと強さ、明るさと激しさといった魅力を、レビューの歌やダンスの中で活かしたいと考えています。宙組80数人を率いての歌、ダンスになりますので、レビューならではのダイナミズムをお客様に感じていただけるのではないでしょうか。実咲は花組公演『麗しのサブリナ』(中村暁脚本・演出)の新人公演でヒロインを演じましたが、下級生での初ヒロインながら堂々と“やり切った”、というものを見せてくれました。今回も“やるときはやる!”という芯の強さを、しっかり見せてくれるだろうと期待しています。作品中では、世界各国の様々な祭りが出てきますので、どうぞお楽しみください。」