中村暁インタビュー
芝居から『CRYSTAL TAKARAZUKA—イメージの結晶—』(2014年月組)などのショーやレビューまで、幅広く手腕を発揮するベテラン演出家・中村暁。世界各地のFESTA(祭り)をテーマにした新作レビューで、朝夏まなとを中心とする宙組のどんな魅力を引き出すのか。今作の見どころを聞いた。
まさにFESTA! エネルギッシュでパワフルなレビュー
——FESTAをテーマにした理由
“祭り”が持つ高揚感や、非日常で特別な世界へ連れていってくれる魅力に着目し、FESTA(祭り)というテーマを選びました。
——どんな祭りが登場するのか
まずプロローグは「リオのカーニバル」です。サンバのリズムを使ったオリジナルのテーマ曲でパワフルに展開しようと思っています。その幕開きでは朝夏まなと一人での“白の世界”から一気に極彩色のカーニバルの世界へと入っていきますので、その転換の妙もぜひお楽しみください。その次は、中欧・北欧に伝わる「ヴァルプルギスの夜」を取り上げます。これはいわゆる魔女たちの祝宴です。次に“エンシエロ”、スペインで行われている、「牛追い祭り」のシーンとなります。これは度胸試しで牛の前を人間が走っていくお祭りなのですが、今作では牛と若者の追いかけ合いから、闘牛の場面へと展開するように創り上げます。ほかにも日本のお祭り、「YOSAKOIソーラン祭り」をレビュー仕立てにしてお届けします。
——宙組の印象は?
今年は宙組の全国ツアー公演『バレンシアの熱い花』の演出を担当しましたが、長身の出演者が揃い、迫力がありますね。コーラスの美しさにも定評がある組なので、全員で歌い踊る場面なども取り入れながら、最後は皆で歌い上げて終わる、という展開を考えています。
——宙組トップスター・朝夏まなとの魅力について
制作発表会で「大きな瞳に優しさと強さが同居している」と話しましたが、それに加えてダイナミックなところも魅力ですし、やはり舞台の芯となり、出演者を引っ張っていくエネルギーやオーラがあると感じます。トップスターとして宙組75名を率いて歌い踊るシーンは、特にダンスを得意とする彼女の見どころのひとつになると思います。
——今作で退団するトップ娘役・実咲凜音の見せ場は?
まずはフィナーレでの朝夏とのデュエットダンスです。“フィナーレの華”とも言われるデュエットダンスですが、今作のレビューでぜひとも使いたい曲があり、その曲で朝夏と実咲のデュエットダンスをしっかりと見せたいと思います。またデュエットダンスの前に、実咲が中心となり男役と踊る場面も準備しています。ここは彼女のトップ娘役としての経験を活かした華やかなシーンになると思います。
——宙組の男役について
真風涼帆は背が高いという、単にヴィジュアル面から見た大きさだけでなく、人間的にも大きく、おおらかでしっかりしているという印象があります。それでいて芝居は細かく丁寧なので、舞台人として信頼のおけるところが魅力です。今作では真風が芯になる場面のほか、愛月ひかるが芯になる場面や若手男役の活躍をお客様に楽しんでもらう場面もありますので、ぜひご期待ください。
出演者自身の魅力をアピールする構成を
——あらためて宝塚歌劇の魅力とは
やはり男役の格好良さが一番の魅力だと思います。また、大劇場ならではの舞台装置、華やかな衣装を活かしながら次々とスピーディーに場面が転換していくところも魅力です。さらに群舞の美しさや迫力。何十人もの出演者が同じ衣装、同じ振付で、フォーメーションを変化させながら魅せていくというのは、宝塚歌劇ならではだと思います。
——過去の演出作品でも群舞が印象的でした
私自身、大勢で踊る場面が好きなので、今回も群舞の場面を考えています。私がショーやレビューの作品創りで大切にしているのは、先ほど申し上げた宝塚歌劇の持つ三つの魅力、つまり、男役の格好良さ、華やか且つスピーディーな展開、そして群舞の迫力や美しさ、などを意識することです。またショーやレビューでは芝居と違って、出演者自身が持っている魅力も直接見せることができるので、それをしっかりアピールできるように構成します。いま、稽古場で見ていても、本当に皆個性が違いますし、上級生になるとそれぞれのキャラクターがより出てくるので、楽しいですね。
——初めて宝塚歌劇の舞台を観た時の感想は?
私は宝塚歌劇団の演出助手の試験を受けた時に、初めて宝塚歌劇の舞台を観ました。それまでも宝塚歌劇団という劇団は知っていましたが、そのときに、芝居で全ての役を女性が演じていることに、改めて驚きました。そしてショーでは、舞台の大きさや迫力、場面転換の速さに「すごいな」と感じたのを覚えています。
——お客様にメッセージを
朝夏まなと、実咲凜音の宙組トップコンビを中心に、出演者全員が生き生きと活気に満ち溢れた舞台を創りたいと思います。これは宙組のFESTAです! 宙組のお祭りとして、ぜひ客席で一緒に盛り上がってください。
【プロフィール】
中村 暁
大阪府出身。1977年宝塚歌劇団に入団。1985年、アメリカのハイスクールを舞台にした青春ドラマ『スウィート・リトル・ロックンロール』(月組)で演出家デビュー。『黄昏色のハーフムーン』(1990年雪組)で宝塚大劇場デビュー。『サジタリウス』(1994年雪組)で初めてショー作品を手掛ける。その後『ドリアン・グレイの肖像』(1996年星組)、『マノン』(2001年花組)など芝居も多数手掛け、『麗しのサブリナ』(2010年花組)では名作映画を緻密にミュージカル化した。近年は『Dance Romanesque(ダンス ロマネスク)』(2011年月組)、『GOLD SPARK!-この一瞬を永遠に-』(2012年雪組)、『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』(2014年月組)などオーソドックスでタカラヅカ的な中にも現代的なセンスが光るショー作品を発表している。