明日海りお×植田景子

花組公演『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』の作・演出を担当するのは、独自の世界観で繊細な美しさを描き出す演出家・植田景子。花組トップスター・明日海りおの退団公演としての大劇場オリジナル作品に、期待が高まります。
匂い立つような美しさと比類なきカリスマ性で観客を魅了し続けてきた明日海がこれまでに出演した植田作品を振り返ります。

『シニョール ドン・ファン』(2003年月組)

舞台写真

明日海を含む第89期生の初舞台公演。究極のプレイボーイの華麗な恋の遍歴を、スタイリッシュに綴ったミュージカル。
銀橋から始まる初舞台生ロケットで、明日海たちはキューピッドをイメージさせる衣装をまとい、フィナーレを彩った。

植田景子が語る

宝塚大劇場月組公演で初舞台を踏んだ明日海は、そのまま月組に配属となり、東京宝塚劇場の新人公演でボーイ役を任されました。初めてもらった役を張り切って嬉しそうに演じていた姿を、覚えています(笑)。荷物を持つ、ドアを開ける、といった演技の一つひとつにも、真剣に取り組んでいましたね。

『THE LAST PARTY~S.Fitzgerald’s last day~』フィッツジェラルド最後の一日(2004年月組・2006年月組)

舞台写真

時代の寵児として波乱の人生を歩み、夢と挫折の中で光を追い続けたアメリカの作家スコット・フィッツジェラルドの物語。
緻密に計算された多重構造で綴られる作品で、明日海は、暗闇の中でもがくスコットに、一条の光を投げかける印象的な役を演じた。

植田景子が語る

まだ最下級生だった明日海に、主役のスコットに公園で声を掛ける学生役を演じてもらったのですが、非常に素直な芝居をするなと思いました。私が作品について話したことをよく聞き、与えられた役割を自分なりに考えて芝居に落とし込む、とても聡明な人という印象を持ちました。当時の明日海の透明感やピュアさが活かされ、役にピッタリ合っていたと思います。

『愛と革命の詩(うた)-アンドレア・シェニエ-』(2013年花組)

舞台写真 カルロ・ジェラール役

ヴェリズモ(写実主義)オペラの傑作と謳われる「アンドレア・シェニエ」をベースに、愛の美しさと希望を描いた作品。
明日海は、ヒロインへの叶わぬ想いを抱く革命の闘士カルロ・ジェラールの心の揺れを、骨太でありながら細やかな演技で魅せた。

植田景子が語る

久々の明日海との仕事でしたが、「いい男役に成長したな!」と感じましたね。演じる役を“生きている一人の人間としてのリアル”を追求して構築するからこそできる、芝居を見せてくれました。例えば、花道のセリを井戸に見立てて、水を汲む場面など、紐の引っ張り方に水の重さのリアリティを感じさせる緻密な演技に感心しました。

『ハンナのお花屋さん —Hanna’s Florist—』(2017年花組)

舞台写真 クリス・ヨハンソン[Chris Johansson]役

ロンドンで花屋を営むデンマーク人フラワーアーティストのクリス・ヨハンソンと、彼の店に集う人々の交流を軸に、21世紀を生きる我々が求める本当の幸せ、人生の豊かさを問いかけたオリジナルミュージカル。
明日海は、クリスのバックボーンを丹念に創りあげ、彼の心の奥底にある感情を繊細に描き出した。

植田景子が語る

「明日海の代表作になるオリジナル作品を」との依頼だったので、明日海本来の魅力を存分に生かしたいと考え、“花屋のプリンス”という設定を決めました。人との繋がりのなかで大切にしていることなど、実際に花を愛する彼女自身が持っている想いが、クリスの想いとして内面から溢れ出し、より真実味のある役創りができたかなと思います。


ともに豊かな感性で劇場を作品の世界に染める植田と明日海。宝塚歌劇では最後のタッグとなる今作は、大人の為のほろ苦く温かなオリジナル・ミュージカルです。
耽美的で幻想的な世界を、どうぞ劇場でお楽しみください。